ワークライフバランスの実践法 個性派社長のお悩み相談室

サイボウズ青野氏「子どもの送り迎えが、仕事にプラスになる理由」

2016.02.29 MON

個性派社長のお悩み相談室


青野慶久(あおの・よしひさ) サイボウズ株式会社代表取締役社長。1971年生まれ。1997年、愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役に就任(現任)。2010年、一部上場企業のトップとしては異例の2週間の育児休暇を取得。以後、3児の父として3度の育児休暇を取得している。著書に『チームのことだけ、考えた。―サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか』(ダイヤモンド社)などがある (撮影=松倉広治)
若手社員ならではの悩みを個性派経営者にぶつけ、意見を授かる連載。ビジネスの最前線を走るリーダーの金言には、明日への扉を開くヒントがあるかもしれない。

お話を伺うのは、サイボウズ株式会社代表取締役社長の青野慶久氏。グループウェア国内最大手の一部上場企業を率いる経営者でありながら、毎日定時に帰宅し育児に励む“イクメン社長”としても知られている。

そんな青野氏に伺うのは、「ワークライフバランス」の実践法。青野さん自身が実践している公私両立のための思考について伺った。


●18時までしか働かない…「正直、葛藤はある」

青野氏は2010年、第一子の誕生を機にそれまでの仕事一筋な人生を見直したという。

「20代、特に松下電工を退社しベンチャーを立ち上げた頃はとにかくハードワーカーでした。朝9時から24時まで会社にいて、22時前に帰ることはほとんどない。それでも夢があって楽しかったから、それこそアホみたいに働いていましたね。しかし、2010年に子どもができて育児休暇をとることになり、子育ての楽しさ、充実感に目覚めてしまった。今は18時か19時に会社を出て、帰宅後は家事と育児。子どもを寝かせたあと風呂に入り、24時までには寝るようにしています」

まさにワークライフバランスのお手本のような生活だが、そうはいっても一部上場企業のトップ。果たして、仕事に支障をきたさず実践できるものなのだろうか?

「確かに仕事量は減りました。ただ、量が減っても質は上がった実感がある。インベーダーゲームにたとえると、手前の雑魚キャラは無視してボスのUFOだけを狙って得点を稼ぐ。下手に時間があると、手あたり次第にやっつけたくなっちゃうんですよね。でも、弾が3発しかない状況に追い込まれて初めて、雑魚キャラを撃たない決断ができるんです。仕事も『18時までしか働かない』と制限すれば覚悟が決まり、時間内に質の高い仕事をしようと考えるはずです。もちろん、僕も最初からすんなり今の働き方に順応できたわけではありません。正直に言えば今でも葛藤はあります。でも、これは時間をかけながら消化していくしかない」


●会社に張り付かないメリットは「これまで行かなかった世界に行ける」こと

仕事が楽しくなってくる年代のビジネスマンは、「正直、ワークライフバランスなんて共感できない」「仕事に没頭したい!」という気持ちもあるだろう。それでも、朝から晩まで会社に張り付いて働くことに、青野氏は異を唱える。

「会社に朝から晩までずーっといると、狭い範囲でしかモノを考えられない人間になってしまう。そんな人が、この時代にどれだけ活躍できるのでしょうか。『単に作業員だぞ! それ』と言いたいですね。どんな仕事であれ、今はマーケットが複雑化して多様なニーズをいち早くキャッチしなければ生き残れない。先進国で暮らしているからこそ得られる気づきやひらめきって絶対にあるはずだから、会社以外の活動に重きを置いて、それを引っ張り出していくことが価値になると考えています」

こう言い切るのは、青野氏自身、会社を離れることで世界が広がった経験があるからだ。

「育児をするようになると、これまで行くことなんてなかった保育園に行くようになりますよね。すると、たとえば保育園の先生が使えるようなグループウェアを作れないか、と考える。子どもが病気になれば病院に連れて行き、医療やその現場を目にする。それも同じように仕事につながって、これまでにない発想が出てくる。ずっと会社の中にいたら絶対に気づけなかったことです。

育児に限らず、何だっていい。早く帰っても特にやることがないなら、まずは『自分はどう生きたいか』と自問自答してみることから始めるといいと思います。会社以外の時間で何をやったら幸せになれるのか。それは日々変わっていくし、僕自身も常に自問自答し続けています」

(榎並紀行/やじろべえ)

■個性派社長のお悩み相談室 第12回

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト