キヤノンが2288億のコスト削減を達成 !

人件費削減だけでは語れない「リストラ」の本質とは?

2004.07.15 THU

アジアに海外旅行で行くと、日本よりも物価が安いことは誰でも実感できる。給料が上がらなくなったといっても、日本の所得水準はまだまだ高い。だったら、人にかかるお金が安いアジア諸国などに工場を移してしまえと、日本の企業は海外に進出している。

ところが、まったく逆に、国内に生産拠点を戻す企業がある。デジカメやプリンターでおなじみのキヤノンである。これまで、中国など海外でつくっていた製品のうち、デジカメなど高付加価値製品に限定し、日本国内の生産に切り替えていく方針だ。なんで、そんなことができるのだろうか?

それは、工場の中のムダを徹底的に省いて、なおかつ働く人を辞めさせないという、地道な努力の結果だった。まず、98年から「セル方式」を導入。どういうことかというと、一つの製品を何人もの人が流れ作業でつくっていくベルトコンベア方式だったのを、いろんな技能をもった人が、すべての製造工程を一人で行うやり方に改めた。

一人でいろんな作業をしなければいけないから、自ら考え作業の効率を向上させるようになるし、“自分の作品”をつくるという「やりがい」が生まれる。この方式で、デジカメなどの心臓部であるポリゴンミラーという精密部品をつくるのに、13時間かかっていたのを、なんと10分に短縮した。人の能力はすごいのである。

また、それまで外注していた部品を社内でつくる「内製化」を進めた。これも功を奏し、測定器や治工具という工場では欠かせない道具を自社でつくると、そのコストが10分の1に減少した。

これらの総合的な業務改革の結果、03年までに累計2288億円のコスト削減を実現。地道な努力が実を結び、人件費の安い海外に負けないコストで、日本で製造できる体制を築くことができたのだ。

「リストラ」の本来の意味は「業務改革」で、人員削減ではない。そういった意味で、キヤノンは本当のリストラを達成したといえるのではないか。

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