最近、なに読んだ?

立川談笑「落語に通じるビジネス書」

2014.10.03 FRI

BOOKレビュー


『世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書』(林 雄司/扶桑社/1080 円) 人気サイト「デイリーポータルZ」や「webやぎの目」のウェブマスター・林 雄司さんが頭のなかを大公開。プレゼンの乗り切り方から発想術まで、普通のビジネスマンの働き方改善(及び実行)に役立つ77のメソッドを紹介する。 (桜井としき=撮影)
ときには古典を現代風に改作し、今の時代の笑いを取る。そんな落語家・立川談笑さんのイチオシ本は、落語の道にも通じるという、洒落のきいた『ビジネス書』。読んでびっくり。冗談抜きで実用的な本でした。

──談笑さんはインターネット歴20年ほどになるとか。「デイリーポータルZ」も読まれるんですか?

最近はあまり熱心な読者ではないですけれど、林 雄司さんといえばネット黎明期からのスターですよね。私も落語家としては1番目か2番目くらいにHPをつくったんですが、当時から「webやぎの目」は楽しく読んでいました。

──それでこの『ビジネス書』を読んでみようと?

この本はかみさんが買ってきたんです。最初はビジネス書の体裁を借りて「なんちゃって」っていうような、林さんなりのジョーク本だと思って読んだんですけれど…いい意味で裏切られましたね。

──こう来たか!と。

そう。つまりこれは、林さんのこれまでの軌跡と脳内を大公開する自叙伝みたいな本ですよね。しかもそれが、普段どうやってアイデアを生み出しているか、ネットではどう立ち回るかという具体的なハウツーになっている。これを等身大のまま、無理に一般化しないで書いているところが素晴らしいと思います。

──とくに共感できた項目は?

共感はねえ、ずいぶんたくさんできちゃうんだよなぁ。ネタの選び方は落語家がマクラを考えるときと重なるし、書き手の個性を出すというのも落語的。大事なのは、何を言うかではなく誰が言うか。落語を好きな方は「饅頭怖い」という噺じゃなくて、噺家を観にくるわけですからね。そうそう、この本には談志のフレーズも出てくるんですよ。「人間の業の肯定」ってね。

──普通の人は締め切りがないと仕事しないくらい意識が低い。それを肯定したいという話ですね。

林さんは「努力を禁止する」とも書かれているけれど、私も弟子に教えるときは「がんばるんじゃなく、好きになれ」と言います。最初はポーズだけでいいからとにかく好きになれ、と。そのうち本当に好きになれば、楽しくなって自ずと励むようになる。嫌々ながらする努力なんて身にならないし、第一そんな生活は楽しくないでしょうからね。


【立川談笑の読み方】

▼大型書店で専門書の棚を見て歩くのが楽しい

「普段は興味がないジャンルの棚を見るのが好きなんです。先日も建築の棚に『ラーメン』という本があって、ページをめくると難しい構造計算の数式ばかり。まるで知らなかった『ラーメン構造』という世界を発見しました」

▼ビジネス書は成功体験を難しく書いてあるから苦手

「例えば成功体験をシナジーとかリテラシーなんて言葉をちりばめて語る起業家の本。あれは、難しい言葉で武装しているようで苦手です。実はあんた、口先と世渡りだけのラッキーボーイなんじゃない? って疑っちゃう」

▼紙の本のいいところは…「適度に重い。そこですよ」

「前に脳科学の先生に聞いたら、紙の本を読むと脳が刺激されるけどパソコンだとされないそうです。電子書籍で本を読んでいる人はもったいないなあと思って。『少年ジャンプ』はザラザラした手触りや匂いがいいのにねえ」

(宇野浩志=取材・文)

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