BSEが対米外交の道具に?

全頭検査見直しで揺れる食品安全委員会と政府の思惑

2004.08.19 THU

「最後の牛丼」なんて見出しがメディアを賑わせたのは2月~3月のことだが、ついに吉野家が2004年8月中間連結決算の下方修正を発表した。売上高は当初予想の627億円から596億円に、経常損益も11億円の黒字から15億円の赤字に修正。90年の店頭公開から、通期を含め同社の経常赤字は初めてのこと。新メニュー投入では、顧客離れを食い止めることは難しかったようだ。

その原因はもちろん、昨年12月から発効している米国産牛肉の輸入禁止措置。BSE感染牛がワシントン州で確認されたことが発端である。国内の全頭検査と同じレベルの検査を求める日本と、全頭検査には科学的根拠がないとして輸入再開を求める米国の間で、話し合いはこれまで平行線をたどってきた。

そもそもBSEというのは、いまだ未解明な部分の多い病気。原因物質とされる異常プリオン(悪性タンパク質の一種)が脳に蓄積されることが、発症の引き金なのか結果なのかすら議論がわかれている状態だ。人への感染ルートも曖昧で、BSE感染牛を食べなくても、脳のタンパク質が突然悪性に変異し、発病してしまう人もいる。

しかし、ここにきて内閣府の食品安全委員会はじめ、厚生労働省、農林水産省などが、公式・非公式に全頭検査制度の見直しを進めている。全頭検査に限界があることがその主な理由。実際、検査の感度がまだ低く、検査をすり抜ける牛がいることなどから、ヨーロッパ諸国では脳や脊髄などの特定危険部位の除去こそ現実的な対処法とされている。日本では、2000年に起きた「狂牛病パニック」を沈静化させるために導入された全頭検査。それは科学的な根拠に基づく対応というより、社会的パニックへの政治判断だったということか…。

米大統領選を控えたこの時期になって、これまで続けてきた全頭検査を見直す動きは加速している。ちなみに、日本産牛肉の対米輸出は、2000年からずっと停止されたままである。

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