今週は“肩の力を抜ける映画”

穏やかな晩酌のように肩のほぐれる映画『愛おしき隣人』

2010.03.01 MON


すみずみまで計算された色彩設計と北欧デザインの美しさも、本作の魅力 (c)2007 Roy Andersson Filmproduktion AB
いよいよ年度末、サラリーマンにとっては精神的にも肉体的にもしんどい日々が続く。そんなとき大切なのが、ほんのちょっとの息抜き。帰宅して缶チューハイを1本あけ、DVDを観る……そんな穏やかな晩酌に打ってつけの映画を紹介しよう。

舞台は北欧の、とある都市。その住人たちの日常の1コマを次々に切り取った、ショート・コントの連発のような映画だ。朝からケンカしてしまった夫婦、ロック・ミュージシャンに憧れる地味な少女、ヘンテコな悪夢にうなされる労働者、酒に酔ってグチる女、アパートでブラスバンドの練習をしては苦情を言われる男……平凡な暮らしに、誰もがちょっとくたびれている。だがそんな彼らを観ているわれわれは、いっしょに落ち込むどころかついつい笑ってしまう。本作のコミカルな演出が冴えていることも一つの理由だが、それ以上に、無理やり前向きに励まさない姿勢にホッとするのだ。象徴的なのが、劇中で何度も登場する安居酒屋。上記の人々がばらばらと行きかうこの店で、店主は毎晩高らかに告げる。「ラストオーダー! また明日があるよ」。劇的な出来事は何もない。人々は最後の一杯を静かに飲み、それぞれの家に帰っていく。

仕事で疲れたあと、さらに「もっと前へ!」と言われたら息が詰まってしまう。われわれに必要なのは、一杯ひっかけて、だらける時間だ。登場人物たちの滑稽な人生にげらげら笑い、でも彼らの姿にしみじみ共感する。なぜなら誰の人生も、滑稽なのだから。そして、また明日があるのだから。
(ダ・ヴィンチ編集部 関口靖彦)

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