デジタルに見えて実はアナログ?

「人力ITサービス」がヒット兆し

2015.06.03 WED


写真は「Eight」のデータ入力センタの様子。1ユーザー1日10枚程度なら翌営業日には名刺がデータ化される
スマートフォンやタブレット端末など、IT技術の進化が目覚ましい昨今。ビジネスにおいてもIT技術を生かしたサービスが隆盛を極めている。だが、一見高度な技術に支えられているように思えるこれらのサービスの中には、実は“人力”に頼っているものもある。

そのひとつに挙げられるのがiPhoneの無料名刺管理アプリ「Eight」。名刺をiPhoneのカメラで撮影して画像データをアプリに取り込むと、自動でデータ化されるというものだが、実はその工程には人力が組み込まれている。

「OCRとよばれる文字読取装置でまず名刺の文字をデータ化するのですが、その後当社のオペレータが名刺の画像とデータを必ずチェックし、間違いのある個所を手作業で修正しています」

お答えいただいたのは、「Eight」を運営する三三の千住洋さん。三三では現在約20人のEightオペレータが作業を行っているとのこと。わざわざ人の手を介してチェックしたり修正したりするなんて、なんとも手間のかかるやり方のように思えるが、わざわざこの工程を組み込んでいるのはなぜだろう?

「名刺に載っている情報はすべて貴重なもの。メールアドレスなどは1文字間違っただけで届かなくなります。そのリスクやあとで修正する手間を考えると、あらかじめ人手をかけてチェックした方がかえって効率的。また、人がチェックすることで、様々なスタイルの名刺に対応できるようになります」

こうした考えに基づくサービスは他にもある。メモを書き込んだノートをiPhoneのカメラで撮影すると文字データに変換してくれる「KYBER SmartNote」も、人力を組み込んだサービスのひとつ。ノートの画像をOCRで読み込んだ後、国内に500人、中国に3000人いるスタッフがチェック・修正を行う。担当者は行単位で細分化され、最速90秒でのデータ化を実現しているとのこと。手書き文字をデータ化するとなると、機械ではどうしても正確性が心配。人力なくしては実現できないサービスといえそうだ。

また、翻訳サービスの「myGengo」はネットを通じてプロの翻訳者に依頼できるシステムで、翻訳者に「なるべく端的な言葉でわかりやすく」などの指示を出すことも可能。翻訳者として登録されるのは独自の資格テストをパスした者のみとのことで、機械翻訳サービスが増えるなか専門用語なども的確に訳せるのが魅力だ。

最後に紹介するのは新聞や雑誌、ネットニュースなどから様々な情報を要約して配信する「ネタックス」。このサービスの特徴は、多忙な人でも短時間で概要を読み取れるよう、元の情報をそのまま流さず要約して配信することだ。この要約を行うのがネタリストと呼ばれるスタッフ。同じテーマを扱っている別媒体のニュースなども合わせてくれるため、短時間で広範囲の情報をつかむことができる。人力による情報の取捨選択とネットによる配信を融合させたサービスだ。

IT技術の進化はすさまじいものがあるが、機械ではまだどうしても補えない部分があるのも事実。そこをどう「人力」でサポートするかが、ITビジネスを行ううえでの競争性優位になるのかもしれない。
(河合力)

※この記事は2012年5月に取材・掲載した記事です

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