初期費用は約150万円でOK!?

東京の中心で家賃ゼロのラーメン店

2015.10.19 MON


移動販売車は10年ぐらいで水回りが錆びるため、こちらは3代目。カウンター席のほかにテーブル席もある。お昼ぐらいから仕込みや買出しを始めるので、労働時間は意外と長い
東京の中心、東京駅。その目の前の八重洲口、八重洲ブックセンターの前という超一等地にラーメン屋台を見つけた。すでに数名の先客がおり、夜風に吹かれながら皆さん美味しそうに麺をすすっていらっしゃる。

忙しそうに立ち働くマスターは田中幸男さん(66歳)。店の屋号は「丸源」だ。看板メニューは豚骨スープを都会風にアレンジしたオリジナルの「丸源ラーメン」(650円)。その他、おでんやお酒類も安く提供しているのが嬉しい。

「店を出したのは平成2年…25年前か。18歳で鹿児島から上京して、22歳までサラリーマン。その後、飲食をやりたくてバーテンなんかを経て27歳の時にスナックを開店。当時は高度経済成長の真っ只中だから、これが大当たりでね」

勢いに乗って4号店まで店を増やしたが、店に目が行き届かなくなったせいもあり、客足は遠のいた。徐々に経営は逼迫。ツケの回収も滞り、やがて全店が潰れて一文無しになり、鹿児島に出戻ることになる。

「イチから出直しなんだから、好きなことをやろうと。そこで思いついたのがラーメン。鹿児島のラーメン店で修業を積んだのち、移動販売の先輩にいろいろと教えてもらって、この業態を選んだんだよ。100%キャッシュだから、ツケもないでしょ(笑)」

中古の移動販売車が約20万円、寸胴やガステーブルなどの調理器具が約120万円、看板などが約5万円と、初期費用は約145万円。店舗を構えることに比べると、ずいぶん安く済む。出店場所を探して東京中を回り、たまたま見つけたのが今の場所だ。

「今でもはっきりと覚えてるけど、開店初日に16人のお客さんが来てくれたんだよ。翌日以降もポツポツと売り上げがあって、3カ月ぐらいで波に乗ったなと思った。景気がいい時代だったから、行列もよくできてたよ」

10年以上通っているという常連の女性は、「ラーメンはもちろん美味しいんですが、マスターの飾らない人柄が好き。人生相談にもよく乗ってもらいました」と笑う。

「お客さんとの距離が近いからね。転勤から戻って、また通ってくれる人も多い。暑さ寒さをもろにかぶるし、立ち仕事で大変だけど、路上の魅力は汗の一滴一滴が全部自分の身になるところかな」

社長も新入社員も、立場を度外視してフレンドリーに交流できるのも屋台ならではの光景だという。最後に、店を構える気はないのかと聞いてみた。

「ないない。スナックで懲りてるからね。第一、こんな場所で店舗を借りたら、家賃も相当高いだろうし(笑)」

費用を抑えて、同じ商売を継続する――ビジネスの基本がそこにはあった。高層ビルに囲まれた東京の夜空を眺めながら食べるラーメンは、また格別。丸源ラーメンと缶ビールで〆て1050円。ごちそうさまでした。

【路上のビジネスデータ】
「丸源」(ラーメン屋台)
・開業資金:約145万円
・営業地域:東京駅八重洲口付近
・営業時間:夏19:00、冬20:00〜翌1:30ぐらい 土日祝・大雨休
・メニュー:丸源ラーメン(650円)、おでん(400円)、酒類(400円)ほか
・月収:「妻と子供2人がまあまあ生活できるくらい」(店主・談)

(石原たきび)

■スモールビジネスの舞台裏 第1回

  • コンパクトに収まった調理器具は、使い勝手を考えた特注品だ
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