今週は“広々とした夏空へ心を飛ばせる映画”

“遊ぶ”のではなく“休む”ための南の島の映画『めがね』

2010.06.23 WED


劇中のおいしそうな食事は、料理家・飯島奈美の手によるもの。食事というものが、人間の肉体はもちろん、精神にも大きな影響を及ぼすことがよくわかる
5月はなかなか気温が上がらず、そうこうするうちに梅雨の6月に。初夏の爽やかさを満喫できなかった今年、「夏といえばレジャーにマリンスポーツ!」と浮き足立つよりも「青い空の下でのんびりしたい」という疲れ気味のR25世代が多いのでは。そんなあなたに“休み方”を提案してくれる映画『めがね』を紹介しよう。

小さなプロペラ機で、小さな南の島に降り立ったタエコ。空と海以外、何もない辺鄙(へんぴ)な島。大きなトランクを一人で提げた彼女は、民宿「ハマダ」に泊まる。他の宿泊客たちは、ばらばらにぶらついているようでいて、食事はいっしょにとるし、全員めがねをかけている。そして朝には揃って「メルシー体操」なる謎の体操を浜辺で繰り広げるのだ。頑なに“自分のペース”にこだわるタエコは彼らと行動をともにすることに耐えられず、別の民宿へと宿を替えるが……。

タエコがなぜ一人でこの島にやってきたのか、その経緯は明確には描かれない。おそらくは都会で、何かに疲れ果て、休息を求めて島に来た。だが引きずるようにして持ち運ぶトランクが象徴するように、彼女は“都会での自分”から抜け出せていない。その彼女が、青い空ときれいな海に囲まれ、真っ当な食べ物をとり、ちょっと奇妙だが真面目な人々と接しているうちに、“自分”という鎧を外していく。

“自分”という鎧は、都会で仕事をしていくうえでは必要なものだ。だが常に鎧をまとっていては、体はこわばりへとへとに疲弊してしまう。夏休みにはエネルギー全開で遊ぶのもよいけれど、鎧を脱いで大の字に手足を伸ばし、ゆっくりと夏の風を浴びるだけ――そんな本当の意味での休息も欠かせない。今のうちからこの映画で、“休み方”を身につけておこう。
(ダ・ヴィンチ編集部 関口靖彦)

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