最近、なに読んだ?

武田砂鉄「コラムニストの跳躍力」

2015.05.29 FRI

BOOKレビュー


『友だちリクエストの返事が来ない午後』 小田嶋 隆/太田出版/1512円 「友だちの友だちは友だちではない」─―SNSを通して人と人とが簡単につながってしまう現代の「友だち」とは何なのか? 辛口批評で知られるコラムニストが、幼年期から現在までの交友関係を顧みながら、「友だち」について考察する。
ネット媒体を中心に芸能・社会時評を寄稿し、著書『紋切型社会』では、同意や共感を求めるあまり硬直した常套句があふれる世の中に疑問を呈す。そんな武田砂鉄さんが「言葉の跳躍力」を感じた本は?

──武田さんは、昨年の秋まで出版社に勤められていたんですよね。

ええ。学生時代からライターをやっていたんですが、新卒で出版社に入って。編集の仕事も面白かったけど、やはり書きたいという気持ちが強く、同時進行で書いていました。

──これまで影響を受けた本は?

いろいろ雑に読んできましたけど、中学生の頃からコラムニストの書く文章が好きで。今回挙げた小田嶋 隆さんやナンシー関さんには、強い影響を受けてきました。

──武田さんの世代でコラム評っぽい書き手は珍しい気がします。

確かにそうですね。でもコラムには、1500字ほどの箱のなかで起承転結をひねって、変な方向に脱線したとしてもそれを強引にでもまとめあげる独特の芸がある。ネットの身辺雑記のようなものが主流になっているのがつまらないなっていう思いは強いですし、それを打破したいと思っています。

──今回選んでいただいた小田嶋さんの『友だちリクエストの返事が来ない午後』も武田さんの本も、身のまわりのことを書くけれど直球ではない。

並べられるのはおこがましいです。とくに『紋切型社会』を書いたときは、影響されすぎないように小田嶋さんの本や連載を読まないようにしていたくらいですから。小田嶋さんは、目の前の事件や象徴的な出来事に対して、世の中がどう受け止めたかを踏まえた上でそこに“別の角度”を投じていく。その別の角度ってそんなに容易に見つかるわけじゃないから、小田嶋さんの視点を知ってしまうと、それを踏襲してしまいそうで…。

──ものの見方を書き換えられてしまうようなインパクトがありますよね。

この本では「友だちの友だちは友だちではない」と最初に宣言していますが、それはまさに、今の世の中に対する構え方としては、これしかないってくらい強度のある斜めからのメッセージですよね。過激なことを書くだけではなく、著者自身が迷路のなかを行きながら、1冊を通して言葉を積み重ねていく。小田嶋さんの言葉が、あやふやな「つながり」を突き刺してくれます。


【武田砂鉄の読み方】

▼通学路が違ったから読書量が増えた?

「中学校では電車通学の生徒が多かったけど、僕は自転車でした。みんなが途中下車して遊びに行くなか、僕は古本屋に寄って『みんな今頃カラオケとか行ってんだろうな』と思いながら本を読むというジメジメした中学生活を…」

▼“武田砂鉄”を形成した思春期の読書体験は?

「中学生の頃は“サブカルコラムニスト”と呼ばれるような人の本をよく読んでいました。高校に入ると背伸びして、本田靖春や沢木耕太郎、立花隆みたいなジャーナリズムに手を出して。基本的にはノンフィクションが好きですね」

▼批評が直球だけでは、つまらないと思う

「批評ってとにかく過激なことを言う人もいるけれど、銃で狙いを定めて一発で仕留めるだけではいけない。対象に直接ぶつかっていくんじゃなくて、まわりを取り囲みながらじわじわ詰めていくことも必要です」

(宇野浩志=取材・文)

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