「業界がうまくいっていないからこそ、何でもやる」

異端の編集者 幻冬舎・箕輪厚介の武器は“無知”?

2016.09.29 THU

会社では学べない!ビジネスマン処世術 > 逆境オトコインタビュー


箕輪厚介(みのわ・こうすけ) 1985年、東京都生まれ。2010年に双葉社入社。広告営業を手がけながら、2013年に雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊。2014年から編集部に異動。2015年幻冬舎へ。最新担当作は『空気を読んではいけない』(著:青木真也)
(撮影=飯本貴子)
「逆境」と言える業界で戦う30オトコにインタビューするこの連載。双葉社では見城 徹『たった一人の熱狂』、堀江貴文『逆転の仕事論』などを担当し、幻冬舎に転職後もヒット書籍を多く手掛けている編集者・箕輪厚介さんに話を聞いた。

●「いくらかかるの?」「わからないけど3000万」 経験ゼロの雑誌プロデューサー


書籍編集者として活躍する一方で、「note」ではあちゅう氏やイケダハヤト氏と共同運営マガジンを展開するなど、WEBサービスを活用したビジネスに、書き手としても参加している箕輪さん。その活動は、業界では目を引くものだ。

「出版業界というタイタニック号が沈みそうだとしても、僕がこの業界を変えようみたいな意識も能力もないですね。みんなが知らない間に、ゴムボートで気の合う仲間と南の島を探しに行きたい(笑)。この業界は過渡期。優秀な先輩たちに囲まれてるからこそ、僕は普通に勝負するだけじゃダメだなと思ってます」

刺激的に語る箕輪さんは、もともと雑誌の広告営業をしていたという。

「その当時から、正直『ビジネスとしては成立してないな』と思ってましたね。何とかしようと、新しい試みにはチャレンジしてましたよ。ギャルファッション誌の広告営業をやっていたので、『カラコンメーカーと組んでオリジナルブランドを作る』とか『出会い系のイベントを仕切る』とか。でも、結局は雑誌を維持するために強引にビジネスモデルを作っているだけで、誰もハッピーになってないな…と思ってました」

その後スタートする、編集者としての経歴は異色である。2013年、雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』が創刊。“ネオヒルズ族”として注目されていた与沢 翼氏が「責任編集長」というこの雑誌で、箕輪さんは広告部にいながら、編集経験ゼロで総合プロデューサーとなる。

「とにかく金を持っているクライアントを探していたころ、札束を見せびらかしている与沢さんをテレビで見て、『いた!!』と(笑)」

当時の与沢氏は、社内では「胡散臭いし危ない」と手を出してはいけない存在だったという。しかし、社長に一度NGを出されながら、箕輪さんは本を作るどころか雑誌を創刊してしまう。

「彼のほうから『雑誌を出したい』って言ってきたんです。『いくらかかるの?』と聞かれて、とっさに『3000万』って言ってみたら『出す』と。でも与沢さんの雑誌を作ってくれる編集者が社内に見つからなくて、じゃあ僕が作るか…という流れになったんです。結果的にいろんな意味で話題になって、3000万円もらった上で3万部が完売ですよ。今だったらできてませんね」

●“無知”だからレスリー・キーにも依頼できた 「斜陽の業界」なら好き勝手できる 



『ネオヒルズ・ジャパン』では、当時多くのファッション誌の表紙を撮影していたスターフォトグラファーのレスリー・キー氏が与沢氏を撮影することに。

「レスリー・キーに与沢 翼を撮らせるなんて、普通考えませんよね。今の自分だったら『いや無理でしょ』って言いますもん。編集部に移ったあと、見城さんの本(『たった一人の熱狂』)をやろうとしたときも、会社の先輩からは『もっと経験を積んでからじゃないと失礼だ』『相手にされないと思う』とか言われてました。でも、その時は『いや、そんなはずないだろ』って思っていて。『無知な若手』っていいカードなんですよ。無知からくる行動とか発想ほど破壊力があるものはないから」

常に新しいことに取り組むことで「無知」という状況を意識的にキープしているという。9月に発売となった担当作『空気を読んではいけない』(青木真也)のプロモーションでは型破りな「ゲリラサイン会」を行い、ツイッターから火がついた。毒づいた発言は多いが、箕輪さんは出版業界の現状を楽しんでいるようだ。

「業界が順調に拡大している状況だと、それは上に立ってる人が正しいってことになるんで、下はなかなか好き勝手できないと思うんです。今の出版業界はうまくいっていないからこそ、これまでの経験とかが関係なくなってきている。そういう意味では、僕みたいな経験の浅い人間が『そんな前例がないことはダメ』と言われるようなチャレンジを続けなきゃいけない、と思ってますね」

(黄 孟志/かくしごと)

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