経験や勘に頼った人事評価に代わるHRテックが続々

AIによる人事査定は「人間以上に“温かい”」?

2016.08.14 SUN

これまで人の感覚で進めてきた人事採用や評価を、人工知能(AI)が担い始めている。「HRテック」と呼ばれる新たな潮流だ。人材紹介会社のビズリーチなどは、AIを用いた勤怠管理や評価ツールの導入を決定。人事の分野以外でも、三菱総合研究所がAIを活用して狙うべき営業先の精度を高めるコンサルティングサービスを提供したり、日立製作所がウェアラブル端末の加速度センサーから取得した行動データをもとに、幸福度を高めるべく個々人に最適なアドバイスを配信する「Happiness AI」というサービスを提供したりしている。

●スキルや性格に合わせたアドバイスをAIが可能に



首から下げているのが名札型のウェアラブル加速度センサー。日立製作所のHが目指すものは、人間を幸せにすること。「業務やコミュニケーションがスムーズに進むことで幸福感が向上し、組織全体が活性化します」(矢野さん)
では、こうした分野にAIを取り入れることで、職場の人間関係や評価方法は具体的にどう変化するのだろうか。「Happiness AI」の開発に携わった日立製作所・研究開発グループ技師長・矢野和男さんに聞いた。

「これまでは人事管理は画一的にならざるをえませんでした。それは、職場で起こり得るあらゆることを想定し、個別に善し悪しを判断する基準が作れなかったため。しかし、あらゆるデータを分析して最適な方法を選択してくれるAIを導入することで、各人のスキルや性格に合わせたアドバイスや評価が行えるようになるのです」

確かに、役割も強みも経歴も違う人を、一定の判断基準で見るのはある種乱暴でもある。また、人の働きは売り上げの数値やKPIに関連するポイントだけでは測れないものも存在する。「職場の活性化の実現のためには、職場内での行動データを収集する技術を活用することで人の目が届かなかった動きまでデータ化し、AIで総合的に捉える必要がある」と矢野さんは話す。

それを実現するのが、設定した目的(アウトカム)に合わせてデータを分析できる汎用的な人工知能「Hitachi AI Technology/H」(以下Hと記載)である。名札型のウェアラブル加速度センサーで取得した大量の行動記録をHで分析し、各従業員に対して「上司に会うのは午前中がおすすめ」「彼とは5分以下の会話を増やした方がいい」など、幸福感を高める行動を提案し、生産性向上につなげることができるという。

「同じ会社の隣同士の課でも状況はまったく違い、課長が早めに帰った方がいい場合もあれば、課長が丁寧に声かけした方がいい場合もあります。新人が1人入っただけで、課の空気がガラッと変わることもあります。私たちはビジネス本を読んだり研修に参加したりして、『コミュニケーションが大事』『会議は1時間以内』など一律の答えを求めてきましたが、現場はそんなに単純ではありませんよね。AIを用いることで、現状にフィットした解決策が見つかる可能性が高まるのです」

Hを活用した「Happiness AI」は既に日本航空や東京三菱UFJ銀行を含む13社で実証実験またはシステム導入されている。例えば、とあるコールセンターで受注率が高かった日は、休憩時間にスタッフの雑談が弾み従業員の幸福感が高い日だったという統計が出たそう。そしてその日は、雑談をしていない人も含めて、センター全体の幸福感が上がっていた。1人1人の幸福感が作用し合い、活動量が向上し、集団全体の生産性を高めることの気付きにもなったという。

「行動をもとにAIが個々に評価を下すことで、『こちらのチームの方が力を発揮できる』など最適なマッチングの実現に役立ちます。『売上に直接的に貢献してはいないが、彼がチームをフォローすることでプロジェクトが円滑に進む』など、これまで評価されにくかった部分に光が当たることも期待できます」

「AIが評価する」というと機械的で味気ないものというイメージを抱きがちだが、実際は人間以上に人間味のある答えを出してくれる可能性もある。より働きやすい環境へ誘ってくれる“AI人事”の登場が待ち遠しい?

(有竹亮介/verb)

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