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成毛眞「もう英語力は不要になる」

2015.07.24 FRI

BOOKレビュー


『ホワット・イフ 野球のボールを光速で投げたらどうなるか』 (ランドール・マンロー:著、吉田三知世:訳/早川書房/1620円) 光速でボールを投げたら何が起こるか? 海の底に排水溝をつけて海水を抜いたら? 著者のwebサイトに投稿された突拍子のない質問を、科学的なロジックとユーモアを交えて検証する。理系オタクたちのネットコミュニティが生んだ名著。 撮影=桜井としき
サイエンスから社会ルポまで、日々続々と刊行される書籍のなかから、“読むに値する本”を厳選して紹介する書評サイト「HONZ」。読書家のレビュアーを多数抱え、読者には書店員や出版関係者も多い。このサイトの代表・成毛 眞さんに、今のお薦め本を聞いた。

──『ホワット・イフ』はwebの質問コーナーから誕生したそうですが、質問も答えもセンスがいいですね。

アメリカのギーク(理系オタク)って、わりと『ニューヨーカー』みたいな格調の高い雑誌を読んでいるから文章が磨かれているんですよ。ユーモアがあって、最後の落とし方がいい。残念ながら、日本には理系の知識人が読む文化雑誌がないんですよね。社会が大きく変わろうとしている今こそ、サイエンスが必要なのに。

──なぜ今、サイエンスなんですか?

これから社会は、過去に類をみないほど劇的に変化していきます。人工知能は進化するし、通信も桁はずれに速くなる。準天頂衛生みちびきが本格的に実用化されれば、GPSのような測量システムの誤差は5cm程度になります。そんな時代に、Googleみたいな企業がやりたい放題にいろんなことを始めている。次の10年でITや金融などのインフラは、ちゃぶ台をひっくり返すような大転換を起こすはずなんです。

──社会の変化が加速するんですね。

そのスピードが速すぎて、一般人の半分は自分のまわりで何が起こっているのかがわからず、魔法の世界に放り込まれたようになるでしょうね。そういうときに何が大事かというと、サイエンスだけなんです。既存のビジネス書やカーネギーの自己啓発本を読んだところでその時代は終わっているわけだし、これから英語を勉強して身につく頃にはSiriが同時通訳してくれるから意味がない。必要なのは、まだ目の前にないものや壮大すぎることを、仮説を立てて検証する力です。

──なるほど。それが科学であり、『ホワット・イフ』の方法論でもある。

ええ。この本の問いは現実離れしているけど、「カップのお茶をかき混ぜることで(運動エネルギーを加えて)沸騰させられるか?」みたいなことは、どこかの企業のラボが冗談半分に実験していてもおかしくない。考えるスピードやスパン、対象の広さも含めて、これくらい突拍子もないものを読んだ方が、思考のトレーニングになると思いますよ。


【成毛 眞の読み方】

▼小説家の想像力よりも、事実の方がスケールは大きい

「小学生の頃は文学的なものも読んだけれど、そのうち事実の方が小説よりはるかにすごいことに気づくわけですよ。テクノロジーであれ、戦争であれ、殺人事件であれ、あらゆる分野で作家の想像力を超える出来事が起こっていますから」

▼本が好きじゃないなら苦労して読む必要はないと思う

「なぜたくさん本を読むのかと聞かれても、音楽と一緒で『好きだから』としか答えられない。何かの役に立てようとして読むわけじゃありませんから。本が好きでなければテレビやネットがあります。本が一番いいとは思いません」

▼最近は読書よりもテレビが面白くなってきた

「今はちょっと読書に飽きていて、仕事として読むものを別にすればほとんど読んでいない。代わりにテレビを観ているんですが、やっぱりドキュメンタリーが面白い。これを再放送できるようになると、放送が変わるんじゃないかな」

(宇野浩志=取材・文)

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