知られてなくともスゴイ企業

第8回 女性の脚を美しく魅せ続ける会社

2009.09.04 FRI

知られてなくともスゴイ企業


カネコで扱っているヒールのデザイン数は、実に2500種類。月に50~100万足分のヒールを生産しているそうです

細くても折れないヒールって何製?



女性を大人らしく魅せるファッションアイテムはいろいろありますが、私、野中(脚好き)が最初に思い付くのは、ハイヒールです。

背を高く見せることで頭身のバランスを美しく整えることはもちろん、足のかかとだけを持ち上げるため、アキレス腱が常に緊張し、ふくらはぎから、ももの裏、お尻までキュッと引き締まる。

クールで強い女性を足元から演出する、ハイヒール。

実は国産ハイヒールの部品、もしくは製造工程において、ずば抜けたシェアを持つ会社があるのをご存じでしょうか?
数%という2桁に満たないシェアの会社ばかりの業界のため、約22%という数字ではあるものの2位以下を大きく離したナンバー1企業、株式会社カネコ。

総務課長の長濱友男さん、御社はハイヒールのヒール専門メーカーということでしょうか?

「そう言ってもいいと思います。正確にはヒール部分だけではなく、靴のパーツを作る、靴の総合部品メーカーですが、シェア22%というのは、ヒールの部分だけの話ですから。売り上げの構成としてヒール部分が65%、残りの35%が靴型や靴の本底、中底。つまりヒールの部分が主商品ということです」

なるほど。靴も、それぞれの部品メーカーが作るものなんですね。工業製品の中ではハンドメイドっぽい印象があったので、ちょっと意外です。

「えぇ。業界ではヒールや靴型など、部品ごとの専業メーカーがほとんどです。そんななか、当社はヒールと靴型の両方を生産しているため、総合的な商品企画を靴メーカーに対して提案できる。それが大きなシェアを維持できている要因になっているのです」

なるほど、なるほど。ちなみにヒールって何でできているのですか?
ピンヒールとかあんなに細いのに折れないのは何か特殊な素材なんじゃないかと。
今回、お話をうかがった総務課長の長濱友男さん。工場でヒールの製造工程の説明もしていただきました
「そんなに特殊な素材を使っているわけではないんですよ。ちなみに昔は木で作られていました。国産ではブナ。安価な外材だとポプラやジェルトンなど。ただし強度が不足するので、上部は木製、先端部はアルミを鋳造したダイキャストをつなぎ合わせた接合ヒールを業界で初めて当社が開発したのです。さらにその後、開発が進み、現在主流のプラスチック製になります」

プラスチック製なんですか! アルミよりも弱そうですけど。

「中に芯を入れて強度を増しています。ISOの規定の基準に基づいて、手に当たったら骨折してしまうぐらいの強さ(0.68ジュール)で、完成したヒールをハンマー状のもので2万回叩き続ける強度テストを行っています」

それなら女性の体重を支えるのに十分でしょうね。

つまり加工しやすいプラスチック素材になったことで、産量が増え、安定した品質も保てるようになったということ。そしてそれを開発したのが同社であり、トップシェアを維持するゆえんでもあるといったところでしょうか。

ところでヒールの形って何種類くらいあるものなんですか?

「ファッションアイテムなので流行廃り(はやりすたり)がありますから定番と回転しているものを合わせれば、女性モノだけじゃなくて男性モノも含めた数として、常時2500種類ほどありますね。その2500種類にそれぞれに大・中・小の3サイズあり、25003の7500種類が常に作られているという状態です」

スゴイ数ですね!
そんなにヒールに種類があったとは、それだけで驚きです。同じカタチのものを単独で大量生産するなら簡単そうですが、7500種類のものを注文に合わせて生産するというのは、企業としての底力を感じさせるところです。
デザインが決定したら生産のための金型を作ります。この金型に樹脂を流し込んで抜くことでヒール部は生産されるのです

ヒールを作るようになったきっかけとは?



従来の木製ヒール(かかとのパーツ)の生産から始め、アルミ(ダイキャスト鋳造)と木の複合製、そしてプラスチック製へと進化していったヒールを開発し続け、業界をリードしてきたカネコ。そもそもヒールを作るきっかけは何だったのでしょうか? 総務課長の長濱友男さん、教えてください!

「創業者の金子市吾郎はもともと、薪炭業をしていました。後に地元の町長まで務める人ですから、地域の林業発展のために商品開発をしようと思い付いたのが木製のヒールだったのです。それで会社を起こせば地元の人たちに仕事の場を提供できるということもあり、昭和23年10月に金子商店を創業。木製ヒールの製造を開始しました」

林業で得た木の加工先としてのヒールだったわけですか。
しかし、ヒール以外にも木で作ることのできる工業製品はいろいろ考えられたと思いますが、なぜヒールを選んだのでしょうか?

「女性の服装が着物から洋装へと変わるなか、靴も洋風なものになるだろうと考え、ヒールの需要増加を見込んだのです」

なるほど。当時、すでにヒールというものはあったのでしょうか? 国産であったのか、それとも輸入していたとか?

「国産であったようです。ただし、職人さんがひとつひとつ手作りしていたようで、大量生産は難しかった。そんななか、機械を導入して生産を始めた当社は画期的でした」

創業当時からヒールの生産では業界ナンバー1だったというカネコ。あまりヒールが一般的ではない時代から先見の明を持ってヒール市場に参入し、それが見事に当たって、以後、業界のリーディングカンパニーであり続けたとのことです。では、いまだにそのシェアを維持し続けている秘訣とは、どのようなものなのでしょうか?
栃木県佐野市にあるカネコ本社。勤務するのは、ほとんど地元の人ばかり。地元佐野市の雇用創出にも一役買っている地場企業なのだ
「そうですね。現・社長いわく『クイックレスポンス』という経営概念によるものだと思います。ヒールは靴の一部であり、ファッション性が高いものです。つまりは流行で左右されやすいもの。だから短納期は至上命題になります。そこで当社では金型設計からプラスチック成型まで一貫した生産体制を敷いており、依頼を受けた当日にサンプル作成が可能で、3日後には製品として出荷できる体制になっています」

それは早いですね。自分が靴メーカーだったら頼みたくなります! って、素人がこんなこと言うのもなんですが。ちなみにヒールが付いた靴の市場規模はどれくらいなのでしょうか?

「年間で女性モノが4500億円、男性モノが2500億円といわれています。単純に1足1万円平均とすれば、合計7000億円1万円で約7000万足。国民のおよそ2人に1人は毎年ヒール付きの靴を買っているということになります」

それは大きな市場ですね。

「ただし、最近はスニーカーを履く女性が増えてきて、ヒール離れの傾向にあります。ハイヒールの靴は底が硬くて疲れるというのが主な要因なのですが、それに対応すべく当社では底にゴムを付けて衝撃を吸収しやすくした『コンフォートヒール』という疲れにくいヒールを作っています。第二の心臓といわれる足の健康を考えた商品で、大手靴メーカーさんと共同開発しているんです」

女性の脚を美しく見せるハイヒール離れを食い止める商品になることを、脚好き男性代表として、切に願っております! 洋服などと同様、靴にも春夏モノと秋冬モノがあり、それに合わせて6月を挟んだ5月の連休明けから7月の中旬までと、11月を挟んだ10月の半ばから12月いっぱいまでの2シーズンが忙しい時期なんだそうです。

戦後、和装から洋装中心の社会への移り変わりを素早く察知して、ハイヒールのヒール部分を作る会社を起こし、流行廃りの移ろいやすいファッション業界ならではの「クイックレスポンス」を心がける。

カネコは、創業時の先見の明と事業継続におけるファッション業界への適応能力、その両輪が揃っていることではじめて、シェアナンバー1を何十年も維持することが可能となっているのです。

関連キーワード

注目記事ピックアップ

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト