業界別ビジネスモデルの謎

第8回 学生起業家に学ぶビジネスモデル

2009.03.06 FRI

業界別ビジネスモデルの謎


イラスト/村田らむ どんな事業を始めるにしても、やはり若いということは最大の武器。経験不足という面も否めませんが、学生起業を考えるくらいの人間なら、結局そのあたりの大人よりは俄然しっかりしています

日本で最初の業態は学生起業家が生む!?



就職を選ばずに、学生の身分で会社をおこすという考え方。
就職という安定を選ばない=リスクが高いと考えられるこの選択も、人によっては逆に低リスクであるとのこと。そうですよね? 法政大学3年生の時にルームシェア専門の会社・BGJを起こした、伊藤吾多さん(23歳)。

「1年生の時に行った就職ガイダンスで話している人の説明がめちゃくちゃで。自分はこんな人に将来査定されるのかと思うと、むしろリスクが高いのではないかと思いました」

それがきっかけで早くも起業を志し、経済の勉強に励み、アメリカへ留学した伊藤さん。そこでの寮がルームシェアだったことにヒントを得て、ルームシェアできる物件をルームシェアしたい人を紹介する会社を立ち上げたとのことです。ちなみに東京都主催のビジネスコンテストで優勝したという、そのビジネスモデルを簡単に説明してください!

「最初は宅建の免許を持っていなかったので、仲介(いわゆる不動産業)ができなかったんです。なので、あらかじめ借り上げた物件を留学生などルームシェアしたい人たちに貸す、という方法を採ってました。しかし昨年の6月に仲介の免許を取得した後はその形態ではなく、ルームシェアをしたい人を集めて不動産管理会社とつなぐのが主な業務となってます。ウチの特徴は賃貸契約書だけでなく、独自に生活ルールの契約書を出すこと。ルームシェアはとにかくトラブルが多いんですよ」
飯田橋駅から至近の伊藤さんの会社Be Good Japan(BGJ)。ルームシェア専門の不動産屋としては、全国初だそうです
たしかにひとつ屋根の下に他人が一緒に暮らすとなれば、ケンカも多いでしょうね。

「だから『何時以降は静かにする』とか『ゴミの当番は誰にする』とか、あらゆることを明文化しておくんです。この契約書システムが好評ですね」

結果、会社立ち上げ1年目で売上850万円、2年目が3500万円、3年目の今年は10月決済で8000万円を超える予定という。

「ウチはキャッチーだからチヤホヤされたと思うんですよ。ビジネスコンテストで優勝した、日本で初めての業態。それを学生が始めたということ。学生だとい うと、一般の起業家よりもはるかに人が会ってくれやすいです。リクルーティングも兼ねられますからね。あと学生のメリットでいうと、精神面でのリスクが少 ない。築いてきた社会的地位とか、家族のことを考えなくて済みますから」

失うものはないに等しい学生の身分。だから自分の信念、考え方に突き進める。つまり既存の考え方、業種に寄ってリスクを軽減しようという方に向かわず、新しいビジネスを生み出せるのかもしれませんね。

慶応大学の修士課程1年であるクマール ラトネッシュさん(23歳)も自分の信念をもとにビジネスモデルを開発した学生起業家のひとり。

「大学2年生のとき、貧困問題に対して自分も何かをしたいと活動したのですが、寄付の先にある不透明さに疑問を感じました。それを明らかにできるようにと考えたビジネスモデルをアイデアコンテストに出したところ評価されたので、ビジネスとしてやろうと決めました」

「NEXT ENTREPRENEUR 2008 AWARD」で優秀賞に輝いたクマールさんの会社・イーフープの業務は、寄付プラットホームの構築。そのビジネスモデルを簡単に説明するとどういうことですか?

「寄付金がどこにいったかというのを、寄付した個人にキチッとフィードバックする仕組みを作るということです。例えばワクチンが足りていない地域にワクチ ンを配ってほしいと寄付したはずが、実際は必要のないエンピツが大量に配られていたりする。それでは寄付した意味がない。そこで寄付されたお金をどのよう に使うのかを開示している団体を集めて、情報とともにサイトに掲示。個人はそれを見て寄付する団体を決める。つまりは一方通行じゃない、インタラクティブ な寄付のプラットホームを提示するシステムを開発しています」

寄付という非営利な行為をもとにしているだけに、直接的な収入は得られない。ただし企業の行動原理の1つとしての社会貢献を考えれば、そのシステムを活用して寄付金の管理をしようという会社が今後増えていくであろうことは十分に考えられますよね。

クマールさんのビジネスは営利目的より、むしろ学術研究的な側面が強いようです。自分の構築したビジネスモデルが現実社会で機能するかどうかを確認したい、そんな学生起業ならではの意義を非常に感じる話ですね。
アメリカのビジネスモデルをそのまま日本に輸入したという『ルーズフリー』。外国で成功しているビジネスモデルを輸入するという手法でも最初にやれば確実にファーストムーバーアドバンテージ(先行者利益)は確保できます

未曾有(みぞう)の大不況は逆に学生ベンチャーのチャンス!?



戦後最低最悪の不景気といわれるなか、それでも強気でいけるのは、失うものの少ない学生だけか。学生時分にがんばって起業せずにいつ起業するん!? 起業したくても学生はお金がないんじゃないかって?

それならば「先にお金が入ってきて、後でコストが出ていくようなビジネスモデル」を見つければいいと、大学3年生のときに会社をおこした法政大学経済学科4年生の浜野勇介さん(22歳)。それってどんなビジネスモデルなんですか?

「『タダコピ』(コピー用紙の裏を広告スペースにすることで料金を無料にする学生支援サービス)やフリーペーパーと同じ考え方で、広告を載せる代わりに無料で何かを提供するサービス。その媒体をルーズリーフという形にしました。つまり広告料金を先にいただき、その後で広告を印刷したルーズリーフを無料で配布するということです。無料のルーズリーフなので、語呂を合わせてサービス名は『ルーズフリー』」

なるほど、確かに「先にお金が入ってきて、後でコストが出ていくようなビジネスモデル」ですね。先に広告費という資金を調達した後に、初めてルーズリーフへの印刷というコストが発生する。それなら開業資金がなくても始められますね。でも、広告を取るための営業が大変そうですが。

「学生ということで話を聞いてくれやすいというメリットはありますが、それでも最初は100社まわって1社取れるかどうかでした。しばらく経ち、『ルーズリーフという学生相手のビジネスなので、学生の方がマーケティングに優れている』という強みが認知されて、軌道に乗れました。それからは、営業しなくてもサイトを見て広告を入れてくれる企業ばかりです。今は逆に断りを入れて、広告の量を調整している感じですね」

現在、社員2人で月商500万円以上(2009年3月見込み)とのこと。すごい!
確かに同じ学生であれば、テスト前などルーズリーフが必要な時期を把握してるでしょうから、受け取ってくれるタイミングもバッチリ把握。

「ティッシュよりもはるかに受け取ってくれますね」

ちなみにこのビジネスモデルは、アメリカで「フリーハンドアドバタイジング」という会社がやっていたもの。それは確かにアメリカでは大きな業態となっていました。しかし、同じように日本で流行るかどうかはわからない状態。それを恐れず真似できるのも学生の強みだったということでしょう。

日本で最初の業態。これが大切。
法政大学で新規事業と起業のゼミを持つ田路則子先生もこう言ってます。

「とにかくビジネスモデルに関しては思いついた人の勝ち。たとえシステムが盤石でなくても、ファーストムーバーアドバンテージ=先行者利益に乗っちゃえばいい」

思い付いたらとにかく始めることが大切であるとのこと。

「しっかりとビジネスモデルを作ってから起業するというのが従来の考え方。しかしそれをやっていたらいつまで経っても起業できないと思います。若いときに練習と思って何度もやってみる。何度も起業する人のことをシリアル・アントレプレナーといい、米国では一般的なんです。2つか3つ目でうまくいくビジネスモデルが見つかることも少なくありません。ですからとにかくやってみること。学生であれば、周りのみんながサポートしてくれますから、小さなお金で回せるビジネスモデルを何個も試すことができます。それで大きなリスクを背負うこともありません。あと、不況だからといって怖がることもないでしょう。不況だからこそ見えてくるビジネスもいっぱいあります。逆にチャンスだといってもいいくらいです」(田路先生)

このチャンス、生かしたい! 自分が学生なら、ぜひ生かしたい!!(もはや無理) 聞けば聞くほど、学生のころに起業しておけばよかった
と、悲観してても始まりません! 時間は戻せません!!

学生起業のメリットである、
・学生はリクルーティングを兼ねて人が会ってくれる。
は、社会人に置き換えると、
・社会人は社会経験で得たコネで人と会える。
になりますし、
・学生は家族の生活を考えなくていい=リスクが少ない。
も、社会人に置き換えると、
・家族がいるからがんばれる=本気で臨める。
になるわけです。

むしろ、今回の話で
・お金がなくても始められるビジネスはたくさんある
・ビジネスモデルは思い付いた者勝ち
ということを強く気付かされたわけですから。

今からでも遅くはない! がんばります!!

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