斎藤哲也の読んでるつもり?

知的体力を養う「学問ガイド」3選

2015.03.09 MON

BOOKレビュー


『日本人はなぜ存在するか』與那覇 潤/集英社インターナショナル/1050円 桜井としき= 撮影
■学問を組み合わせて「日本人」を解く

大学では、学部・学科を専攻して専門的な勉強をすることになるのはごぞんじのとおり。でも、政治・経済の問題であれ、環境・エネルギー問題であれ、現代社会が抱えている問題の多くは、一つの学問分野だけで解決するのは難しく、様々な分野の知を組み合わせることがすごく重要になっている。

でも、知を組み合わせるってどういうことだろうか? そのよき導き役となってくれる一冊が『日本人はなぜ存在するか』という本だ。

この本は、日本や日本人に関して、僕らが自明のように思っていることに次々と揺さぶりをかけていく。たとえば「欧米人は個人主義的なのに対して、日本人は集団主義的だ」という説があるが、心理学の実験データによれば、日本人がアメリカ人と比べて集団主義的であるという結果は出ていない。面白いのはここからで、にもかかわらず、日本人が集団主義的に振る舞うのはなぜか、と問いを深めていくわけだ。

そこで登場する「再帰性」という言葉が、本書最大のキーワード。これは「認識と現実のあいだでループ現象が生じること」と説明されている。先の例でいうと、実際は違うのに、「日本人は集団主義的だ」と人々が認識することで、現実に、集団主義的に振る舞うようになってしまうということだ。

こうした「再帰性」なる概念を武器に、哲学、心理学、社会学、歴史学、文化人類学と多彩な学問の知を用いて、「日本人」「日本」にメスを入れていく展開は、知的なスリリングに満ちている。知を組み合わせて物を考える快感が十二分に味わえる学問入門書としてオススメしたい。

■世界スケールの知に触れてみよう

『知の逆転』は、世界を代表する知の巨人たちへのインタビューをまとめたもので、彼らの研究や発言からも知の横断ぶりはうかがえる。

たとえば言語学に革命をもたらしたノーム・チョムスキーは、アメリカ覇権主義を鋭く批判してきた人物としても知られる。読書通がこぞって絶賛する文明論を繰り広げるジャレド・ダイアモンドは、ユーラシア大陸の人間が生存で優位に立つようになった理由について、生物学、疫学、人類学、歴史学、言語学などを渡り歩きながら一貫した仮説を提出した。学問や知のチカラを本書から感じとってほしい。

締めくくりの『大学新入生に薦める101冊の本 新版』は、その名のとおり、本を選ぶための本だが、「現代の教養」というコンセプトによる選書センスが類書と比べて抜群にいい。2週間に1冊のペースで読んでいけば、4年間で101冊を制覇できる。そこで得られる知的体力は、計り知れないものになるだろう。

(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『日本人はなぜ存在するか』與那覇 潤/集英社インターナショナル/1050円
●『知の逆転』ジャレド・ダイアモンドほか/NHK出版/903円
●『大学新入生に薦める101冊の本 新版』広島大学101冊の本委員会/岩波書店/1575円

※この記事は2014年3月に取材・掲載した記事です

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