今週は“勝負時の臆病風を吹き飛ばす映画”

勝つための勢いと、負ける覚悟をくれる映画『マラドーナ』

2010.06.02 WED


監督エミール・クストリッツァも、カンヌで2度の大賞に輝いた天才でありながら、そのアグレッシブな作風で賛否両論を巻き起こしてきた男。2人の鬼才の出会いが、本作を凡百のドキュメンタリーとは一線を画すものにしている
いよいよワールドカップが開催される6月。熱烈なサッカーファンならずとも、日本はどこまで勝てるのか、そわそわしている人も多いのでは? 日本代表の選手たちが全力で戦う姿は、恋愛や仕事の上での勝負を避けては通れないR25世代の魂を、熱く揺さぶってくれるはずだ。

さて今回は、あなたの魂に火をつけてくれるサッカー選手の映画を紹介しよう。彼の名はディエゴ・アルマンド・マラドーナ。現アルゼンチン代表監督であり、かつて一世を風靡したスーパースター。彼が自らの人生を語りまくるドキュメンタリー映画『マラドーナ』のDVDが、この6月にリリースされる。

現役当時は日本でも人気のあったマラドーナだが、母国アルゼンチンでの彼の受け止められ方は「人気がある」などという生易しいものではない。徹底した反米主義に貫かれた政治的発言は多くの民衆を動かし、その煽動力は革命家レベル。そして彼を“教祖”ではなく“神”として崇拝するマラドーナ教まで実在するのだ。

だが彼は、何もかもうまくやってきた男ではない。人気の絶頂期にコカインに溺れ、一事は家族からも見放され、見る影もなく肥満した姿を世界にさらした。そしてこの映画の中のマラドーナは、その成功だけでなく、失敗と後悔をも赤裸々に語っているのだ。

人が勝負に際して及び腰になるのは、負けを恐れるからだ。だが彼は、いつもヒラメキのままに突っ走ってきた。その結果、天才と賞賛されることもあれば、愚か者とそしられることもある。勝負に必要なのは、立ち止まったままねちねちと用意を重ねることではなく、勝ちと負けの両方を覚悟して突き進むこと。ピュアゆえに強烈な“気合い”を、この映画は僕らに与えてくれる。ドキュメンタリーと聞いて、淡々とした地味な映画を想像したあなたは、本作の生々しい映像と暴力的なほどの音楽に魂を揺さぶられるはずだ。
(ダ・ヴィンチ編集部 関口靖彦)

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