あわよくば出世する技術

第10回 人たらしのマジックフレーズ

2009.04.10 FRI

あわよくば出世する技術


会議やプレゼンの場で、自分のアイデアを効率良く通すヒケツは「自分の主観を消す」こと。自分がやりたいから提案しているのではなく、さも市場がそれを求めているかのようなフレーズを駆使しよう。マジックフレーズとは方便なのだ

会議やプレゼンで生きる!マジックフレーズの極意



以前、ある先輩から「この話はお前だから言うんだが」と、何やら深刻な前フリで相談を受けたことがある。

そう折り入られては、こちらも襟を正して聞かねばなるまいと、親身に耳を傾けたものの、後日、その先輩はほぼ仲間内全員に同じ相談を持ちかけていたことが判明。「なんだ、俺だけじゃないのか」と、ちょっとガッカリしたものである。

しかし冷静に分析してみると、この「お前だから」というフレーズはなかなか曲者だ。信頼されているんだなと気持ちをぐっと引き寄せられてしまう、不思議な魔力を持っている。

これは人心掌握のためのヒントになりそうだ。前フリや演出をひと工夫するだけで、人望を得たりイメージアップにつながったりするなら、これほど楽なことはない。

そこで、言葉のプロとして女性誌などでも活躍中の放送作家、樋口卓治さんにレクチャーをお願いした。

「聞く側というのは、相手が話すアイデアや情報について、自然と良いか悪いかの2択の評価をくだすことになります。まず、そのジャッジを避けるための前フリをするのがポイントです」(樋口さん)

たとえば「この件について、何か良い案はありませんか?」と言われた時。同じ意見を言うにしても、前フリ次第で印象は大きく変わる。

「本音ではなくても『僕、その分野にはあまり詳しくないのですが』と前フリをしておくと、その時点で聞く側のジャッジは良いか悪いかから、その件についてどの程度知っているかに変わります。たとえ平凡なアイデアだったとしても、『お、なんだわかってるじゃん!』という評価が先に来ますから、おのずとハードルは下がりますよね。同じように、『いま思いついたんですが』なんて前フリも、『即興のわりにはいいじゃないか』という評価が得られやすいでしょう」(同)

つまりは、こちらの発言に対するハードル(期待値)をいかに下げるかがカギ。いかにも良いコメントを言いそうな、自信満々な前フリは損だ。

さらに、企画会議やプレゼンの場で自分のアイデアを効果的にアピールするには、自分の存在を消すことが重要だという。

「たとえば女性向けの商品企画なら、ウソでもいいから『これはうちの妻が言ってたんですけどね』などと前置きすると、内容に客観性が生まれ、聞き手の印象はだいぶ変わります。この企画を通したいという自分の意欲をアピールするのではなく、市場の状況からしてこの商品が有益である、という部分をアピールするわけです。何事も、自分の存在を消して話した方が、客観的な情報として聞こえますから」

コツは、自分の主観を消し、いかに市場がそのアイデアを求めているかという必然性を淡々と語ること。さっそく次の会議で試してみてはいかが?
テレビ業界の企画のプロである樋口さんが上梓する、発想術指南書。『企画術の教科書』(古舘プロジェクト編/インデックス・コミュニケーションズ)、『もしも、シンデレラの行動がすべて計算ずくだったら?』(樋口卓治/PHP研究所)。思わぬ視点が得られるかも?

上手な比喩にお世辞をプラス!マジックフレーズの作り方



聞き上手な人というのは、誰しも印象がいいものだ。巷には会話術の指南書が山積し、リアクション(相づち)の作法を説くハウツー本もたくさんあるが、そんななか「大切なのは比喩力」と、ユニークな切り口でレクチャーしてくれるのが、放送作家の樋口卓治さんだ。

「たとえばグルメレポーターというのは、いかに『美味しい』という言葉を使わずに美味を表現するかが腕の見せ所。会話の相づちも同じで、バリエーションを豊かにするために、上手な比喩を探すのがコツです」(樋口さん)

たとえば会議や打ち合わせの席で、上司が話す内容に気の利いたコメントを返したい場合。

「内容を咀嚼(そしゃく)したうえで、他の何にたとえられるかを探してみると楽しいですよ。『それってまとめると、WBCの時の原監督みたいな方針ですよね!』なんて言えば、今ならとくに上司も気分がいいでしょう。それに、話の内容をよく理解しているなと思ってもらえるはず」(同)

ポイントは、相手より少しだけ高いステータスから比喩を探し、それをデフォルメして言ってみることだ。

ちなみに、これは女性を褒める際にも応用できる。美女に対して「キレイ」と褒めるのではいかにも工夫がない。巧みな比喩を駆使して、相手がこれまで言われたことのない表現で褒めれば、より相手の心にも響こうというものだ。

「単に『○○に似てますね』と言うのもありきたりな比喩ですし、ここは一歩進めて『化粧品のCMに出演できそうですよね』などと言う方が効果的。しっかり美しさも褒めているし、相手も『あら、そうなのかしら』と思わず納得しちゃうかもしれません(笑)。その人が褒められたいポイントの延長線上からたとえを探すこと。比喩にお世辞をひとつ加えるのがコツですね」

そうした比喩力を鍛えるためには、「すごい」や「キレイ」「美味しい」といったありていの讃辞を自分で禁止するのがいい、と樋口さん。あとはひたすら想像だ。

「相手のチャームポイントの逆を攻めるのもひとつの手。たとえばキャリアウーマン風の女性に対してなら、『仕事がデキそう』などと言うよりも、『彼氏の前では意外と甘え上手にもなれそうですね』と言った方が話は広がりますしね」

こうしたテクニックについて、樋口さんはテレビ番組のナレーションを例に、次のように解説する。

「ダメなナレーションというのは、見ていればわかる情報ばかり言うこと。画面からはわからない情報を補足するのが良いナレーションです。同様に、相手の話やルックスから想像を発展させて比喩を発想する、いわば大喜利のようなものなんですよ」

そう、これは大喜利なのだ。会社の上司なら「お前、わかってるな!」、意中の女性なら「そんなこと初めて言われた!」という答えを引き出すための問いを、想像豊かに探してみてほしい。 メッセージというのはひと手間加えるだけで、ここまで仕上がりが変わるのか! と、なんだか上質な料理番組を見ているようだった今回の取材(比喩してみました)。すぐに使えるフレーズもあるはずなので、ぜひ皆さんお試しください。

さて、今回もご意見大募集。皆さんの職場で、出世に縁のない上司や先輩はいませんか?

なぜ彼らは出世できないのか。反面教師として分析し、その要因をぜひ教えてください。ご好評いただいた本連載も、ついに残すところあと2回! メールお待ちしております。

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