業界別ビジネスモデルの謎

第7回 最後の専門店? 花屋さんの謎

2009.02.20 FRI

業界別ビジネスモデルの謎


イラスト/村田らむ こんな薄汚れた世の中で、お花に囲まれながら働けるなんて、夢のよう! ビジネスモデルとか問題じゃなく、職業として選ぶならなかなかいいのでは

精肉店、鮮魚店がなくなっても花屋がなくならない理由とは?



閑散とした商店街。
商品を専門に扱う、肉、魚、八百屋は減った。でも同じく専門化した花屋はそれに比べて減ってない気がします。「日本国内の花の消費拡大」を目的として活動を行っている、日本フローラルマーケティング協会の会長、小川孔輔さん、実際の花屋の市場規模はどの程度なんですか?

「花屋は日本全国に商業統計上、2万4000軒あります。ちなみに花卉(かき・花の咲く草、花を観賞する草木の意)の最終消費需要は、花木類などをすべて足し合わせると1.2兆円といわれています」

平均で一都道府県あたり約510と店舗の数もかなりのもの。
専門店の中で花屋はどのような位置づけなんでしょうか?

「ビジネス用語では専門店とはいわずに、業種店を呼びます。ちなみに花屋は最後の業種店といわれています」

あ、失礼しました。業種店の説明しておきますと
・業種店=取扱商品や営業種目で分類された店。精肉店、八百屋、酒販店など。
それに対して
・業態店=販売方法や経営方法で分類された店。百貨店、スーパーマーケットなど。
となっております。小川さん、お話のつづきをどうぞ。

「スーパーでも花を扱っているところは多いです。肉・魚・青果の生鮮三品に次ぐ四品目めとしての期待もありますし。ちなみに肉と魚と野菜は業種店よりも業態店であるスーパーなどの方が売上が上回っています。その理由は鮮度が高くて値ごろな商品をプリパック(小分けにしてビニール包装)してセルフ販売する技術が確立されているからです。対して生花はまだそれができていない。それなのに量販店の売りである値ごろ感だけ出そうとして、鮮度の低いものを置いてしまう場合が見受けられる。これでは個人消費が伸びません」

そういえば、確かにスーパーで花を買うという印象はありませんでした。スーパーに付随している花屋は別ですが。それでは日本の花マーケットの実態はどのようになっているのでしょう?

「日本での花卉の需要は7:3で冠婚葬祭などの業務用なんです。ただ、10年前の比率は8:2でした。個人消費は伸びているんです。基本的に世界中みんな、人は花が好き。送られて喜んでも困る人はいない。つまり潜在需要は非常に大きい。ということで、日本の量販店も生花に力を入れようと、イギリスのスーパーマーケット『テスコ』の販売モデルを参考にする店が増えてます」

テスコのモデルとは、特別なものなんですか?

「テスコは高価な国産やオランダ産の花卉を減らして、低価だけど新鮮・高品質なケニア産などを増やすことで値ごろ感を出し、さらに美しく見せるプリパック技術で生花販売に大成功したスーパーです。レジを出るお客さんの約10人に1人は花を持っているという結果を出しています。日本のスーパーは平均すると約200人に1人。現在の差は歴然ですが、5年以内には近づけると思います。最後の業種店だった花屋の姿も激減するでしょうね。なんの特徴もない花屋は消えていき、専門や特色を持った花屋は生き延びていく。ほかの業種店同様、花屋もそういう時代にいよいよ突入すると思います」

なるほど、最後の業種店と呼ばれた花屋も簡単ではないみたいです。ただしは個人需要を掘り起こすことで、オランダで過去10年で2倍、アメリカで1.5倍と爆発的に市場規模が大きくなったという例もあることですし、まだまだ潜在的市場の大きいビジネスと考えて間違いはないようです。
JR目白駅駅から徒歩2分。目白通りから少し入ったところにお店を構える『花よろず』。フラワーショップ&カフェ・ギャラリ-というだけあって、花屋にカフェ併設。花束やアレンジメントフラワーを作ってもらっている間は、隣のカフェでコーヒーを飲みながら待つことも可能

儲かる花屋さんの 新しいサービスとは?



日本全国に商業統計上約2万4000軒(2004年)あるという花屋。
日本フローラルマーケティング協会会長の小川孔輔さんによれば、設備投資も少なく参入障壁が低いビジネスだけに、新規オープンも多いが、オペレーションに失敗して廃業する花屋も少なくないらしいです。

では、どんな花屋だったら今後、成功する可能性が高いのでしょうか?
小川さんは、有望な花屋のビジネスモデルとして以下のものを挙げてくれました。

<インターネット販売を行う>
直接商品を送る形態よりも加盟店サービスを利用するのが得策である。例えば札幌の花屋が受けた注文が、東京に送るものだとした場合、札幌から直接送るのでなく、同じサービスに加盟している東京の花屋が代行してくれるというもの。

<園芸売店にする>
自ら育てて売る花屋、園芸売店。
この形態を採用すれば、第一に仲卸に中間マージンを取られることがなくなる。自分のところで作っていないものだけ市場で仕入れながら、腕を磨き、農園も増やしていけば、原価率をどんどん下げられる。最近はこの形態が急増しているとのこと。

<専門・特色を持った花屋にする>
独自のフラワーアレンジメントを開発してブランドイメージを高めたり、ブライダルや葬祭などのコンサルティングサービスを始めるなど。専門・特色を持った花屋にすることで、ありがちな、ただの花屋から脱却する。

3番目に挙げられた、<専門・特色を持った花屋>を地でいくお店を発見したので、お話を伺いました。目白でフラワーショップ&カフェギャラリー『花よろず』を営む森本美榮さんです。その名の通り、花屋の隣にカフェを併設することで商売の幅を広げている様子。ちなみにこちらではほかにも、ブライダル関連の花を飾る業務もやられているとか?

「ブライダルの方が最初です。店舗を持たずに個人でやってました」

そこから店舗を持つとなると、いろいろと大変でしたか?

「いえ、花屋をやるにはテナント、または店舗スペースさえあれば大丈夫です。キーパー(花を入れておく冷蔵庫のようなもの)がなくても、仕入れを失敗しなければ問題ないですしね」

確かに水場さえあればOK。あとは花の展示の仕方次第で、店の内装もほとんどやる必要がなさそうですよね。では、苦労することはというと。

「仕入れですね。最初は仲卸から買っていましたが、店舗を始めるにあたって市場へ行くことに。それには買参権という資格を取らなければならないんです。これはそれほど厳しくないです。つらいのはその競りが朝5時くらいからと早いことですね」

そのまま、持って帰れば売れるんですか?

「そこで買った生花を切って水に浸けるなどの仕込みを行い、夕方に販売するのがメインです。ちなみに市場は月水金の3日間。その日の夕方にお店に並ぶ花が一番新鮮。その時間に盛況な花屋は売れてる花屋ですね。その時間が新鮮だと知っているリピーターが多いということですから。商品として売れる期間は花によってまちまちなので一概には言えません。ただし満開になった時点でもう売り物にはならないですね。その花は可哀想だけど廃棄します」
お花屋さんの店内は写真のように花のディスプレイさえうまくすれば、什器はほとんど必要ないそう。飲食店などに比べて初期投資は圧倒的に少なくて済むので参入障壁は低いです
なるほど。しかしつらいのは週3回の朝早い競りだけということならば、正直、楽で儲かる仕事なんじゃないですか? しかも花に囲まれて幸せ~、みたいな。

「そんな、なんとなく花に囲まれて幸せという感覚では、今後は厳しいと思いますよ。大手はネット販売でますます利益を上げるでしょうし、スーパーの台頭もあるでしょう。そんななか、個人の店が生き残るには、やはり1人ひとりのお客様にしっかりサービスしていくこと。スーパーのようにセルフじゃなく、通販のように顔が見えないのでもない、対面。そこでのサービスに力を入れることが花屋の生きる道だと私は思います」

甘くはないということですね。し、失礼しました。 楽して儲かるかどうかばかり気にしていたのを見透かされたのか、取材の終わりに森本さんに花束を渡され、「心を豊かにしなさいね」と言われてしまいました。

その花を仕事場に飾りました。ちょっぴり、癒やされてます。

いやいや、癒やされている場合じゃなくて。ビジネスビジネス。
小川さんの話では花屋さん需要の業務用:個人消費の7:3は、近い将来に逆転し、3:7になると。業務用の需要は現状維持であろうから、個人のみ伸び、市場規模は拡大するという図式。日本の花マーケットが伸び悩んだのは、マーケティングがしっかりしていなかったからだとのことです。つまり花自体の潜在需要はあったのですが、花屋サイドが、業務用にばかり目が向いていたため、個人消費をおろそかにしてきた結果だと。

今後は、対面でのサービスを充実させ、値ごろ感を出し、消費者の求める花を求めるタイミングで提供できれば、これからも儲かるビジネスモデルとして花屋はアリなんじゃ(飾った花を一瞥)いやいや、そんな邪(よこしま)な気持ちでできるほど、簡単な商売じゃないですよね。すみませんでした、森本さん。

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