最近、なに読んだ?

棚橋弘至が語る「プロレスの魅力」

2014.12.19 FRI

BOOKレビュー


『パパのしごとはわるものです』 板橋雅弘・作、吉田尚令・絵/岩崎書店/1404円 学校の宿題で「お父さんの仕事」を調べることになったぼくは、こっそりパパの後をつける。体育館に入った彼が見たものは…。児童向け絵本シリーズ第1作。登場する善玉レスラーは、棚橋選手がモデルなのだとか。 (桜井としき=撮影)
ゼロ年代の低迷期を乗り越え、新日本プロレス再生に貢献した“100年に1人の逸材”棚橋弘至選手。2児の父でもある彼が取り上げた絵本には、その根底にあるプロレス観が表れている。

──この絵本、プロレスラーが出てくるんですか。

僕はときどき小学校で本の読み聞かせをやっていて、そこでこの本を読んだんです。「わるものがいないと、せいぎのみかたがかつやくできないだろう?」っていう発想が、今の世の中には必要な気がして。

──プロレス的な発想ですね。

ええ。僕だって、自分が声援を受けて勝ちたいって気持ちはありますが、それよりも会場を盛り上げたいとか、お客さんに楽しんでほしいとか、誰かのために何かをしようとするときの方が力が出るんですよね。まあ、僕は年を取ってからそのことに気づいたんですけど。

──棚橋さんって、リングの上でどんなことを考えているんですか?

心がけているのは、相手選手のすごさを引き出すことです。強さや派手さを競い合うだけだと、どんどんエスカレートして、そのうち破綻します。人の体には限界があるけれど、過激さを求める欲には天井がありませんから。でも、相手の強さを引き出したうえで勝てば会場は盛り上がりますし、結果的に負けたとしても、次に勝てばいい。その駆け引きが面白いわけですから。

──たしかに。ただ強いからといって、観客が沸くわけじゃない。

鳥肌が立つのって、自分ができないことや自分の予想をはるかに上回ることを目の当たりにしたときですよね。だからプロレスは、これを食らったらさすがにダメだろうっていうときが面白いんです。そこからレスラーが反撃する姿に感動するし、逆転したときには会場全体がうわーっと盛り上がる。

──プロレスの醍醐味ですね。

それに、攻撃する側だけを見たら危険で暴力的なんですけど、受け手に焦点を合わせると、プロレスラーっていう集団がただ野蛮でいかついだけでなく、苦しいなかでも頑張って立ち上がる大人として見えてきます。その姿に多くの人が人生を重ねられたからプロレスの黄金時代があったんだと思うので、子供たちにもその魅力を伝えたいんです。


【棚橋弘至の読み方】

▼新幹線や飛行機移動の友は、雑誌と文庫本

「松尾スズキさんのエッセイ本とか好きですね。何がいいって、あの人クソ忙しいんですよ。『今、舞台袖でこれ書いてます』みたいな状況なのに忙しさを楽しんでいる。多忙な時期に読んで、僕はまだまだだって思えました」

▼文章を書くのが好きなので、書き方を知るために読んでいる

「僕は新日本プロレスのサイトや雑誌にコラムを連載していて、一時は本当に締め切りに追われていたんです。いつか小説を書いてみたいから、作家さんがどんなふうに文章を書いているんだろうと気にしながら読んだりもします」

▼これから読みたいのは、聞く人の気持ちがわかる本

「阿川佐和子さんの『聞く力』を前々から読もうと思っているんです。まだ買えてないんですけど。こうしてインタビューされることが多いので、聞き手側が何を考えているのかがわかれば、うまく話せるようになるかな、と」

(宇野浩志=取材・文)

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