あわよくば出世する技術

第5回 上手な「お世辞」の使い手になるには?

2009.01.30 FRI

あわよくば出世する技術


『ヨイショの技法』(草思社)では、一見ネガティブな単語もポジティブに言い換えることで褒め言葉に換える、「M・I(ものはいいよう)法」を推奨している。上手にヨイショを操るには、ユーモアセンスも必要ってこと?

下手なお世辞を使うよりも効果的な「ヨイショ」を覚えよう



誰だって褒められれば悪い気はしない。褒めて相手を上機嫌にさせられるなら、お世辞だって立派なコミュニケーション・スキルのひとつといえる。

しかし、お世辞という単語にあまり良いイメージがないのはなぜだろう?

それはきっと、お世辞という言葉の裏に、「気に入られたい」という下心が見え隠れするからだろう。実際、口八丁で周囲に取り入ろうとする小賢しい輩に、誰しも一人や二人、心当たりがあるに違いない。

とはいえ、上司や先輩には気に入られておくに越したことはないし、取引先の覚えがよくなれば思わぬビジネスチャンスにだってありつけるかもしれない。お世辞を使いこなせることは間違いなくプラスだし、何よりラクに出世につながる可能性を秘めている。

ただし、「見え透いたお世辞」という言葉があるように、下手なお世辞は逆効果。身近な管理職経験者に、部下のお世辞についてざっとヒアリングしたところ、こんなコメントが聞けた。

「露骨に気に入られようとする姿勢は虫が好かない。だったら、寡黙に手だけ動かすタイプの方が出世するのでは?」(建設会社勤務・35歳・課長)
「最近、体重が増え気味で困っているのに、『あれ、スマートになりました?』なんて言われると、普段の俺をまったく見ていないのだなとガッカリする」(製薬会社勤務・33歳・係長)

気に入られるために放った言葉で減点されては本末転倒。ここはひとつ、上手なお世辞の使い手になりたいものだが。

そこで、『ヨイショの技法』を著したグループ・ニヒトの事務所にお邪魔した。

「たとえば会議で上司のプレゼンを聞いたら、もし内容がイマイチでも、部下は『良かったですよ!』『さすが!』と褒めますよね。それは事実に反した言葉です。なかには褒めるところがまるで見当たらない上司だって存在すると思いますが、それでも良い部分を見つけて拾い上げ、相手の好意を勝ち取ること――それがヨイショなんです」(グループ・ニヒト 市川スガノさん)

実際この取材の際も、筆者と名刺交換をするなり、
「同じ名字の人をほかにも何人か知っていますけど、みんないい人ばかりなんですよ」
「いいレコーダーをお使いですね。さすが、仕事がデキそうだ」
「コーヒーはブラックでいいんですか? 男らしくて素敵ですね!」
と、さっそくヨイショのオンパレード。

まんまと上機嫌になってしまった僕(単純でしょうか?)。お陰でのっけから打ち解けてスムーズに取材が進み、ヨイショの威力を身をもって感じた次第だ。

不思議なもので、完全なるお世辞とわかっていても気分は上がる。理由はおそらく、「明るい方ですね」とか「やさしそうですね」といったわりと大勢の人に当てはまりそうな言葉ではなく、褒めるポイントが具体的で、ちゃんと筆者向けにカスタマイズされた言葉が使われているからだろう。

つまり、最初の2~3分で挙動から持ち物までを観察され、褒めるポイントを探られていたことになる。うーん、これは見事。

こうしたヨイショを自然に取り入れることができれば、ビジネスシーンに味方が増えることは間違いなさそうだ。
たとえば何気ない一枚のこのカットも、ヨイショのテクニックを駆使することで、褒めポイントがたくさん発掘できる。ブラックのコーヒー、ネクタイやシャツのデザイン、すっきりと片付いたデスク、ほこりひとつないキーボード…etc

適切な「ヨイショ」がもたらす思わぬコミュニケーション効果とは



「下手なお世辞」「見え透いたお世辞」という言葉があるように、褒めているつもりが裏目に出てしまうケースは少なくない。

上司や取引先の機嫌をとるつもりが、逆に気分を損ねてしまうことになってはたまらない。では、良いお世辞と悪いお世辞は一体どこに差があるのか? 『ヨイショの技法』の著者、グループ・ニヒトの皆さんを直撃した。

「悪いヨイショとは、それがヨイショであることを相手にさとられてしまうヨイショのこと。もみ手などはもってのほかですね」(グループ・ニヒトの白洲黄泉人さん)

つまり、相手が自然に受け入れられるような、わざとらしくない褒め言葉であることが大前提。そのためにはまったくの事実無根ではなく、その人の褒めるべきポイントを探し当てなければならない。

「そのうえで、いかにポジティブな言葉に言い換えられるかが勝負です。たとえば太っている人のことを、頭の中でデブと表現するのではなく、恰幅(かっぷく)がいいふくよかなど、普段から好意的な見方を心がけるのも大切。それによって褒め言葉の語彙(ごい)も広がっていきます。太めの女の子に対しても、グラマーで色っぽいなどと表現すればかなり聞こえはいいわけですし」(同・市川スガノさん)

そんなグループ・ニヒトでは、「褒める」「へりくだる」「好意・思いやりを示す」をヨイショの3原則として掲げている。たとえば以下。

『○○さんは本当に恰幅がよくて貫禄ありますね! 僕なんて貧相だから、すぐナメられちゃうんですよ。あこがれちゃうなあ!』

上記の言葉には、前述した3原則がすべて含まれている。ただ褒めて終わるのではなく、自分を下に位置づけて相手をたて、最後にこちらの好意を示してフィ ニッシュ。このたたみかけによって上司や取引先の好意を勝ち取ることが、ヨイショの極意なのだ。

そしてヨイショには、次のような思わぬ相乗効果も。
「頑張って褒めるところを探そうとすると、ちゃんと相手のことを見るようになりますし、話をしっかり聞く習慣が身に付きます。そうやって観察していると、その人の良い部分が本当に見えてくることも多いですし、良い部分が見つかれば相手に対する見方も変わってきますよね。褒められた相手も自分に好意を持ってくれるし、ヨイショとは双方がハッピーになるコミュニケーションなんです」(白洲さん)

また、ヨイショは必ずしも相手を褒めるだけでなく、日常の中で様々な応用法がある。

たとえば上司に仕事を言いつけられた時、ただ「はい」と返事をするのではなく、「ありがとうございます! 自分を戦力に数えていただいて」とひと工夫するだけで、間違いなく社内でのイメージはアップするはず。

使い方次第で毒にも薬にもなるヨイショ。応用できる場面はまだまだたくさんありそうではないか。 たとえウソでも褒めたくないような上司、というのもいるでしょう。けれど、試しに褒めるべきポイントを探してみたら不思議とちょっとイメージが良くなったりしませんか?

ヨイショの持つ不思議なマジック。事実無根の褒め言葉なら、それはヨイショの効力を持ちません。

僕自身、自分があまりにお世辞に弱いことを気にしていましたが、褒められてうれしく感じるのは、その言葉にいくらかの真実が含まれているからですよね!?

ビジネスが人と人とのコミュニケーションで成り立っている以上、こうしたヨイショの技法も覚えておけば、きっと出世の役に立つはず。

当連載では、引き続きお便り大募集中! 皆さんにとって、話していて好感を持てる人物とはどんなタイプなのでしょう。褒めるのが上手な人? それとも理性的な話し方をする人? 日ごろの体験をぜひ教えてください。

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