新卒でなくともインターン、資格取得サポートetc.

中途採用市場で徐々に広がり? “育成枠採用”とは

2017.01.31 TUE

働く女子を応援!L25タイムス

インターンを経て、事務職からWebデザイナーに転職した石井瀬梨菜さん
従来の転職採用市場では、若年層においても「即戦力」が求められてきた。だが、ここのところその風向きに変化の兆しがみられるという。中途採用でも新卒のように、入社前後に手厚く「育成」することを前提とした採用の動きが出てきているようだ。

「私たちはこの兆しを“育成枠採用”として注目しています。実際、経験がモノをいうような職種でも、中途でチャレンジできるチャンスは広がっていると思います」と語るのは、リクルートグループで人材派遣事業を担うスタッフサービス・ホールディングス事業開発部マネージャー・高野佳昌さん。

「大学卒業後、アルバイトをしながら夢を追っていた若者が『そろそろ就職活動をしようかな』と思っても、履歴書だけでスクリーニングされてしまうなどこれまでは希望通りの職につける可能性は低かった。しかし、いざ企業が採用してみると、キャリアは無くても他の社員とそん色なく活躍できる人材だったというケースが多いんです。若年層の非正規率は年々高まっていますが、採用難に悩む企業はそこに目を向け始めています」(高野さん)

やりたいことがはっきりしなかったり、挑戦したい職種につけず能力を活かしきれていなかったりする若者たち。ここを人材の金脈と見た企業が、「育成枠採用」という新たな概念のもと掘り起こしを始めているというのだ。なお、キャリアに重点を置いていないため、採用活動では書類選考なしで面接を行うケースもあるのだとか。

とはいえ、わざわざ中途採用で未経験者を雇用することで、企業側のメリットはあるのだろうか?

「じつは先入観なく、『まずはやってみよう』という素直な姿勢が入社後の伸びしろに繋がるんです。当社の事務職常用型派遣サービス『ミラエール』で派遣されている社員がまさにそうです。2600名(2017年1月現在)の就業中の社員のうち、約70%が事務職未経験ですが、アンケート調査では、期待していた以上に職場で活躍をしてくれているなど、良いギャップが生まれているという結果が出ています」(高野さん)

では、「育成枠採用」を導入する企業は、採用した人材をどのように育てているのだろうか?

「たとえば、ある金融企業では最初はA部署、仕事ができるようになってきたらB部署、C部署とキャリアステップを用意していたり、『入社3カ月までにはこういう状態になっていてほしい』などと細かな職務レベルの設定をしたりしています。他にも、一定期間内に資格取得ができるよう企業がサポートしてくれるケースもあります。最近では、中途採用者向けのインターンを実施している就業支援サービスもあり、未経験者でも、企業で働く前に実務レベルの知識や基本的なスキルを身につけられる機会が広がっています」(高野さん)

■中途採用者向けインターンは「業界への覚悟を養う場」

デジタル制作と人材事業を手がける「アイ・ファクトリー」でも、中途採用者・第二新卒採用者向けのインターンを実施。Webディレクターやデザイナー、エンジニア向けの本格的な研修を短期間でみっちり行い、育成をした状態で企業に紹介している。このインターンを経て、不動産業の事務アシスタントからWebデザイナーに転職した石井瀬梨菜さんに話を聞いた。

「大学卒業後、得意のパソコンを活かそうと思い事務職をしていました。でも、ルーティンワークが性に合わないと感じて転職を考えるように。学生時代から興味があったクリエイティブな仕事にチャレンジしたいと思ったんです。そこで仕事を辞め、ハローワーク主催のWebスクールに半年間通いつつ、アイ・ファクトリー主催のインターンを経て、Webページ作成を受託するFASTCODINGに転職しました」(石井さん)

だが、インターン受講は転職の成功を約束するものではない。未経験者が業界の業務を理解をするためのプログラムになっており、そのうえで受講者の覚悟を問うような仕立てになっている。

「インターンでは、実際に現場で求められるアウトプットの品質の高さを体験することが出来ます。この業界で本当に仕事をやりたいか、私自身にとっても改めて確認する良い機会になりました。しかし、覚悟さえ決まれば、私のような未経験者でも新しい業界にチャレンジするために、面接同行など手厚い就職活動支援がプログラム内に用意されています」(石井さん)

石井さんは、Webデザイナーを目指していたが、まずはWebディレクターとして入社。その後、デザイナー部署を立ち上げ、活躍している。憧れの仕事は忙しくも楽しいと、充実感がみなぎっている。このインターンを担当したアイ・ファクトリーの堀内裕文さんは、「経験がものをいう職業でも未経験者に門戸を開くことは、業界の未来を作ることにつながる。新卒だろうと未経験の中途採用だろうと関係無く、これからは業界全体として『育成』に力を注ぐべきだと考えています」と話す。

技術的なスキルや実務経験よりも「社風が合っているか」「やりたい気持ちが本物か」「素直さがあるか」など、どちらかというと内面に重きが置かれる“育成枠採用”。新卒時は突破できなかった憧れの業界への壁も、今なら乗り越えられるかもしれない。

(小野洋平/やじろべえ)

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト