「ねじれの発想力」で差をつけろ! 第12回

クールジャパンが持つねじれ発想力

2015.06.09 TUE


“クールジャパン”の伝統文化、伝統的なライフスタイルを育んできた先人たちの知恵と感性には、「ねじれの発想力」のヒントがあふれている 写真提供/PIXTA
私たち日本人がこの国の風土の中で育んできた伝統文化やライフスタイルには、数々の「ねじれの発想力」が隠されているように思う。

代表例が、蒸し暑い夏場を乗り切る“納涼グッズ”。団扇、浴衣、打ち水、すだれ、緑のカーテン(朝顔やゴーヤ栽培)などなど、江戸の昔から受け継がれてきた「涼を取る」というロハスな暮らし方が、原発事故にともなう節電対策の中で改めて見直されている。

わけても「風鈴」はまさにクール! 軽やかでさわやかな風鈴の音色に一時の涼を感じ取り、暑さをしのぐ。もちろん、風鈴の音が気温や湿度を物理的に下げてくれるわけではない。あくまでも「涼しい気分」を味わうもので、いわば体感温度が下がるだけ。それでも、感性豊かな江戸の庶民は十分に涼しく感じた。これぞ風流、これぞ粋! 風鈴は「ねじれの暑さ対策」の最高傑作だ。

日本の伝統的な食文化を意外な用途に“転用”した独創商品も現れた。昨年9月、一風変わった発明や研究に贈られるイグ・ノーベル賞を受賞し、話題となった「わさびのにおいで出火を知らせる火災報知器」。香りビジネスを展開する東京のバイオベンチャー企業・シームス(漆畑直樹社長)が開発したこの“ワサビアラーム”は、「火災報知器は音で知らせるもの」という固定観念をものの見事に覆した。そこに日本のオリジナルスパイスであるわさびのにおいを採用した発想力も実に秀逸。日本食ブームによって、ツンと鼻を刺す「WASABI」の強烈さは欧米人にもすっかりおなじみだから、「オモロイだけでなく、確かに有益な発明だ!」と同賞の目に留まったのもうなずける。

さて、本連載も今回が最終回。そこで、これら“クールジャパン”を素材にして、「ねじれの発想力」をビジネスシーンで生かすための5つの必須条件をまとめてみよう。

【常に疑問を感じる問題意識】
出発点は当然ながら「問題意識」。「夏は暑いのが当たり前」では、そもそもどんな暑さ対策も生まれない。「なんとか暑さを和らげる方法はないか?」→「エアコンをガンガン使えないなら、他に方法はないか?」と疑問を積み重ねていくことが発想力を養い、発想の方向を広げていく。ビジネスの現場でも、どんな小さなことも現状肯定せず、「本当にこれでいいの?」と疑ってかかる。いわれるままに前例を踏襲したり、「ウチの商品はこういう仕様なんだから」で済ませていては、新しいアイデアなど生み出せない。

【旺盛な好奇心と緻密な観察力】
問題意識を高めるためには、何事にも興味を持つ「旺盛な好奇心」と「緻密な観察力」が欠かせない。「暑い」とはどういう感覚なのか、根本から問い直すために、例えば「真夏の仕事終わりにビールを飲みたくなるのはなぜ?」と考え、「蒸し風呂のような満員電車で乗客はどんな表情をして耐えているんだろう?」と改めて観察してみる。平凡な日常風景の中にも、きっと何か「気づき」があるはずだ。

【幅広い視野と豊かな感性】
自分なりに「?」を見つけることができたら、与えられた条件下での最適解を求めて“あさっての方向”に発想をねじっていく。「どれだけねじれるか」は、ひとえに「発想力の引き出し」の多さにかかっている。引き出しの数を増やしてくれるのは「幅広い視野」と「豊かな感性」だ。例えば、五感を研ぎ澄ませ、フル活用する。すると、涼の取り方にもいろいろあって、肌で感じる涼しさだけでなく「目で見る涼しさ」「耳で聞く涼しさ」「舌で味わう涼しさ」もあることが実感できるだろう。

【科学的根拠・裏付け】
アイデアを実現するためには「科学的知識」も必須。ねじれの発想で生み出した新製品やソリューションには、一般のそれ以上に「本当に役に立つものかどうか」を示す客観的・科学的な検証が求められる。意外性が高ければ高いほど、確かな根拠・裏付けがなければ、社会や顧客に受け入れてもらえないからだ。ワサビアラームの場合も、シームスは滋賀医科大学と共同で臨床試験を行い、わさびのにおいの覚醒効果を立証している。

【新しい価値・プラスαの魅力の創造】
ねじれの発想力が目指す最終ゴールは、決して「ごまかし」や「一時しのぎ」ではない。社会や顧客に「新しい価値」や「プラスαの魅力」を提供して初めて意味を持つ。風鈴の音色は気温を下げはしないけれど、情緒豊かな安らぎの時間を与えてくれる。それがエアコンにはない、風鈴の価値。だから、今でも人々は風鈴を買い求めるのだ。利便性、快適性、お得感、わくわく感、癒やし、和み、温もり、感動、共感……どんな価値を提供できるかを先に考えて、そこから発想をねじっていく方法もありそうだ。

さあ、今度はあなたが実践する番だ。上司に押しつけられた無理難題も、「ねじれの発想力」を駆使すれば、いつか解決の糸口が見えてくるかもしれない。
(高嶋健夫)

※この記事は2012年5月に取材・掲載した記事です

  • 著者プロフィール

    高嶋健夫(たかしま・たけお) 本屋のせがれに生まれ、新聞記者、雑誌記者兼編集者、書籍編集者をひと渡り経験して、現在はビジネス分野を専門とするフリージャーナリスト。R25・35世代と比較しながら団塊世代の攻略法を説いた『R60マーケティング』(日本経済新聞出版社)など著書多数

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