魅せ腕時計のイロハ

第11回 腕時計の時刻がずれなくなったワケ

2009.12.17 THU

魅せ腕時計のイロハ

時刻精度と補正技術の両輪で正確さを追求



正確な時を刻むというのが、腕時計の大前提。まあ、ボクら一般人が1、2秒の誤差によって重大な危機に直面…なんてことはないかもしれませんが、それでもやっぱり腕時計の時刻が正しくないのは、あまり気持ちのいいものではありません。
今回は、シチズン時計・技術開発本部の八宗岡正さんに、腕時計の“正確性”について、その開発の歴史を聞いてきました。腕時計が正しい時を刻むための技術、教えてください!

「時刻の正確性を追求するのは時計メーカーにとっての永遠のテーマであり、大きく分けて2つの方向性で改良が進められてきました。1つ目は、カウントの精度。いかに時刻のカウント誤差を少なくするか、という部分です。もう1つは補正技術。アナログ時計の場合は、いくら正確に時を刻んだとしても、それとは別に、衝撃などの外的要因で針がずれてしまうことがあるため、それを防止したり、補正したりする技術です」

時刻のカウント誤差は、どのくらい出てしまうものなんですか?

「現在、主流になっている腕時計はクオーツ式で、これは水晶に電圧をかけ、そこから得られる振動をもとに“1秒”を決めています。70年代初頭までは機械式が主流でしたが、クオーツになってから圧倒的に誤差は減りました。機械式の時代は日に10秒以上の誤差が出ていたのですが、クオーツになってからは、標準的な腕時計でも月に15~30秒の誤差しかありません。腕時計の仕様に書いてある“±15秒/月”というのが、それです」

もっとも正確なものでは?

「年差時計といって“年で5秒”しか誤差が生じないものがあります。過去に作ったものだと“年差3秒”というものもありました。腕時計だとこれが最高水準です。より純度の高い水晶を使うことで振動数を安定させているんです」

ちなみに腕時計に使われている水晶は天然で採れるものではなく、人工的に生成されたもの。金属の筒に密封された形でムーブメント(動力部分)に内蔵されており、裏ブタを開けただけでは見えないようになっています。また、年差時計に使われている水晶には、純度の高さに加えて、一定期間振動させておいて、振動をより安定させるエージングという工程も必要なのだそう。

「ただ、どんなに正確に動く時計を作っても、それだけでは十分ではありません。針の動きが乱れてしまう外的要因への対策も必要なんです」

デジタル式の腕時計なら、IC制御でカウントした正確な時刻をそのまま表示すればいいものの、針を物理的に動かしているアナログ式腕時計は、普通に使っている時に、衝撃や磁気などの影響で、針の動きが乱れてしまうことがあるのだそう。
1974年製の『シチズン クリストロン』。時刻補正のために秒針を停止させる際には、12時位置にあるLEDが点滅する
「そこで、時刻の精度とは別に、針の補正技術も必要になります。当社では、1973年に『シチズン クリストロン』という製品で最初の補正技術を導入しました。秒針のずれを時報などを使って合わせる時に、プッシュボタンを押すことにより、遅れていれば進ませ、進んでいれば針を待機させて、正確な時刻に補正するという機能です」

補正技術はカレンダーの日付の修正にも使われているそう。日板は31日までありますが、2月や4月など、日数が31日より少ない月には、IC制御で非存日を飛ばし、再び1日を表示させているのだとか。うーん、腕時計の正確さを保つためには、補正技術の開発も重要なんですねぇ。

磁気と衝撃からモーターを守る!



アナログ腕時計の場合、正確な時刻を表示し続けるためには、時刻のカウントそのものを正確にする、という以外に「針の補正」が必要になのだそう。IC制御によって、いかに時計内部で正確な時刻をカウントしていても、針そのものが外的要因により動いてしまうことがあるためです。現在では様々な補正技術により、その要因を防いだり、また、動いてしまっても修正する仕組みがあるのだとか。

「たとえば、磁気。針を動かしている腕時計内部のモーターは、磁気に触れることで、動きが狂ってしまいがちです」

そう語ってくれたのはシチズン時計 技術開発本部の藤井輝彦さん。でも、磁気って身の回りにそんなにたくさんあるものですか?

「身近にたくさんありますよ。たとえば、携帯電話のスピーカー。もちろんオーディオ機器のスピーカーも。エレベーターの内部に貼ってあるマグネット式の保護マットなんていうのもありますね。他にも磁気ネックレスや磁気まくらといった健康器具、女性だとハンドバッグの留め金が磁石になっているものもあります」

へぇ! 普段気づきにくくても、現代人の生活環境には磁気があふれているんですね。

「また、ぶつけた衝撃で針が動いてしまうこともあります。最近では、時刻を見やすくするために大きく太い針が多く使われていますが、針を大きくすると、その分、重さが加わるので、衝撃の際、余計に針が動きやすくなってしまうんです」

現在シチズンでは、磁気、衝撃それぞれに対するプロテクトと、ズレた針を補正する機能の3つを組み合わせた『パーフェックス』という補正技術で、外的要因対策を行っているそう。

「まず、磁気については“耐磁処理”を行い、モーター部分をシールドすることで、磁気の影響を受けないようにしています。磁界を発生する機器に5センチまでなら近づけても問題ないようになっています。衝撃に関しては“衝撃検知機能”を施し、外部から衝撃を受けると、瞬時に針をロックして動かないようにします。このとき、日常生活ですぐにロックしてしまわないよう、どの程度の衝撃から針をロックするかという実験を繰り返して調整しました。デスクに置いたときと、落としたときの違いや、パソコンのキーボードを叩いているときとぶつけたときの振動など、ライン引きが大変でした」

でも、針を止めてしまうということは、その時点で時刻はずれてしまうのでは?
電波時計と『パーフェックス』機能を組み合わせたタイプ。パッと見た感じではシンプルな時計ながら、実は、いつでも正確な時刻を表示し続ける高機能タイプ
「そこで、センサーによる“針補正機能”の出番です。時計内部でIC制御している時刻と、実際の針の位置を60秒ごとにチェックし、ズレが生じていれば、針を正しい時刻に修正します。最近では、正確な時刻を受信する電波時計が普及してきていますが、この『パーフェックス』機能と組み合わせることで、いつでも正確な時間が表示できるようになります」

時計そのものの精度を上げるだけではなく、正確な時刻を表示するための対策がこんなに練られているとは知りませんでした! いろんなオプション機能はあるけれど、やっぱり時計の命は、正確さってことですね! 「正確に時を刻む」というのは、腕時計の基本中の基本。
一見すると、昔から変わらないアナログタイプの腕時計でも、
見えないところでは、いろいろなことが考えられて、かなり進化していたんですね!

今後の調査の参考に、腕時計に関する皆さんの疑問や意見を聞かせてください。
お待ちしています!

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