スルースキルを身につけろ!? 個性派社長のお悩み相談室

「新生姜ミュージアム」岩下社長の“振り切り”仕事論

2016.03.28 MON

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岩下和了(いわした・かずのり) 1966年栃木県生まれ。岩下食品株式会社代表取締役社長。岩下の新生姜ミュージアム館長。慶応義塾大学卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)を経て、1993年に岩下食品へ入社。2004年代表取締役に就任(現任)。趣味は音楽鑑賞 (撮影=松倉広治)
「岩下の新生姜」で知られる岩下食品。同社が昨年オープンした「岩下の新生姜ミュージアム」は話題を呼んだ。ピンク一色の館内に、新生姜をテーマにした数々の珍妙な展示物…。訪れる者を圧倒するその雰囲気は、食品メーカーの「お堅い」イメージを大きく覆した。

創業115年を超える老舗の大胆なチャレンジ。それは、保守的な職場で窮屈な思いをしている会社員に、現状を打破する勇気やヒントを与えてくれるかもしれない。岩下食品・岩下和了代表取締役社長を直撃し、振り切った試みの背景や意図を聞いた。


●「ウチの社員、よくこんなにバカなこと思いつくな」

ともすれば「ただの悪ふざけ」ととらえかねられない「岩下の新生姜ミュージアム」のオープンに、ためらいはなかったのだろうか?

「食品会社というのは『安全・安心』『真面目』といった印象が最も大事ですし、岩下食品としてもまずは信頼を持っていただかなくてはなりません。ただ、若い人が漬物を食べなくなっている現状のなかで、これまで通り信頼感をアピールするだけでは生き残っていけない。ミュージアムをオープンしてからは『頭おかしいんじゃないの?』とか色々言われていますが、漬物や新生姜に興味を持ってくれる若者が少しでも増えるなら、そんな言葉すら大歓迎です」(岩下氏、以下同)

とはいえ、ただ奇抜なだけではネット上で一時的に話題になったとしてもすぐに飽きられる。社員から常に、社をアピールするための新しいアイデアを募っているという。

「うちのブログ(「ちょっとそこまで新生姜」)を書いているメンバーなんて、とても面白いですよ。たとえば、ある日のブログでは、いつもカレーの脇役に甘んじているらっきょうをたまには主役にしてやろうと、『ライスとらっきょうのポジションを入れ替えた、らっきょう山盛りカレー』を作ったりしていました。よくこんなバカバカしいこと思いつくなーって。あ、もちろん褒めてます! 遠慮せずに自分をとことん出し切ることが、人の心を動かす仕事につながる。このミュージアムにも、彼らの型破りなアイデアが随所に盛り込まれています」


●挑戦するなら「新生姜ミュージアム」ぐらい振り切れ!?

一方で、目立つことをすると叩かれるリスクも生じる。出る杭を打つ保守的な組織であれば、なおさら風当りも強くなる。だが、岩下氏自身はそうした批判に対し、必要以上に耳を貸さないよう努めているようだ。

「ミュージアムについてネットでディスられたり、ネガティブツイートを見かけることもあります。それがまっとうな意見なら受け止めますが、ほとんどは無責任な中傷に過ぎません。最初は的外れな批判にもいちいち落ち込んでいましたが、今はそれなりのスルースキルも身に付きましたし、この場所を楽しんでくれている好意的な意見の方が圧倒的に多いことが分かったから迷いはない。それに、批判や反対意見が出ないような企画やアイデアだったら、大勢の人を驚かせたり、楽しんでいただいたりするのは難しいのではないでしょうか。世の中の楽しいことって、大抵はその裏にやっかみや足を引っ張る人がいて、それらを乗り越えて存在していると思うんです」

こうしたブレない心構えは、組織のしがらみに縛られ不自由を感じている会社員にとっても参考になりそうだ。

「『やりたいことができない』と嘆く人もいるかもしれませんが、必要以上に落ち込まないでください。ある意味会社を自由にできる立場の僕でも、自分の思い通りにならないことの方が多いです。ただ、どうしてもやりたいことは、覚悟を決めて貫くこと。何かにトライするなら中途半端じゃなくて、とことんやってください。最終的に、人の心を打つのはアイデアではなく情熱です。このミュージアムも、私たちの『熱』をお客様に楽しんでいただいているのだと思います」

(榎並紀行/やじろべえ)

■個性派社長のお悩み相談室 第14回

  • 擬人化された新生姜が暮らす「新生姜の部屋」…
  • 部屋のなかでは、新生姜がソファに腰かけている…

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