最近、なに読んだ?

斎藤哲也「運命の見方を変える本」

2015.09.25 FRI

BOOKレビュー


『あるようにあり、なるようになる 運命論の運命』 入不二基義/2700円/講談社 すべての物事は必然的に起こるのか、それとも未来は変えられるのか。代表的な運命論と反・運命論を行き来しながら思索を深め、「運命論を移動させ、書き換える」哲学書。運命を信じる人も信じない人も、読めば世界の見え方が更新されるはず。 (撮影=桜井としき)
この連載最後の選者は、『R25』創刊から10年にわたってブックレビューを担当した編集者・ライターの斎藤哲也さん。挙げていただいたのは、「運命」について考察する哲学書。著者の言葉に導かれ、“運命に乗る”感覚を味わえる本でした――。

──『R25』の最終号で運命論とは…なかなか意味深な選書ですね。

まあこの本は難解にも見えるんだけど、「運命」ってわりと身近なテーマじゃないですか? いいことでも悪いことでも、劇的な体験をしたときに人はそれを運命だったと考える。人生に忍び寄ってくるような考え方だと思うんです。

──たしかに、運命に導かれたかのように感じる出来事はあります。

一方で運命の存在を否定したり、努力次第で未来は変えられるという考え方もある。その両方をいっぺんに考えると、運命というのがよくわからないものになっていくわけです。この本の著者の入不二基義さんは、その一つひとつを解きほぐして整理し、運命の正体をとことん考え抜いていく。

──「今」とは何か。「必然」とは何か。普段は意識に上らないようなことが語られていきます。

そういうことの不可思議さって直感的にはわかるんだけど、論理的に説明するのが本当に難しいんですよ。それをここまで語り得るんだっていうことが、まず衝撃でした。それに、哲学書っていうと、一般的にはプラトンやデカルトがこう言ったというような、いわゆる哲学史をなぞるものだと思われているふしがある。でも、この本はそれと全然違う哲学の仕方で、ひとつのことを考えに考え、とことん掘っていく面白さがあるんです。

──章ごとにまとめがあって読みやすいけど、著者の思考を辿るうち、気がつけば深淵にいる…みたいな。

そんな感じですよね。ものすごく深い哲学の話をしているけれど、用語や概念などの前提知識がなければ読めないわけじゃない。哲学に触れたことがないような人でも、根気よく読めば、その一番深くて面白い世界に乗り出すことができるんです。『あるようにあり、なるようになる』というタイトルがこの本のすべてを表しているんだけど、読んで考えを一巡させないとわからない世界というのもあるわけで。そういう、読むこと、考えることの醍醐味が詰まった1冊としてお薦めします。

【斎藤哲也の読み方】

▼何が書かれているかより、どう書いてあるかに着目する

「本って内容と表現のどちらも大事だと思うんですよ。多くの人は内容に目を取られがちなんだけど、やっぱりどう書いているかっていうところに本や著者の持ち味が出る。その表現は、ある程度尖っている方が面白いと思いますね」

▼未来に目を向けるなら、文系/理系を分けない方がいい

「僕は人文系の本をよく読むけれど、これからは文系と理系を区別しすぎない方がいいと思う。人工知能や進化みたいな話になると理系的なセンスだけじゃなく、人間とは何かっていう文系的な考え方も混ざってくるわけだから」

▼読んでわかることで、自由になれることもある

「運命でも社会システムでもいいんだけど、自分が何らかの不自由さを感じていたとして、その不自由さを探求して正体がわかると、そうじゃない可能性が広がる感じがする。そういうことも哲学や思想の魅力のひとつじゃないかな」

(宇野浩志=取材・文)

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