欧州に比べ、なぜ日本は女性幹部が生まれにくいのか?

女性の昇進を阻む4つの誤解と真相

2014.09.22 MON


緩やかに上昇しているが、女性にとって管理職への昇進はいまだ「狭き門」。部長級のうち女性はわずか20人に1人
女性役員や管理職を増やそうと企業の動きが活発化している。ひとつのきっかけは、昨年4月に安倍総理が行った「成長戦略スピーチ」だ。「成長戦略の中核」として女性活躍を掲げ、「2020年に女性管理職比率30%」を達成すべく経済3団体(経団連・経済同友会・日商)に協力を要請した。

だが、現状の女性管理職比率はわずか6.6%(平成25年度雇用均等調査)。各種調査によって差はあるが、せいぜい1割前後とみられている。欧米主要国では3~4割に達しており、先進国では最低水準。なぜ日本の女性管理職比率はこんなにも低いのか?

よく巷で耳にするのは、「日本は性別役割分担が固定化した特殊な社会だから」「欧米は男女平等で、女性の社会進出が進んでいるから」…といった理由。だが、果たして本当にそうなのか?

「実はいずれも大きな誤解です」――そう語るのは、リクルートワークス研究所の石原直子さん。同研究所は今年1月、女性登用で先を行く欧州のグローバル企業を訪ねて実態を取材した。そこで見えてきたのは「欧州も日本も女性を取り巻く状況は似ており、女性管理職比率も10年ほど前までは大差ない」(石原さん)という意外な事実だった。

では、なぜ10年でこれほど差がついたのか? リクルートワークス研究所が欧州取材で明らかにした、女性管理職をめぐる「4つの誤解と真相」をご紹介しよう。

●誤解1「日本では“女性は家庭を守るもの”という価値観が根強いから」
→真相:「これは日本に限った話ではありません。『女性は出産後、家庭に入ってほしい』『育児や親の世話は女性の仕事』という価値観は、スイス、フランス、ドイツなどでも根強く残っています。実際、ドイツのダイムラーが2006年に社内調査した際も、同様の意見が多数を占めたそうです。他の欧州グローバル企業――スイス再保険、イプソス、モンデリーズ・インターナショナルなどの女性幹部を取材しても、口を揃えてこうした価値観の存在を認めます」(石原さん)

●誤解2「欧米では昔から女性の社会進出が進んでいるから」
→真相:「これもよくある誤解です。女性の就業者比率だけを比べれば、欧州も日本も大差ありません。欧州が40~50%なのに対し、日本も42.3%と決して低くはないのです。日本が際立って低いのは『女性管理職比率』や『女性役員比率』。ですが、欧州も昔から高かったわけではありません。たとえばダイムラーでは2006年当時、初級マネジャーの女性比率は6%に過ぎませんでした。それが現在では13%。クレディ・スイスでも女性従業員比率が増えたのは2006年以降です」(石原さん)

●誤解3「欧米では成果主義が浸透しており、男女差なく評価されるから」
→真相:「欧州でも女性に対するステレオタイプな見方は存在します。なにより重要なのは、仮に能力や成果をフラットに評価しても、それだけで女性管理職が増えるわけではない、という点です。欧州グローバル企業の幹部たちは、女性リーダーを育成するために特別な努力(extra effort)を継続しています。製薬大手ロシュやスイス再保険の幹部たちも『そうした努力なしに女性管理職が増えることはない』と断言しています」(石原さん)

●誤解4「日本の女性は管理職になりたがらないから」
→真相:「実は欧州のグローバル企業でも同様の傾向にあります。女性は男性より引っ込み思案で、昇進をためらう人が多いのです。スイス再保険の幹部がこう語っていました。『女性は概して完璧に自信を持てなければ、昇進だけでなく何事にもイエスと言わない』と。出産・育児が視野に入ると、昇進に対して慎重になるのも日本と同様。にもかかわらず欧州で女性管理職を登用できているのは、トップの意志と育成の仕組みがあるからです」(石原さん)

いかがだろう? 巷で語られてきた日本は特殊な社会だから女性登用は難しいという“理由”は、単なる思い込みに過ぎなかったわけだ。特に注目すべきは「女性管理職の登用で欧州と差がついたのは、この10年ほどの現象」という点。本気で取り組めば、日本も10年後には欧州並みの水準に引き上げられるはず。

「2020年に女性管理職30%(※)」の目標は、10年以上前(平成15年6月)に男女共同参画推進本部が決定したものだ。しかし企業の取り組みのスピードは思うように上がらず、いまだ微増にとどまっている。この間、欧米は“本気で”取り組んだことで30~40%の水準を達成した。

2020年までタイムリミットはあと6年。安倍政権が企業の背中を押す様々な施策を導入している今、本格的な人口減少社会の到来を背景にどこまで変革のスピードをあげられるか、日本企業の本気度がとわれている。
(篠塚裕也)

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