今週は“世界の現実がわかる映画”

巨大な“中国”の一人ひとりの顔が見える映画『四川のうた』

2010.02.01 MON


監督は、『長江哀歌』でヴェネツィア国際映画祭グランプリに輝いたジャ・ジャンクー。その叙情的な映像美は、本作でも実に印象的だ (c)2008 映画『四川のうた』製作委員会
経済紙の見出しに「中国」の文字が躍らない日はない昨今。その動向はビジネスマンにとって気になるところだが、「中国」という何か巨大な塊(かたまり)が迫りくるような、漠然としたイメージしか持てない人も多いのでは。しかし実際の中国では、生々しい喜怒哀楽のある老若男女が、時に笑い時に泣きながら働いている。そんな一人ひとりの顔が見えてくるような、リアルな映画を紹介しよう。

50年にわたり中国の基幹工場として営まれてきた巨大国営工場「420工場」。2007年にその幕が下ろされ、敷地は再開発されて高層商業施設「二十四城」に姿を変えることとなった。3万人の労働者が失業し、敷地内で暮らしてきた10万人の家族が故郷を失う。と同時に、若い世代にとっては、ビジネスに邁進していく新たなスタートでもある。この劇的な転換に直面した人々への、インタビューをまとめたのが本作『四川のうた』だ。

だが本作は、「ドキュメンタリー」の一言ではくくれない特徴を持っている。実在の人物たちのインタビューに、俳優が演じる“労働者”の語りも入り混じるのだ。現実の労働者の言葉には表れてこない深層の感情までを、監督は脚本と俳優を用いて描ききった。それは、ただインタビューを集めただけの表層的ドキュメンタリー以上に、本当にリアルなフィクションなのだ。本作を観たあとは、「中国」ではなく「人間」が経済を動かしていることが、心の底から理解できることだろう。
(ダ・ヴィンチ編集部 関口靖彦)

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