スペックの高さがキャリアの障害に

「優秀すぎて就職できない」のナゾ

2014.11.04 TUE


“異能人材”と見られ、まわりから浮いてしまうのは避けたいが、採用されない事態はもっと避けたい。「オーバー・クオリファイド」は一筋縄ではいかない問題のようです
「もっと学歴や能力が高かったら、条件のいい仕事に就けるのに…」そんな思いが頭をよぎることはないだろうか? 「エリート」と称される人の輝かしい学歴や経歴をみると、ため息が出てしまうこともあるだろう。

だが、「学歴や能力が高すぎると、かえって企業から敬遠される」という話もあるのだとか。なんとも不思議な話だが、アメリカのビジネス界には「オーバー・クオリファイド」なる人事用語がある。直訳すると「能力超過」。つまり、企業側が望むポストや仕事内容に比べて能力が高すぎるがゆえ、採用を見送られてしまうことがあるというのだ。

「確かに、企業の風格や身の丈にそぐわない『異能人材』が避けられてしまうケースは少なからずあるようです。企業側からすれば、そこまで優秀な人間をとっても結局使いこなせないのではないか、待遇や仕事内容に不満を抱きすぐに辞めてしまうのではないか、といった懸念があるからです」(人材育成支援会社FeelWorks代表の前川孝雄さん)

前川さんによれば、似たようなケースは日本にもあるという。

「例えば1990年代から2000年にかけて、欧米でMBAを取得する日本人が急増しました。ところが日本の会社に戻っても苦労して得た知識を十分に発揮できるポジションに就けなかったために、結局辞めてしまう人が多かった。また、昔からいわれる『ポスドク問題』もオーバー・クオリファイドの最たる例といえるかもしれませんね」(同)

「ポスドク」とは大学院で博士号を取得した後、大学で任期制の職に就く研究者のこと。一般的に博士号取得者は就職に不利といわれ、かといって教授をめざす学者になれるのはひと握り。そのため博士課程修了後はポスドクとして研究に取り組むものの、その後のキャリアに行き詰まるケースが増えている。

「博士号取得者は専門分野においては誰にも負けない知識を持っていますが、自分の専門外のことにはうとくやりたがらない、プライドが高くて扱いづらい、などという先入観を抱かれがちです。加えて、長期視点で彼らの優れたアカデミズムをビジネスに応用できない企業側の問題も大きくなってきています。特にバブル崩壊以降はビジネスシーンが全体的に保守化していて、企業は自社のカルチャーに合わない異能人材を採りたがらない傾向が強まっています」(同)

そうした異能人材を生かせない日本の保守志向は、企業の成長を妨げていると前川さんは指摘する。

「いま日本の多くの企業が挫折して苦しんでいる原因のひとつに、異能人材を含む多様な人材を活用しきれていない点が挙げられると思います。一方で、多様な人材を積極的に登用し、個々の力を生かして事業を成長させる『ダイバーシティ・マネジメント』という考え方も徐々に浸透しつつあります。しかし、日本企業にはムラ社会的な価値観が根強く、変わるにはもう少し時間がかかりそうです」(同)

優秀すぎるというのも、それはそれで悩ましいようだ。
(榎並紀行)

※この記事は2012年11月に取材・掲載した記事です

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