知られてなくともスゴイ企業

第6回 家庭に“たこ焼き器”を普及させた会社

2009.08.07 FRI

知られてなくともスゴイ企業


関西ではおなじみのヤマキンの家庭用たこ焼き器。写真はガスたこ焼き器「こだま」(Y-03D)。一度に15個のたこ焼きが作れます

家庭用たこ焼き器の トップブランド



この記事のテーマは「知られざるスゴイ企業」ですが、
今回紹介する会社のブランド名と商品名は、
近畿地方で知らない人はほとんどいないかもしれません。

「ヤマキンのたこ焼き器」。

ヤマキンとは山岡金属工業のブランド名。
なぜそれほどまでに浸透しているのか、代表取締役の山岡俊夫さんに聞いてみました。

「実は手軽に買える低価格の家庭用たこ焼き器を開発し普及させたのが弊社だからです。発売は今からちょうど50年前の1959年のことです。それからしばらく、シェアはほぼ100%でした。今でもガスを使った家庭用たこ焼き器ではシェア90%以上を誇っています」

ここ数年は電気を使った家庭用たこ焼き器も出ているようですが、山岡金属工業では電気式のものは作らないんですか?

「電気とガスでは火力が全然違いますからね。もちろん一般的な電気調理器は年々改良されて最近ではガスと遜色ない使い勝手になっていますが、たこ焼き器など鉄板を使う場合は、やはり直接炎が出るガスのメリットは大きいですね。ガスの元栓とホースでつなぐのが基本ですが、カセットコンロのメーカーとして有名なイワタニと共同でカセットコンロ型を開発したこともあります。バーベキューのときなどに持っていけば、外で食べられるということでよく売れました」

なるほど。他にも家庭用たこ焼き器のリーディングカンパニーとしてのこだわりのようなものはありますか?

「弊社は片面焼きにこだわっているんですよ。他社からは鯛焼きのように上からも鉄板で挟み込み、ひっくり返す必要のない家庭用たこ焼き器も出ていますが、ウチでは作っていません。家族みんなで、ひっくり返しながら焼いて作って食べる。それが家庭でたこ焼きを作るときの楽しさなんです」
お話をうかがった、代表取締役の山岡俊夫さん。家庭用たこ焼き器の販売で大成功をおさめた名物社長です
やはり普及のヒミツもそこにあったのですか?

「そうですね。家庭用が売れた理由もそこにあって、子供のおもちゃ感覚なんですよ。最初はお 母さんやお父さんが焼いているのを見て楽しみ、次は自分で焼いてみる。たこ焼き屋になった気分を楽しめるおもちゃだったわけです。なので付属品として、た こ焼き屋ののれんを付けてみたり、自宅に友だちを招待して楽しめるように『たこ焼きパーティー券』を付けたりしました。そうすれば、たこ焼きパーティーに 呼ばれた子どもが、今度は自分の親にたこ焼き器をねだる(笑)。子どもをターゲットにしたことが爆発的な普及のポイントだったのです」

家族や友だちとのコミュニケーションツールとして、家庭用たこ焼き器があったわけですね。

「そうです。今はおもちゃというよりも調理器の意味合いが強くなり、便利さを求めた結果、両面焼きなどが登場したのだと思います。しかし家族や友だち同士で楽しむと考えるならば、片面焼きのままにしておくべきだと弊社は考えて、こだわり続けているのです」

たかが、たこ焼き器、されどたこ焼き器。まさか調理器具としてではなく、コミュニケーションツールとして販売していたとは。恐るべし! 家庭用たこ焼き器ですね!
発売当初の家庭用たこ焼き器。写真のように「たこ焼きパーティー券」が付属していて子どもたちに大人気だったそう

家庭用たこ焼き器を作ったきっかけは?



家族や友だちとお家でワイワイたこ焼き作り。
関西でおなじみの光景は、たこ焼き器が一家に一台あることが常識になったからこそ。
その家庭用たこ焼き器を開発した、ヤマキンこと山岡金属工業代表取締役の山岡俊夫さん、たこ焼き器を作ろうと思ったきっかけは何だったのですか?

「弊社は1956年に私の父親が創業した山岡鉄器製作所が前身であり、株式会社にしたときに山岡金属工業と名を変えました。父は金属プレスの技術屋で、例えば紡績機械部品や家庭用グリルの部品など、様々な金属部品を作っていました。下請けの仕事が中心です。ただ、私としては自社ブランドを持ちたいという願望がありました」

それは2代目として受け継いだ後で?

「そうです。そんな折、ある商社から一口ガスコンロを作ってほしいとの依頼があったんです。じつはそれまで卓上に置くタイプの家庭用ガスコンロは存在しなかったので、弊社が作ったものが、おそらく日本ではじめての卓上一口ガスコンロです。金型から起こし、2000個作ったのですが、なかなか商社が取りに来てくれない。契約書も何もない口約束だったのが原因なのですが、これは逆にチャンスだと思い、『うちの商品にしていいですか?』と聞いてみたところ、当然向こうは喜んで了解してくれました。不渡りを避けられたようなものですからね。ところが、ものすごく売れたんですよ」

結果的に大儲けだったと。商社も惜しいことをしましたね。

「まあ、そのような経緯ではじめての自社製品ができたわけですが、1個じゃダメ。同系統の商品をシリーズ化して商品群にしないと企業力は高まらないと考え、次のコンロ関連商品は何にしようかと試行錯誤していたところ、道頓堀の道具町で家庭用ガスコンロの上に置いて使う職人手作りの家庭用たこ焼き器を見たんです。これを鋳物にしてコンロとセットにして、低価格にすれば売れるだろうとひらめきました」
たこ焼き器専用の工作機械。専用のラインを作ることで、大量生産が可能になった
いきなり家庭用たこ焼き器を作って売れるものですか?

「それが最初に問屋へ持っていったところ、『業務用のたこ焼き器があるし。家庭用の 小さなものは売れないんじゃないか』と言われてしまいました。それでも無理やり置いてもらったのですが、16軒の問屋さんでほとんど売れませんでした。ど うしようかと考えた挙げ句、ちょうど当時、流通革命で店舗数が増えつつあったスーパーの店頭に置いてもらったんですよ。そうしたらなんと売れに売れて、ひ と月で1万台以上売れました」

問屋やバイヤーの予想以上に、市場のニーズはあったということですね。

「その後も売れ続け て、累計400万台売れましたからね。そういうことだったんだと思います。ただし今はコンロ全般にいえることですが、電気中心になってきていまして。ガス 器具全般が売れなくなっています。ガスの大火力を必要とするのは、主に業務用ですね。だから最近では弊社の主力も家庭用から業務用に移行しているんです。 焼肉店でよく見かける無煙ロースターではシェアトップを争っています。それから六本木ヒルズの屋外などに設置されている屋外用ストーブ『パラソルヒー ター』もウチの製品なんです」

なるほど、もはや家庭用たこ焼き器だけのメーカーではないと。今後も製品開発には力を入れ続けていくということなので、近い将来、あっと驚く新製品が登場するかもしれません。 ちなみに家庭用たこ焼き器は、2009年現在、山岡金属工業の全売上高の数%に過ぎないとのこと。家庭用ガス式たこ焼き器においてはシェアトップですが、もはや関西ではほとんどの家庭にたこ焼き器が行き渡ったらしく、これ以上の需要が見込めないとのことです。

現在の山岡金属工業の主力商品は、やはり業務用がメイン。
具体的には業務用コーヒーサイホンやコーヒーウォーマーにおいては、世界シェア第1位。壁を作らず空間を分離・遮断することのできるエアカーテンも作っていますが、山岡金属工業の製品は電子イオンを使っているため、ほとんど風が出ないのが特長だそうです。今後ますます進むであろう分煙化社会では大きな需要が期待できます。

ちなみに1956年の創業以来、山岡金属工業は一度も赤字決算を経験したことがないそうです。金融危機の影響もあり、さすがに今年の決算は減益が免れないとのことですが、それでも黒字は確実だそう。この調子なら、まだまだこの記録(?)は続きそうです!

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