作ろうとしないで作った“色”が武器 個性的な番組を生め

『スター名鑑』TBS藤井健太郎の「面白い」の基準とは

2016.12.22 THU

会社では学べない!ビジネスマン処世術 > 逆境オトコインタビュー


(撮影=飯本貴子)
様々な逆境で戦う30オトコに仕事術を聞くこの連載。第11回となる今回、話をきいたのは、TBSで『リンカーン』『ひみつの嵐ちゃん』などの人気番組のディレクターを経て、現在は『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆スター名鑑』などの演出を務める藤井健太郎さん。

個性や面白さが埋没してしまいがちな「会社員」という枠組み。そんな環境で個性的な番組を生み出し続ける秘訣とは何か?

●視聴者もスタッフも気付いていない!? マニアックな演出をする理由とは


藤井さんは、番組の制作過程において、オンエア前に作家を集めて意見を言い合う「VTRチェック」もしない。自分の感覚を最優先して物事を判断しているという。

「唯一の指標なので、視聴率は当然重視しています。でも、100%視聴率が約束される方法なんてないから、結局は自分が面白いと思うものを作るしかないんです。その中からなるべく視聴率の取れそうなものを選ぶだけ」

ナレーション原稿から編集まですべて自分でこなす藤井さんは、視聴者が気付かないような細部にまで、様々な仕掛けを施す。たとえば『水曜日のダウンタウン』での、「香川県のソバ屋でうどん置いてる店、マジで0軒説」という企画。方言のキツイおじさんのコメントを受けて「言葉の意味はよくわからんが、とにかくうどんを置いていないことだけはわかった」とナレーションを入れるのは、『キン肉マン』の名ゼリフ「言葉の意味はわからんが、とにかくすごい自信だ」の引用だ。また、『クイズ☆スター名鑑』のOP楽曲には、ゴールデンタイムの番組の視聴者にはあまりなじみがないであろう、ヒップホップアーティスト「JJJ」を起用している。

そんなマニアックな小ネタのキモは、「プラスアルファの楽しみ」。決して視聴者を置いていくつもりはないという。

「スタッフすら気付いていないものも多いと思いますが、わからなくても番組は楽しめます。誰かを弾く(排除する)ようなネタの扱い方ではなく『知らなくても面白い、わかったらより面白い』と奥行きを出す演出を心掛けています。そんなことをしても視聴率に影響はないでしょうけど、そういう部分へのこだわりも大事にしたいんです。テレビは他のカルチャーに比べて浅いものと思われがちですが、だからこそそういう深みの部分も残しておきたいなと」

●「評価をなんでも数値化」 …じゃなく、自分の基準を持とう



“視聴率の低迷”などがいわれることもあるテレビ業界だが、藤井さんはそれだけですべて判断する風潮に疑問を持っているようだ。

「一般の人たちが視聴率を気にするのって不思議ですよね。そもそも、ネットのニュースなんかでは、文脈によって視聴率『10%』を『高い数字』としても『低い数字』としても使い分けている。

最近では、食べログとかAmazonとか、みんなの評価が数値化、可視化されるサービスも増えていて、もちろん便利だし、参考にすれば大きな失敗は減るかもしれないけど、一方で『自分の基準で判断』することをしなくなるのは良くないですよね」

自分の基準とはいえ、「会社からの制限があるから、好きな仕事ができない」と感じているビジネスマンは多いだろう。それに対しては、「自分らしさは、かたちになってからはじめて気付くもの」と話してくれた。

「入社して自分で番組を作るまでは『自分には色(個性)がないから面白いものを作れないんじゃないか』って不安だったんです。でも、番組をいざ作り始めたら『色があるね!』って言われるようになりました。自分の基準や好みに素直に従っていけば、自然と色みたいなものが出るんでしょうね。

で、そうやってにじみ出た『色』って、上からの指示とか制限ではきっと消えないんですよ。『下ネタはダメ、その言葉は使っちゃダメ、この企業に迷惑かけちゃダメ』とは言えても、全体的なトーンには文句を言いづらいでしょう。ま、なぜか僕の『色』が会社から怒られる『色』って前提にはなってますけど(笑)」

「自分の基準と色」。やはりそれが、藤井さんにとって、面白い番組を作るうえで最も重要なものなのだ。

(黄 孟志/かくしごと)
藤井健太郎(ふじい・けんたろう) 2003年、TBSテレビに入社。入社3年目にバラエティ部署に異動し『リンカーン』の立ち上げに参加。2009年、29歳で『クイズ☆タレント名鑑』を立ち上げ、演出兼プロデューサーに。現在は『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆スター名鑑』で演出を担当
藤井健太郎(ふじい・けんたろう) 2003年、TBSテレビに入社。入社3年目にバラエティ部署に異動し『リンカーン』の立ち上げに参加。2009年、29歳で『クイズ☆タレント名鑑』を立ち上げ、演出兼プロデューサーに。現在は『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆スター名鑑』で演出を担当

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