知られてなくともスゴイ企業

第9回 戦艦大和と側溝のフタを作った会社!?

2009.09.18 FRI

知られてなくともスゴイ企業


普段はほとんど気にとめていないかもしれませんが、これが側溝のフタ“グレーチング”です

側溝のフタの名前はグレーチング?



一般的に道路の側溝には、フタがはめられています。
日本中に道路があるわけですから、側溝のフタも大変な需要があることは間違いありません。今回は、その側溝のフタグレーチングで国内最大シェアを誇る「ダイクレ」の営業管理課課長の児玉圭司さんに話を聞いてみたいと思います。

まずは、耳慣れない言葉グレーチングですが、「側溝のフタ=グレーチング」と考えていいんでしょうか?

「一概にそうではないんです。グレーチングとは、『格子』のことを意味します。なので側溝のフタ、すべてがグレーチングというわけではないんです。鉄を格子状に組んだ側溝のフタを溝蓋グレーチングといい、当社はその溝蓋グレーチングのシェアが国内ナンバー1なんですよ。他にもコンクリート製の側溝のフタをよく見かけると思いますが、あれは作ってませんね」

グレーチングとは、そういう意味だったんですね。しかし、コンクリート製のフタより、明らかに鉄製の方がコストが高そうなんですが。それでもグレーチングを採用するメリットって何なんでしょう?

「実際にグレーチングの方が圧倒的にコストが高いです。ちなみにコンクリート製とグレーチングの最大の違いは排水性能ですね。側溝がむき出しだと人や車が落ちて危ないからフタはあるのですが、同時に雨などで溜まった水をスムーズに流さなくてはならない。だからゲリラ豪雨など、より高い排水性が求められる昨今では、開口率が高く排水性の良いグレーチングが使われることが多いんです」

確かにコンクリート製は、左右に1カ所ずつ穴が空いているものの、排水性は低そうですもんね。ちなみにグレーチングは、昔からあるものなんですか?
こちらはコンクリート製のフタ。排水性は悪いですが、コストパフォーマンスは抜群
「じつは側溝のフタとしての用途は、ここ50年くらいなんです。グレーチング自体は主に工場などの床材として使われていました。もともと当社は、工場や船舶の床材としてのグレーチングのトップメーカーでした。昭和38年にそれを側溝のフタとして使うという用途を思いつき、関係各所に売り込んだんです。その結果溝蓋グレーチングとして導入されました」

それからは順調に需要は伸びていったんですか?

「当時は高度経済成長期でしたし、やはりタイミングも良かったんだと思います。どんどん道路も作られましたし、同時に側溝も整備されていきましたから、出荷数も右肩上がりでしたね。その後も瀬戸大橋の点検通路や高速道路など、ふさいでしまうと風の圧力が問題になる部分に開口率の高いグレーチングが採用されています。また最近ではステンレス製やFRP製など用途に合わせて様々な素材のグレーチングを作っています」

「ダイクレ」は意図していなかったそうですが、本来、寝かせて使うグレーチングを立てて使ってパーティションとする例も増えているそうです。ちなみに「ダイクレ」のグレーチングは、現行のカタログに載っているだけで3000種類、細かく分ければ1万種類だそう。ほとんど一緒に見える側溝のフタや工場の床材ですが、想像以上に種類があるんですね。
今回、お話をうかがった営業管理課課長の児玉圭司さん。現在「ダイクレ」の社員は、本社に180人、東京支部に40人。男性はほとんが広島出身だそうです

戦艦大和と グレーチングの関係とは?



道路の側溝に被せられている格子状の鉄製のフタグレーチング。そのグレーチングの国内トップメーカー「ダイクレ」には、ちょっと興味深い創業エピソードがあるそうです。そのあたりのお話を聞かせていただけますか? 営業管理課課長の児玉圭司さん。

「私たちの本社は広島県呉市に置かれていまして、そこは戦艦大和が作られた海軍工廠(かいぐんこうしょう)があった場所として有名です。創業者の山本茂もその大和の建造にかかわっていた技師の1人でした」

戦艦大和の建造技師が創業者! 『宇宙戦艦ヤマト』のモデルにもなった、あの大和ですよね! でもなぜ大和の技師が、側溝のフタの会社を作ることになったのでしょうか?

「山本は金属加工技術には定評のある技師でした。大和では主に床や壁を担当していたと聞いています。山本がかかわっていた大和のエンジンルームは最下層にあり、明かりもなく真っ暗で熱がこもってしまいます。そこで光も採り入れられ、換気もでき、頑丈な鉄の格子(グレーチング)は重要な役割を担っていました。戦後、その技術を生かし、昭和26年、山本は当社の前身の『大呉興産株式会社』を設立し、船舶などの床材を作りはじめました。そして、その技術がそのまま側溝のフタにつながっていくのです」
景観にも配慮した「ダイクレ」の新作「ワイングラスグレーチング」。なぜ、ワイングラス? と思うかもしれませんが、横に張られた金属バーの切断面の独特の形状がワイングラスに似ているからなのです
なるほど、では会社設立当初からグレーチングを作られていたんですね。

「いえいえ、そうではないんです。設立当初は、なぜか船舶の塗装業を中心としていたんです。それから徐々にグレーチングを作りはじめます。ちなみに海軍工廠で作られる軍艦は別ですが、当社が製作する前は、グレーチングを作っている会社はなかったので、国内初です。それまで民間のグレーチングはすべて輸入に頼っていたそうです」

やはり、グレーチングに目を付けたのは、創業者ですか?

「そうですね。目を付けたというよりは、できないか?と発注を受けたのが最初だそうです。当初は船舶、工場の床材としてのグレーチングが中心でしたが、昭和38年に側溝のフタとしての用途を提案したことで、ブレイクしたという感じです。ただし側溝のフタは電化製品などと違い、一気に広がるということはなく、ジワジワと広がっていく商品ですからブレイクといっても一般的な印象とは違うかもしれませんね」

飛躍的にグレーチングの需要が拡大したのは、高度成長期の昭和40年代からでした。ここ数年は中国産の安いグレーチングも入ってきていますが、「ダイクレ」は、半世紀以上もグレーチングを作り続けたことで、業界内で圧倒的な信用を勝ち得っているそうです。そして道路関連部品だけに発注元の6割が公共事業関連と抜群の安定感。また側溝のフタとしてのグレーチングの代替物も、しばらく登場しそうにないため、その地位は盤石といってもいいのではないでしょうか。 ちなみに「ダイクレ」では、グレーチングだけでなく、現在では法面(切土や盛土により作られる人工斜面)の補強材として「グリーンパネル」「アンカーパネル」など環境製品の開発・製造も行っているそうです。主な発注元である公共事業が減りつつあるとのことで、新たな事業展開にも余念がありません。

次回も様々な分野で圧倒的なシェアを持つ、スゴイ会社を取材していきたいと思いますので、スゴイ会社を知っているという方は、お知らせください。よろしくお願いします。

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