賃金UP、環境整備だけでは不十分

建設人材確保の意外な打開策

2015.07.24 FRI


CCSのポスターが貼られた、女性を描いた派手な工事フェンス
東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる、新国立競技場の建設計画が白紙に戻った。2019年のラグビー・ワールドカップはあきらめ、2020年の東京五輪・パラリンピック直前の完成を目指すことになった競技場の建設で、人材の確保が重要なのはいうまでもない。

 ところが、今回の騒動が起こる以前から、建設業は深刻な人材不足にある。バブル崩壊以降、人材流出が続いてきた建設業では、2011年の東日本大震災後の、急速かつ大量の人材ニーズに対応しきれていない。業界の衰退傾向が15年と長期に渡り著しかったため、その過程で、「建設の仕事で食べていける」という展望をもつことができず、職業選択で敬遠されるようになってしまった。

 建設人材の確保が難しい理由は、仕事に見合うだけの収入を得にくいことや、技能習得に時間がかかるため、簡単に未経験者が就ける仕事ではないことなど、いくつかある。現在、官民あげて、賃金などの労働条件の改善、働く環境の整備、人材育成の仕組みづくり等、同時並行で対策が進められている。働き手を確保するためには、このような内実を整えることが非常に重要だ。だが、建設の場合、これだけでは人材不足は解決しないだろう。

というのも、建設業は「業界イメージの悪さ」も、人材確保の大きなネックになっているからだ。リクルートワークス研究所が2014年に行った「人手不足に関する調査」において、「業界のイメージが悪く、応募者が集まりにくい」という回答が、全体平均18.1%のところ建設業は32.6%に及び、3割を超える唯一の産業であった。働き手を増やすには、働く環境や労働条件といった内実を整備したうえで、ネガティブな業界イメージを払拭する必要がある。

「建設のイメージを向上しよう(Improving the image of construction)」。2012年のロンドン五輪・パラリンピックの取り組みについて筆者らが調べていると、ロンドン市中の建設現場に、大きな横断幕がかかげられていた。英国では、建設現場の騒音や粉塵、景観の悪化などに対するクレームが頻発していたため、1997年にコンシダレイト・コンストラクターズ・スキーム(Considerate Constructors Scheme/CCS)という団体を設立し、建設現場の改善に取り組むようになった。多くの建設現場で、かつてはなかったフェンスが設置されるようになったのも、その一環だそうだ。実際、ロンドン市中の建設現場ではCCSのポスターをよくみかける。

CCSの取り組みを知って以降、ロンドンの建設現場を注視するようになった。そして、何より発見だったのは、ロンドンの建設現場のフェンスは、表現力に富んでいるということだ。ショッキングピンクに人物を描いた地下鉄駅の改修現場、青い空と緑の敷地を描き出した選手村の跡地など、建設現場のフェンスを、近隣住民や観光客とのコミュニケーションメディアに仕立てあげている。翻って、日本はどうか。真っ白の垂れ幕に建設会社の名前が入っているだけ。そんな建設現場が無数にある。

例えば、建設業の女性活躍を象徴する「けんせつ小町」や、業界で取り組む人材育成の仕組み、世間のネガティブイメージと実態のギャップに関するデータをインフォグラフィックスで見せる…。「業界のイメージの悪さ」が、人材確保の最後の難題として残る建設業界では、建設現場をメディアにし、イメージの悪さを払拭する。そんな取組みも有効なのではないだろうか。
(リクルートワークス研究所 中村天江)

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