「地元に恩返し」 あなたも他人事じゃない?

コンサル→実家の食堂へ… 家業と会社員の“違い”とは

2016.07.26 TUE

給料?やりがい? 30男キャリア相談所 > 後継者は語る!



(撮影=栃尾江美)
経営コンサルティング会社を経て、実家「ときわ食堂」の店主となった牧 信真さん(前編)。ビジネスマン時代とは、人間関係など様々なことが違うはず。会社員を経験したからこそできる工夫や、見えてくる課題はあるのだろうか。

「わかり合えない」と思っても、まず相手の意見を聞く


前職では、牧さんが「ついていけていない」と感じるほど、周りは自分よりビジネススキルが高く、考えが優秀な人ばかりだった。ところが、実家の食堂で専務として働くことになり“立場”が逆転する。スタッフの中には、バックグラウンドが違う人や、職人も多い。最初は、わかり合えない苦労があったという。

「経営者になって、ある意味、スタッフを下に見ていたようなところがあったかもしれません。改革案を提案してスタッフに意見を求めても、まず出てこない。でも、振り返ってみると、意見を言える環境を作れていなかったんです」

店のなかでは、スタッフたちが自分の考えを述べる習慣もなかった。様々な仕事に一緒に取り組み、たとえ取るに足りない話でも耳を傾けるようにしたことで、少しずつ意見を出してくれるようになったという。そんなスタッフとのやりとりにも、会社員時代の経験が生きている。

「社長はある程度自分の好きなことができるので、“偉そう”になってしまう部分はある。そんなときは、やりたくないこともやらなければならなかった会社員時代を思い出し、スタッフの気持ちを考えるようにしています」

会社員のうちにリスクのある仕事を楽しめ!


会社員と経営者、両方を経験している牧さんから見ると、会社員であることのメリットとは何だろう。

「やはり、仕事のオンとオフがハッキリしていることです。経営をしていると、責任は大きくなるし“100%の休日”はないですね。もうひとつは、人のお金で挑戦できるということ。自分も会社員時代、上場企業のグループ会社の立ち上げに携わるなど、とてつもなく大きな勝負ができました。やはり、規模の大きい仕事は、リスクがあっても楽しいと思います」

そんな牧さんも、会社員時代にやっておけばよかったと思うことがあるという。

「仕事以外でもっとITや世の中の流れを勉強しておけばよかったと思います。店にレジなどのシステムを入れる際も、仕組みをわかっていないと業者を正しく選定できません。それから顧客のニーズに応えるためにも、インターネットで流行っているものがどんな顧客心理を突いているのか、押さえておく必要があると思っています」

会社にいるときには、オフがはっきりしていたので学びやすかったと語る牧さん。経営者となった今、しっかりと時間を作って勉強をするのはなかなかハードルが高いのかもしれない。いまサラリーマンをしているという読者には、“当たり前”のように手にしているオフの時間を有効に使ってもらいたいものだ。

元会社員だから描ける地元・浅草の未来図とは


近年、食堂とは別に、新たな試みとして居酒屋をオープンした牧さん。ほかにも、経営コンサルタントだった会社員時代の経験を生かし、旧来のビジネスから新たな方向に舵を切りたいと思っている。

「これまで、店に勤めているスタッフの終身雇用は想定していませんでした。あくまで、独立するまで修業する場だったんです。ところが、今は50歳前後の人も雇用しており、定年まで働ける仕事や資金を作る必要があると思っています。そのために、飲食業でも別の分野に広げたり、店舗を増やしたりして安定させたいですね」

また、「浅草」の未来をも見据えている。

「老舗が店を閉めざるを得ない状況をよく聞きます。そこに大手が入っても、他の街と同じようになり面白みがなくなってしまう。そこで、地元企業向けのファンドを作ったり、コンサルティングをしたりするなど、街を活性化させる試みを通じて自分を育ててくれた浅草に恩返ししたいと思っています」

「外の世界を見ろ」という父の言葉から選択したサラリーマンの経験は、牧さんの人生だけでなく、浅草という街にも新風を吹き込むのかもしれない。

(栃尾江美/アバンギャルド) 牧 信真
牧 信真(まき のぶまさ)
1978年、東京都出身。明治大学経営学部卒業後、2002年にレイヤーズ・コンサルティングへ入社。セキュリティ会社の新規立ち上げなどに関わる。2005年、ときわ食堂を経営する株式会社ときわの専務に。2013年に代表取締役となり、同年に日本酒居酒屋「権」をオープン。趣味はバスケットボールとスキー、映画鑑賞

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