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北尾トロが語る「対談本の味わい」

2015.06.26 FRI

BOOKレビュー


「北朝鮮ポップスの世界」 高 英起、カルロス矢吹/花伝社/1620円 独裁政権下にも音楽は生きていた? 北朝鮮情報サイト「デイリーNKジャパン」編集長と1985年生まれのライターが対談。“北朝鮮のYMO”や“北朝鮮のジミヘン”などのたとえを交え、ポップスとしての観点から北朝鮮音楽を語り合う。 撮影=桜井としき
昭和が終わる頃、ライターになり、裁判から怪しいお仕事まで気になったことをルポしてきた。古本屋にもなってみたし、今月最終号を発行した『季刊レポ』では、編集・発行人もやった。北尾トロさん、今はどんな本が面白いですか?

──北尾さん推薦の『北朝鮮ポップスの世界』。共著者のカルロス矢吹さんは、北尾さんが編集長の『季刊レポ』でも書かれていましたね。

彼はレポの初期に、書かせてくれとやって来たんです。ラスタマンみたいな格好をしてね。最初は文章もデタラメだったけど、どんどんうまくなっていった。こういう若いヤツが出てきたことが楽しくて付き合っているんですが、まあ彼だけではこの本はできなかったよね。

──もうひとりが、高 英起(こう・よんぎ)さん。

高さんは、硬派で博識なジャーナリストです。その彼が、政治やイデオロギーはさておき、音楽やポップなものが好きな矢吹くんに合わせて、北朝鮮音楽について語っている。高さんの単著だったら、わりと堅めの「北朝鮮における音楽のナントカ」みたいな本になったと思うんですけど、対談にしたことでポップになった。

──たとえが“北朝鮮のYMO(ポチョンボ電子楽団)”や“AKB48(モランボン楽団)”ですからね。

YouTubeで観て、なるほど! って大笑いしました。モランボン楽団の再結成後の動画を観たんだけど、バックで演奏しているおじいちゃん連中がやっぱり巧いんだよね。自分が弾いているギターに酔って、気持ちよーくなっちゃってる表情が見られるんですよ。

──北朝鮮の人が、あんな弾き方をするなんて意外でした。

あの国って専制君主みたいな人がいて、国民がロボットみたいに従っているイメージがあるでしょう? でも、何千万もの人が住んでいるんだから、実際はもっと人間臭いはずなんです。そのあたり、高さんが持っていたけれど普段はあまり使っていなかった知識を、矢吹くんがたまたまうまく引き出したんでしょう。

──たまたまですか?

制作中は、仕上がりが全然見えなかったらしいんだよね。できてみたら、北朝鮮の歴史をおさらいしつつ雑学も織り交ぜた、意外といい本になっちゃったっていう。高さんも、自分の殻を破るような本ができたって、嬉しそうに話していましたよ。


【北尾トロの読み方】

▼書き手の人柄が見える本を応援したい

「ここまで書けば体裁は整うのに、この人はノリノリでさらに取材しちゃったんだなぁっていう本とか、大好きですね。その過剰さのせいで売れない本になっていたとしても、書きたいって気持ちが伝わる本には愛嬌があります」

▼いい本が何冊かあったら、一番くだらないのを買う

「最近の本はすぐ絶版になって本屋から消えるので、マイナーな版元のいかにもダメな感じの本は、気になったときに買わなきゃなと思って。ベストセラーはあとからいくらでも買えるけど、売れない本は古本屋にも出ませんから」

▼自分より年下の書き手が面白くあってほしい

「そんなこと絶対に思いつかないって驚くような発想で、ネットや新しいシステムを使った書き手が出てくることをオジサンは期待しちゃうわけですよ。くだらないことを一所懸命やる人がいないと、世の中がギスギスするからね」

(宇野浩志=取材・文)

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