ガンを乗り越えYAZAWAが目指す「伝説のチャンピオン」

バックギャモン世界一・矢澤の挑戦

2015.10.15 THU

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もともと新しいことに挑戦するのが好きだという矢澤さん。中学1年生のときに立てた、「人生初のことを毎年必ず10個やる」という目標を守り続けていて、スキューバダイビングのメッカであるエジプトの紅海を訪れたのも、バックギャモンを始めたのも、その一環だったそう 森カズシゲ=写真
2つのサイコロの出目に従って15個の持ち駒を動かし、先にすべてをゴールさせると勝ちとなる対戦型のボードゲーム「バックギャモン」。日本では馴染みが薄いが、欧米や中東ではとてもポピュラーで、競技人口は約3億人に上る。男女混合で行われるこの競技で矢澤亜希子さんは昨年、日本人女性として初めて世界チャンピオンに輝いた。

「サイコロを使うことから、『運』に左右される競技だと思われることも多いのですが、トップレベルの試合では戦略の読み合いがほぼすべて。過去の棋譜から相手の弱点を分析したり、解析ソフトなどで自分の苦手な局面を克服したり、事前の研究が大事です。でも私には特定のプレースタイルがないので、相手にはこちらの出方がわからない。それが強みですかね」

始めたきっかけは大学3年の夏休みに旅行で訪れたエジプト。現地で初めてバックギャモンを知った 。帰国後ネットで詳しく調べると、すぐに興味を持った 。それからは、毎週のように都内のプレースポットに通って、腕を磨いていった 。

「最初は趣味の範囲で楽しんでいたんですが、強い人たちと対戦していくうちに、すごく奥が深いゲームだということもわかって。もっと強くなりたい、大会にも出てみたいと思うようになりました。やっと本当に面白いものに出合えた、という感じがしましたね」

大学を卒業すると、会社に勤めながら国内外の大会に参加。プレーヤーとしてメキメキと頭角を現し始めたころ、突然、原因不明の病魔に襲われた。次第に通勤もままならなくなり退職。競技も一時中断して休養したが、病状は一向に良くならない。そこで矢澤さんは、一つの大きな決心をした。

「回復するのを待っていられなくなっちゃって。それで思い切って、今やりたいことに挑戦しよう、本格的に世界大会に参戦してチャンピオンになろうと決めました」

再就職せず練習に打ち込むなか、2012年には子宮体ガンの診断を受け、翌年に手術。その後は抗ガン剤治療の副作用に苦しみながらも、海外の主要大会に出場し続けた。そして14年、3度目のチャレンジでついに世界最高の勲章をつかんだ。しかし、この優勝にも決して満足はしておらず、あくまで通過点の一つに過ぎないと言う。

「これからも勝ち続けて、歴代王者の中でも圧倒的に強い伝説のチャンピオンになりたいんです。“バックギャモンといえば矢澤”とすぐに名前が出てくるような。それと、将来的には国内にプロリーグを作りたいと思っています。プロを志している若い人たちが安心して夢を追える環境を整えてあげることは、未来の日本バックギャモン界にとって何より大切ですので」
(菅原悦子)

矢澤亜希子
AKIKO YAZAWA
1980年、東京都出身。2003年からバックギャモンを始め、11年に日本で3人目のプロとなる。2年に一度更新される世界ランキングで13年度に17位になり、女性初の「ジャイアンツ(上位32人)」入りを果たした。

■TOP WOMAN 第1回

  • こだわり仕事道具

    大会などで使われる公式用のプレシジョンタイプのサイコロ。不正防止のため透明で、すべての目が均等に出るよう各面が同じ質量に調整されている
  • 世界が認めた瞬間

    2014年8月10日、モンテカルロで開催された世界選手権のメイン種目を初制覇。オープン参加制で、155人による過酷なトーナメントを勝ち抜いた

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