【働き方改革】社員の柔軟な意志とトップの強烈なメッセージ

カルビー会長「フリアド嫌なら転職しても構わない」

2017.01.31 TUE

給料?やりがい? 30男キャリア相談所 > 働き方最前線

制度導入後のヒアリングなども行っている総務課の品川さん。フリーアドレス制で上司が必ずしも近くにいるわけではないので早帰りしやすくなったという声もあがっているという 
(撮影/森 カズシゲ)
リモートワークや副業の認可など、新たな働き方を推し進めている企業は増えてきた。しかし、働く社員からすると、これまでと違う働き方に戸惑うこともあるはずだ。最先端の勤務制度を導入している企業では、どのように社内で浸透させたのだろうか。

職場に固定席がなく、毎日抽選で座席を決定する「フリーアドレス制」や、子育てや介護と仕事の両立を図るための「在宅勤務制度」を導入しているカルビーに話を聞いた。制度の導入を担当した、人事総務部総務課課長の品川千津子さんの回答は「反発はいまだにあると思います」。


●「嫌なら転職してもいい」トップが推し進めたフリーアドレス

約300人を対象にフリーアドレス制を導入しており、成功事例として扱われることも多いカルビーだが、意外な反応が返ってきた。

「それでも推進できたのは、トップの声が大きいからですね。フリーアドレス制を始めた時には、会長の松本晃から『オフィスでイノベーションを起こして、会社を成長させていきましょう』という言葉とともに、『世の中には、フリーアドレスじゃない会社はごまんとある。フリーアドレスが嫌であれば、他の会社に転職してもらっても構わない』という強烈なメッセージが繰り返し発信されました。当社の特徴ともいえますが、新制度を始める際には会長が社員に向けて、積極的に声掛けを行います」(品川さん) 3つの席のタイプのなかから選べる。1席ごとに仕切りがある「ソロ」タイプ
3つの席のタイプのなかから選べる。1席ごとに仕切りがある「ソロ」タイプ
隣の席の人とも話しやすい「コミュニケーション」タイプ。このほか発言禁止の「集中」タイプも
隣の席の人とも話しやすい「コミュニケーション」タイプ。このほか発言禁止の「集中」タイプも
折に触れ会長自ら発言するほか、メールで全社員に送る新制度の通知資料の1ページ目には、必ず会長のメッセージを記載。新制度に対して社員から反感を買った場合には、「トップが決めたことだから」という一言で納得してもらうことが多いという。

「これも当社の特徴的な部分だと思うのですが、素直で柔軟な社員が多く、トップの意向を汲み取ろうとしてくれるので、新制度も浸透しやすいです。スタートした新制度は、『朝8時半に出社する』などの決め事と同じ感覚で受け入れられているのだと思います」(品川さん)

新たな制度は、上層部がいままでになかったことにチャレンジし、会社を変えたいという強い思いを持った上で、社員たちにも挑戦する意欲がないと、浸透させることは難しいのかもしれない。また、「完璧を目指さないことも大事」と品川さんは話す。

「新しいことに取り組む時は、6~7割準備が整ったら始めようという考え方で進めます。100%の制度を作ったとしても条件と合わない人は絶対に出てくるので、6~7割でスタートさせて、少しずつ内容を修正していく方がスムーズだと思います。本格始動の前にトライアル期間を設けることもありますね」(品川さん)

フリーアドレス制も、2008年から一部のオフィスで実践して出てきた問題点を見直し、2010年に本社のほぼすべての部署を対象にスタートしたのだそう。

入社4年目の朱さん(左)と入社8年目の佐藤さん(右)。後ろには2012年に大ブレイクした「フルグラ」のシリーズ
入社4年目の朱さん(左)と入社8年目の佐藤さん(右)。後ろには2012年に大ブレイクした「フルグラ」のシリーズ
ここまでは企業側の働きかけを聞いてきたが、実践している若手社員からも新制度に順応する秘訣を教えてもらった。

「フリーアドレス制や在宅勤務においては、『最低限のルールの中で自由に動いていいよ』というマネジメント側の心構えが必要だと思います。マイクロマネジメントは合わなくて、“心配”ではなく“信頼”が重要です。任せる余裕がないと難しいかもしれません」(人事総務部・佐藤拓也さん)

「モバイル端末やノートPCなどのITインフラも大切です。特にフリーアドレス制はワイヤレスでこそ運営できる制度。会社からiPhoneが貸与されているので、同じ部署の人とはSMSでグループを作って連携をとっています。すぐコミュニケーションをとれるシステムは重要だと思います」(素材スナック部じゃがりこ課・朱靖〈しゅせい〉さん)

人と設備、いずれもそろわないとスムーズな制度運用は難しいようだ。ちなみに、総務課として制度運用を主導するにあたり、手間が増えたりしないのだろうか?

「フリーアドレス制導入により、総務課で困っていることはほとんどありません。社員が増えても新たにデスクを増やす手間もお金もかからないので、むしろフリーアドレス制によって総務の仕事は減ったと思います」(品川さん)

実際に始めてみると、思いがけないメリットもある新しい制度。まずはやってみる柔軟性を社員側も持つことで、よりよい働き方ができるようになると言えそうだ。

(有竹亮介/verb)

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