非効率、社畜上等!? サトーカメラ社長の仕事哲学

栃木のカメラ王「仕事を趣味にしちゃえばいいんだよ」

2016.08.01 MON

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(撮影=森カズシゲ)
大手家電量販店がひしめく栃木県宇都宮市。ここに本社を構えるサトーカメラは、全国的には無名の存在。しかし、地元・栃木県内においては、17年連続カメラ販売でトップシェアを誇っている。大手と互角以上にわたり合う、同社ならではの“武器”について、代表取締役の佐藤千秋氏に伺った。

●なまぬるい20代を過ごすと、40代以降がしんどくなる


サトーカメラ最大の特徴は、“馬鹿丁寧”といっても差し支えないほどの接客姿勢。店内にはソファが置かれ、客と店員が長々と話し込んでいる。1人1時間はザラ、時に数時間にもおよぶ話の中身は、雑談などの無駄話も多い。職場で効率化を求められるビジネスマンにとっては、信じがたい光景かもしれない。

「今は人間性の時代だと思うんです。決まったマニュアルや理屈じゃなくて、背景にある人間のことをわからないと相手に思いは届かないし、物は売れない。特に、うちみたいな地方の小さなカメラ屋からすると、大手のマニュアル化された手法なんて無意味。年間何億というお金をかけて、システマチックにやってるところにかないっこないんだから。だったら個々の人間性を高めていくしかない。それってすごい時間かかるしめんどくさいんだけどね」

一見非効率に思える手法。しかし、それが熱烈なファンを生み、多くのリピーターにつながっているのだという。

また、「人間性を高める」という言葉通り、全スタッフが参加する毎週金曜夕方の研修をはじめ、社員教育にも相当な時間と労力を割いている。ビジネスマンのなかには「成長をなかなか実感できない」「そもそもどこをどう伸ばしたらいいか分からない」と悩む人も少なくないが、佐藤氏のいう人間性を高めるとは具体的にどういうことなのだろうか?

「人間性にはいろいろな要素があるけど、強い信念を持つこと、自分の価値観で物が言えること、が特に重要。それって、なまぬるく生きているとなかなか身につかないよね。20代、30代のうちに人間性を鍛えておかないと、その後がかなり厳しくなる。僕の場合は20代で会社を全面的に任されて、その後はバブルがはじけたり、フィルムカメラからデジタルカメラに移行してそれまでのビジネスモデルが崩壊したりと、逆境の連続だったから強制的に鍛えられましたよ(笑)」

●社畜だとか、ダサいだとか考えずに働いたっていい


また佐藤氏は、業界の慣習にとらわれずに働くには「疑う心」を持つべきだと話す。

「カメラ業界も色んな常識にとらわれている。疑うって大事ですよ。たとえば、以前、写真を大きなサイズでプリントするキャンペーンをやっていたとき、現像所から『預かったデータの解像度が低すぎる。このままプリントしたら返品になりますよ』って言われたことがあった。でも、お客様からデータを預かった(接客担当の)女性スタッフは『大丈夫。そのままプリントしてください』と自信満々に言うわけです。完成した写真は確かにピンボケしていて、僕も返品を覚悟したんだけど、実際はとても満足していただけた。お客様は40代後半の女性で、聞けばその写真は亡くなってしまった愛犬のもの。携帯電話のメモリーに1枚だけ残っていたデータだったんです。

そこで気づいたのが『写真は思い出』だということ。写っているものへの想いによって、写真の価値や意味は変わるんです。僕らはバチっとピントが合っていて、シャープで、構図が決まった写真しか大きく引き伸ばせないという常識にとらわれていたんですね」

世間がよしとする横並びの価値観にとらわれず、そこから一歩踏み出すことが大事なのかもしれない。

「特に地方にいる人には、東京発信の思考や文化に毒されてほしくない。たとえば、ライフワークバランスとか、オンとオフとか、都会や大手企業発のトレンドに流されてどうすんのって思いますよ。世間が勝手に作った理想像と現実のギャップに悩むくらいだったら、オン・オフなんて考えず、仕事を趣味にしちゃえばいいんだよ。社畜とか、ダサいとかめんどくさいこと考えずにさ。だって趣味は自分だけの世界だけど、仕事は多かれ少なかれ世の中を変えられるんだから、絶対そっちのほうが面白い。20代30代って一番仕事への意欲が盛り上がる時期でもあるし、ガンガンやらないともったいないですよ」

(榎並紀行/やじろべえ) 佐藤千秋
佐藤千秋(さとう・ちあき) 宇都宮市を中心に栃木県内に18店舗、中国に1店舗を展開する「サトーカメラ」代表取締役社長。駒澤大学経営学部卒業後、サトーカメラに入社。雀宮店店長、管理部長などを経て、2006年から現職。愛用のカメラはOLYMPUS OM-DとOLYMPUS PEN-F

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