業界別ビジネスモデルの謎

第11回 円高で笑顔になれるビジネスとは?

2009.04.17 FRI

業界別ビジネスモデルの謎


イラスト/村田らむ 円高で自動車などの輸出業が苦戦を強いられるなかで、円高差益で好調なのが輸入業。日本へ向かう貨物船はさながら“宝船”のよう!?

輸入業を始めるのは難しいの?



たとえば欧米で100ドルで買えるバッグがあったとします。
1ドル110円の時は仕入れるのに1万1000円かかってましたが、1ドル100円の今なら1万円で仕入れられる。差益1000円。1ドル90円の時なら9000円で仕入れられましたから差益2000円だったわけですよね。ちょっと出遅れた感はありますが、まだまだ輸入ビジネスはチャンスだと思うんですよ。

ジェトロ(日本貿易振興機構)認定アドバイザーであり、輸入商社マルオ代表取締役の大須賀祐さん、どう思います?

「間違いなく輸入ビジネスにおいて円高は追い風になってます。円が20%上がれば、仕入れ値が20%値引きされたのと同じですからね。ただ、それは日本における定価制度というものを前提に考えた話。輸入ビジネスは取引相手である欧米的な売買の考え方が入り込んでますから、それ以上に魅力的であるといえます」

欧米的な売買の考え方?

「本来、物の価値は需要と供給によって決まります。例えば定価120円の缶ジュース。これが日本なら基本的にどこで売られようとも価格は変わりません。しかし、それが砂漠の中にあったとすると、飲みたい度合いが大きくなり、いくらでも高値を付けられる可能性があります。つまり、買う方が納得すれば物の値段はいくらでもいいはずなんです」

たしかに砂漠でジュースの自動販売機があったら、1本1000円でも買うかも。

「それにもかかわらず、メーカーが勝手に定価を設定し、売り手の儲けまで干渉してくるのは余計なお世話だというのが欧米的な考えなんです。いや、今や欧米だけでなく、世界一般的な考えですね。海外でいう物の値段というのは、買い手と売り手の合意で成り立っているんです。100円で買った物を1万円で転売しても、その合意さえあれば許されるんです。輸入ビジネスをする場合、海外で買い付けた物を国内で売る際に価格を決めるのは自分ですから、自身の裁量で付加価値を付けられれば値段はいくらでも上げられる。粗利を非常に高く設定することが可能なんです。そこが輸入ビジネスにおける最大のメリットですね」

なるほど。向こうの相場をそのままこちらに落とし込む必要はないわけですからね。自身で付けた値段で売れさえすれば問題ないと。魅力のある商品であれば、需要も高まり、いくらでも値を高くできる可能性もありますしね。しかも円高の今なら、仕入れ値も安く済ませられる。
うーん、すぐにでもやりたい。開業資金はどのくらいあればいいですか?

「やりようによっていくらでも。物を買ってきて売るというだけですから、数十万単位からでも十分に始められます。店舗を持たず、小売りを考えないB to Bであれば、国内の業者向けの展示会に輸入販売したい商品を持って出店するのがオススメです。小売店や通販、テレビショッピングの人など、商品を求める人が集まってきますから。興味のない人に売り込む苦労はないですし、商談が成立する可能性も高いです」

販売ルートを探すのもそれほど大変そうではないですね。
あとは、商品・商材を探してくるだけかぁ。買い付けのポイントってありますか?

「ジェトロのホームページを見ると世界の展示会情報が載っています。名刺さえあれば誰でも入れますので、そこで探すのがベスト。ネットやカタログよりも実際に手にとって魅力ある商品を探すべきです。輸入ビジネスといっても物販の商売ですから、良い商品を見つけるのが最大のポイント。たとえば海外の旅行先でたまたま入った店で、とても珍しい商品を見つけた。これを日本で売ったら売れるんじゃないかと思ったら、あとは仕入れて売れれば成り立つ商売です。輸入関税などの難しいことは、1回につき1万円プラス手数料程度で代行してくれる業者に委任してしまえばいいですからね」

なるほど。物を仕入れて販売するという、商売における最も基本的な感覚さえあれば、輸入業は簡単に始められるビジネスモデルなんですね。ただし日本で勝負できる良い商材を見つけるのが一番のキモであることは間違いないようです。
笹川さんのお店「polly」の西葛西店です。こちらは本店ですが浦安にもう1店舗あるそうです。近いうちにあと1店舗オープンの予定。やっぱり儲かってるんですかね

輸入衣料品販売業者に聞く 実際の輸入ビジネスとは?



海外で物を買い付けて国内で転売するといったシンプルな商売。
魅力のある商材を見つけ、需要に見合った価格を設定するセンスさえあれば、簡単に始められそうな輸入ビジネスですが、実態はどうなのでしょうか?
西葛西で「polly」という輸入衣料品販売店を営む笹本力良さん、教えてください!

「自分は輸入販売をしている会社にいて、そこから独立しました。5~6年前に古着の卸しから始めました」

古着は利幅が大きそうですね。主にどこの国から買い付けていたのですか?

「当時はタイが多かったですね。ほぼタイで仕入れてました」

ではタイ以外にも買い付けをしていた国はありますか?

「中国でも古着は売ってますが、タイでは小分けにしてあり、1着から購入できるので買いやすいですね。コンテナ買いをしなくてはならない場合だと、そこから売れる物を選別するのでロスが出ますが、小分けにしてあればそのロスカットができます。カテゴリーはジーパンやTシャツがメイン。1回の仕入れで10万~20万円程度。それを日本に持ち帰ると3~4倍になりますから、多いときで80万円の売上になります。買い付けに行く費用は1週間滞在で7~8万円くらいですから、差し引いた分が粗利というわけです。しかし、それは一番良いときの話で、今、古着は売れないんですよ」

なんでですか?

「リサイクルが一般的になり、中古の服と古着との垣根がなくなってしまったからです。たとえば2000年と書かれたTシャツがあるとします。9年前のものですから、古着のはずですが、今ではそれは単なる着古した服としての価値しかないんです。現在、古着の定義は80年代のものまでとなっています。正直、商売として成り立つのは80年代までのプレミアム物だけです。単なる中古の服じゃダメなんですよ。古着=(商売が成り立つ程度に)安くてデザインがいいというのが昔はあったと思うのですが、今、安くてデザインがいいのは中国からの新品商材なんです」

それで笹本さんも今は、中国の新品商材を扱うようになったと。
「polly」の店内。中国製品を中心に海外の安くてオシャレな衣類を扱っています。最近では、海外で既製品を買ってくるというよりも、海外のメーカーに発注して、日本で受けそうなものを安価で製造してもらうことの方が多いそうです
「特に女性物ですね。古着を買いに行っていたとき、どの国でも女性物の新品商材に目がいって。少しずつ買い付けていたのですが、時代がそうなったのか、そちらの売り上げが立ってきまして。中国製やタイ製のレディース商材の卸しを始めたのです。そのうち、古着の売り上げが落ちてきて、女性物だけとなり、商材も手に入りやすいから店舗も構えようと、今の店を始めました」

やはり、時代の流れを感じ取るセンスが輸入ビジネスには肝要なんですね。
仕入れのルートは古着の時のままなんですか?

「いいえ。タイで買い付けをしていたとき、新品はメイドインチャイナの商材が多かったんですよ。だったら直接買いに行こうと、中国へ行きました。人づてに聞いたところ、広州で開かれる大きな展示会がいいということで、最初はそこで買っていたのですが、大規模すぎて良い商材がなかなか見つからず。同じ広州で小さな衣料関係の市場に行くようになりました。展示会に出られないような小規模の売り手が集まってるので、対応も丁寧で、小さなロットで売買してくれて、非常に重宝してます。買い付け額は一度に100万円くらいですね。関税は商材によって異なり、古着だと約6%、新品だと11%くらいになります。通関士に任せてあるので、手間はかかってません。それをB to Bで卸したり、自分の店舗で売ったりしています」

お店の商品を見せていただく限り、カジュアルなものが多いようですけど、やはりお客さんは若い人が中心ですか?

「いや、年齢層は幅広く、中学生からおばあちゃんまでいます。衣料品安売りのお店はたくさんあるので、価格競争ではなく、地域密着に力を入れています。口コミやビラを見て来るお客さんが多いですね」

輸入品を扱っているので特別なことをやっているかといえば、そんなことはないようですね。

といっても、海外で安く買ってきたものを高く売ればいいという単純な考えでできるほど、簡単な話ではないんです。やはり商売のセンスがないと成功はおぼつきません。勉強になりました! 大須賀祐さんによると、買い付けてきた商材をB to Bで卸す販売ルートを作る際のポイントは、大手から順番に大手商社に電話することだそうです。
電話したら代表からまずは仕入部につないでもらう。そこで「私は○○を扱っている業者です。面白い商材があるので、担当のバイヤーにつないでもらえませんか?」という。バイヤーは物を買うのが仕事なので、こちら側=売り手はお客になると。そうすることで、ちゃんと話を聞いてもらえるそうです。大手商社でも商品に興味を持てば門前払いということはないんだとか。

これは使えるテクニックですね! 今回の記事を読んで、輸入ビジネスを始めたいと思った人はぜひ参考のほど!!

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