話題作『東京島』のモデル

いまだ謎多き衝撃の実話「アナタハンの女王事件」とは?

2010.08.19 THU

映画『東京島』は、無人島に漂着した23人の男+たった1人の女の漂流生活を描いたサバイバル・エンタテインメントだ。原作は08年に発表された桐野夏生のベストセラー小説。発表当初から衝撃の問題作として異彩を放っていたこの物語は、実は〈アナタハンの女王事件〉というセンセーショナルな事件をモチーフとしている。

この事件の詳細について、静岡県立大学国際関係学部名誉教授でジャーナリストの前坂俊之さんにお話を伺った。

「終戦から6年後の昭和26年7月、マリアナ諸島のアナタハン島から19人の元日本兵と1人の女性・比嘉和子(当時30歳)が帰国しました。実は彼らは日本の敗戦を知らず、絶海の孤島で裸同然で暮らしながらオオトカゲやネズミ、コウモリを食べて生き延びる原始生活をしていたのです。当初は助け合いながら暮らしていた彼らでしたが、島で唯一の女性・和子をめぐって男同士の争いが始まり、さながら熾烈なバトルロワイアルに発展。結局7年後には30人程度いた男たちは19人に減っていました」

なんとも壮絶な話ですね。同時に想像力を刺激される内容でもありますが…。

「極限状況で人間の本能、愛欲がむき出しになった事件といえるでしょうね。このスキャンダラスな出来事は、日本ばかりでなく米国からも注目され、映画も製作されています。終戦から間もなくの愛と性の自由が謳歌される風潮の中、比嘉和子は新たな性のシンボルとなったのです」

『東京島』では、男たちは元日本兵ではなくフリーターの若者たちと密航途中で置き去りにされた中国人という設定。一方和子に相当する人物は、欲望に忠実に生きる40代の主婦、清子にという皮肉とひねりが加えられている。極限状況の中、島での生活に安住する若者、バイタリティあふれる中国人、そして主人公・清子がどう生き抜いていくのか。辛らつでさらにエグくなった人間関係やショッキングなラストシーンをスクリーンで堪能すべし!
(足立美由紀)


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