今週は“世界の現実がわかる映画”

経済大国アメリカの、貧しい医療保険事情とは?

2010.02.05 FRI


『ボウリング・フォー・コロンバイン』や『華氏911』など、独自の突撃取材でアメリカ社会の問題を浮き彫りにするムーア監督。最近は有名になりすぎて、アポなし取材ができなくなったのが悩みなんだとか (c) 2007 Dog Eat Dog Films, Inc. All rights reserved.
全然景気が上向きにならず、不安の多い今日この頃。でも、そんな不安なんてまだまだかわいいもの、と思わせるアメリカの現実を浮き彫りにしたドキュメンタリーがある。それが『シッコ』。現在公開中の『キャピタリズム マネーは踊る』でも知られるドキュメンタリーの名匠マイケル・ムーアが手がけた、アメリカの医療保険制度問題がテーマの映画だ。

ご存じかもしれないが、アメリカには日本のようなすべての国民が加入する国民健康保険が存在しない。基本的に医療サービスを受けると実費の請求が来る。それがすごく高くつくことくらいは、日本人でも容易に想像できるだろう。そこで活用されるのが民間の保険。これがクセモノで、民間サービスといいつつも、誰もが入れるものではない。ある保険会社は年収1000万円以上でないと入れない、とか、ある保険会社は年収の条件を満たしていても自営業やフリーランスでは加入できないとか。保険会社ごとに規定が異なり、サービスの厚さもまちまち。映画の中では、そのためアメリカ人の半数以上が保険未加入となっている、という報告もある。その結果、病気でも病院に行けない人がいるだけでなく、無保険のまま入院していた人が容赦なく捨てられてしまうという現実までを映し出す。

国民皆保険制度がないことによる明と暗を、ムーア監督らしい軽い論調で、非常にわかりやすく説明しているが、その語り口の明るさとは正反対に、見えてくる現実の暗いこと暗いこと。日本の制度が完璧とはいえないが、この映画を観ると少なくともアメリカよりも日本の方がマシかも……と感じるはずだ。
(よしひろまさみち)

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