知られてなくともスゴイ企業

第3回 日本で最も自動車を回している会社

2009.06.26 FRI

知られてなくともスゴイ企業


「ボールベアリング」「軸受け」「車輪」など、要となるパーツが自社製なので、圧倒的な精度を誇る井口機工製作所のターンテーブル

車用のターンテーブルを作り始めた契機とは?



立体駐車場の前などに設置され、車の向きを自由に変更する装置、ターンテーブル。この車用のターンテーブルで、国内シェア約50%を占める井口機工製作所という会社があるそうです。

車用のターンテーブルは、専業メーカーがほとんどないため、50%でも圧倒的なシェア。他は、IHIや新明和工業など大手重機メーカーが手がけていますが、それぞれ数%のシェアしかないとのこと。

というわけで、井口機工製作所の代表取締役社長、井口薫さん。駐車場向けターンテーブルを扱うようになった経緯を教えてください。

「じつは駐車場用のターンテーブルより、ショーが先だったんですよ」

え!? ショー?

「1965年に晴海で行われた東京モーターショーで、本田技研さんからF1の車を回したいという要望がありまして、それに応えて作ったのが、当社としては初めてのターンテーブルです」

なるほど。どの角度からも車全体を見回せる、回転式ディスプレイの装置として製作したのが最初だったんですね。
お話を伺った代表取締役社長、井口 薫さん。「0から新しいものを、100%確かなものを、けっして妥協せずに作り上げる」が社是だそうです
「もともと、私の父が旋盤加工などを中心とした町工場をやっていて、ボールベアリングを製作してました。その中にターンテーブルでも使えるような『車輪型ベアリング』もあった関係で、当社に依頼が来たのです。そこからですね、ターンテーブルを作るようになったのは」

それが初めて手がけられたターンテーブルですか。ちなみにターンテーブルは、国土の狭い日本以外ではあまり必要とされないような気もするのですが、ターンテーブルは日本が発祥なんでしょうか?

「そこは資料が残ってないので、なんとも言えませんが、ただ、立体駐車場は日本のスキーリフトメーカーが作ったものです」

その立体駐車場とターンテーブルを組み合わせて、狭い日本の繁華街に車を止めるスペースを得ることができたのですから、スゴイことです。

ちなみにターンテーブルには、車を回す以外の用途はあるんですか?

「当社のターンテーブルは、映画『男たちの大和』でセットの砲台を回すのに使われたり、『Apple Store銀座店』で看板を回すのにも使われてます。あと、面白かったのは六本木の洋品店にターンテーブルを入れて、フロアごとぐるぐる回しながら商品を 見せるという使われ方をしたこともありましたね」

この話を聞く限り、確かに用途は限られていますが、重いものを回すという需要においては、まだまだ無限の可能性が秘められた装置なのかもしれません。
今年落成したという美しい本社新社屋。インテリア好きの井口社長だけに随所にこだわりがうかがえます

大きなシェアを占められた理由



立体駐車場の出入り口で車の向きを変えるといった需要に乗って市場を拡大したターンテーブル。
果たして、その市場規模はどのくらいなのでしょうか?

駐車場向けターンテーブルの国内シェア約50%を誇る、井口機工製作所の代表取締役社長、井口 薫さん。教えてください。

「ターンテーブルは、全国で毎年550機ぐらい生産されています。その250~270機は当社で生産しております。大手重機器メーカーさんもやっておりますが、各社50機ほどです。大都市圏では目にする機会も多いターンテーブルですが、地方にいけばターンテーブルを設置する必要のない平面の駐車場がほとんどですし、大きな需要があるわけではありません。だからそれほど市場規模は大きくありません」

たしかに全体的には少なく感じますが、50%はスゴイですよ。
最初から250機という数字があったわけじゃないですよね?

「昔は専門的に規格品のターンテーブルを作る会社がなかったんですよ。当社も含めて必要となった時にそのつど、現場で採寸し、ゼロから製作していました。それだとどうしても出来が不十分になり、耐久性に問題が出たり、騒音が出てしまったりと、お客さんからのクレームが多数ありました。そこで『我々が専門的にやるので安心してほしい』とデベロッパーに伝えたところ、多くの需要が寄せられたんです。それで東京の府中にターンテーブル専門工場を造りました」
日本のお家芸ともいえる機械製造業ならではの特許認定証の数々。特許の多さが技術力の証明です
すぐに採算は取れたのですか?

「最初は年に10機しか売れなかったのですが、建築基準法が改正され、マンションを造る際に駐車場を造らなければならなくなったことが追い風になり、50機、100機と増えていき、今の250機にたどり着いたのです」

改正建築基準法での追い風はどのメーカーにも吹いたと思います。
それでもシェアを大きく獲得できたのには理由があると思うのですが。

「オーダーメイドで造るとなると、設計開発などの経費がかかる。それならば専門のメーカーから買ってしまおうということで、当社の売り上げがアップしたというのは大きくありますね」

売り上げはどのくらいですか?

「昨年10月の決算で17億7000万円くらいです。ターンテーブル以外にも、ボールベアリングや立体駐車場の落下防止装置などの製造を行っており、合算の売り上げです」

そのくらいの売り上げだと、社員は100人くらいの規模ですか?

「いいえ、44人です。なるべく人数は増やしたくないんです。商い的には100人いてもおかしくはないんですが、何かあった際に辞めていただくことになっ てしまう。それは絶対にしたくないんです。今年の初めにも『どんなに業績が悪くなってもクビにはしない。その代わり給料が下がってもがんばろう』という決起をしました」

全員が一丸となってがんばるという姿勢。気持ち。
日本の小さくてもスゴイ会社が、丁寧な物作りができて、大きなシェアを占められる要因はそこにあると思います。お話、ありがとうございました。 ちなみに海外におけるターンテーブルの需要はほとんどないとのこと。
その理由は、アメリカや欧州は土地が広大で狭い場所で車を回す必要がないということだそう。

しかしそうなると、日本国内のニッチな市場で今後も勝負しなければならない。
その市場で、勝利をおさめている井口機工製作所。やっぱりスゴイ会社です。

次回も小規模ながらもスゴイ会社を紹介していきたいと思います。
ニッチな市場を独占している企業、派手さはないが他の追随を許さない精密な技術を持っていたり、みなさんが見つけた、あるいはみなさんが勤めているスゴイ企業があったら、
ぜひ、私、野中に教えてください! よろしくお願いします!!

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