今週は“残りの冬を満喫したくなる映画”

大切な人と向き合う『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』

2010.02.22 MON


フィオナを演じるジュリー・クリスティの、枯れた美しさにも魅了される (c)2006 The Film Farm/Foundry Films/pulling focus pictures Inc.
冬の休日、いつもより遅く起きてみればひどい冷え込み。日没も早いし、これから出かけるのは億劫だ……そんな引きこもり気味の冬を過ごすR25世代に、大切な人といっしょに観てもらいたい映画がある。

グラントとその妻フィオナは40年以上も連れ添ってきたが、フィオナがアルツハイマーに。呆然自失の状態と、これまでどおりの意識を保った状態を行ったり来たりする彼女は、自ら養護施設に入ることを決意する……。

初めは“病魔を夫婦愛で乗り越える話”に見える本作だが、一筋縄ではいかない。フィオナはやがて夫すら忘れ、同じ施設に入っている男性に好意を寄せる。それでも介護を続けるグラントは、実は若いころ、自分の浮気でフィオナを苦しめた時期があった。病気はその罰だと考える彼の前で、フィオナは一瞬だけかつての自分を取り戻し、透明な瞳で彼を見つめる。

監督は過剰な説明を避け、老俳優たちの深い沈黙を映し出す。フィオナの瞳に浮かぶのは、まっすぐな愛情なのか、巧みな復讐なのか、何十年も前の怒りなのか。自分の大切な人が、本当に考えていることを、必死でわかろうとする……その気持ちはグラントだけのものではなく、若いわれわれにも同様に切実なはずだ。

また、老夫婦の表情とともに印象的なのが、カナダの澄み切った冬景色。冷たく広大な“冬”に囲まれ、人は温かくて小さな“家”にこもる。そして静かに人と見つめ合う。その時間こそ、冬からわれわれへの贈り物にちがいない。
(ダ・ヴィンチ編集部 関口靖彦)

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト