「ゾンビ・フォーエバー」森 幸司さんのHMVバイヤー時代

逆境の音楽業界 “突き詰める”ことで生き残れ!

2016.08.05 FRI

会社では学べない!ビジネスマン処世術 > 逆境オトコインタビュー


森 幸司(もり・こうじ) 1983年生まれ。山形県村山市出身。HMVでのバイヤーを経て、”殺されても殺されても蘇ってくるゾンビのような音楽を発信”を掲げ、カセットテープ専門の音楽レーベル「ZOMBIE FOREVER」を立ち上げる
(撮影=森 勇馬)
「この業界もうヤバイよ」「斜陽産業だから」なんていうセリフが多くの業界で飛び交う時代。そんな逆境にあっても、ギラギラと輝いている“風雲児”をインタビューするのが本連載である。第1回目は音楽業界の風雲児。HMVのバイヤーを経て、カセットテープ専門の音楽レーベル「ゾンビ・フォーエバー」を運営する森 幸司さんだ。

●「どうせ売れない」インディーズ担当 どう戦った?


山形で音楽活動をしていた森さんが上京したのは20歳のとき。インディーズアーティストの楽曲が世に出る仕組みに興味を持つと、2007年、HMVにバイヤーとして入社する。

「日本のCD販売枚数は1998年をピークに急激に減少し続けていて、iTunesが登場した2006年からはさらに状況が悪化。僕がHMVに入社したのはそんなときでした」

アルバムに関していえば、1998年から約10年間で市場が半分に縮小するほどの急落ぶり。そんな中で入社した森さんが担当したのは、インディーズアーティストのアルバムの仕入れであった。

「どうせ売れないと思われていたんでしょう…。アーティスト1組につきCD1枚ずつしか仕入れさせてもらえませんでした。でも、どうにかお客さんにアーティストの魅力を知ってもらおうと、すべてのCDを面出しで並べて、1枚1枚に自分でPOPを書いて設置したら、結構売れたんですよ。CDのPOPって、『淡い心が映し出されている…』とか、アバウトな表現を使いがちじゃないですか。それだとなんだかよくわからなくて、結局アーティストの魅力も伝わらないと思うんです。僕は、『YMOを彷彿とさせる』とか、できるだけ具体的なワードを使って、ときにハッタリをかましながら(笑)、普段インディーズの音楽を聴かない人にも興味を持ってもらおう、と考えてました」

●できることが少ないなか、仕事のモチベーションは「突き詰める」ことで生まれる


もちろん、努力はこれだけではない。仕入れるCDのセレクトに関しても、時間と労力を割いて、考え抜いたという。

「たとえば、流行った映画があれば、その映画にちなんだCDを探しました。監督が影響を受けた海外文学と同じものにインスピレーションを受けたアーティスト…など、遠くてもいいから、何かしらの関連を探すんです。そうすると、1枚のCDからどんどんつながって、いろいろなアーティストを発見できる。自分自身がそういう聴き方をするんで、調べていくのは苦じゃなかった。面白かったですね。お客さんにも同じような人は結構いたようで、“リピーター”のようになってくれたときはとても光栄でした」

決して給料は高くなかったが、やりがいはあったと語る森さん。2010年にHMV渋谷店が閉店するなど音楽不況が深刻化し、上層部が店舗に並べるCDを決めるようになってしまうまで、インディーズ専門バイヤーとして働いた。そんな彼に、逆境のなかでモチベーションを高く維持するコツを聞いてみると…。

「自分の仕事を突き詰めることですかね。自分から勉強していく。僕の場合は売り場の広さや仕入れられるCDの枚数に制限があったからこそですが、ピンポイントで研究することができていた。そうすると、どんどん仕事に深みが生まれて、自分以外の誰にもできないことが増えていって、働くことが楽しくなるんですよ。仕事をしてると『自分の裁量の幅がせまい』ってことがあると思うんですが、そういうときこそ突き詰めていく。仕事を充実させるチャンスになると思いますね」

(黄 孟志/かくしごと) 後編では、彼がこのデジタル全盛期に、なぜカセットテープ専門のレーベルを運営しているのか…その哲学に迫る!
後編では、彼がこのデジタル全盛期に、なぜカセットテープ専門のレーベルを運営しているのか…その哲学に迫る!

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