今週は“自分を変えるための視点をやしなえる映画”

あなたの人生を問い直す映画『息もできない』

2010.12.08 WED


主演のヤン・イクチュンは、製作・監督・脚本・編集をも務め、製作費のために家まで売ったという。結果、東京フィルメックスでグランプリと観客賞をダブル受賞したほか、世界の映画祭で25を超える賞に輝いた (C)2008 MOLE FILM All Rights Reserved
瞬く間に1年は過ぎ、もう年の瀬。現状を打破するでもなく、我が身を反省するでもなく、気がついたら1年が経っていた……というビジネスマンも多いのでは?「忙しいからしょうがない」と言うのはたやすいが、現状維持という名の“殻”にとじこもるのは危険。気持ちはどんどん停滞し、暮らしも仕事も、味気ないルーティンになってしまうだろう。そこで、あなたの心をグラグラと揺さぶり、かたい殻にヒビを入れてくれる映画『息もできない』を紹介しよう。

社会の底辺で、暴力と脅しでわずかな金を得て日々を過ごす中年男・サンフン。勝ち気なように見えて、どこか脆さを感じさせる女子高生・ヨニ。年齢も見た目もまったくそぐわない二人は川のほとりで出会い、互いに理由を知ることもなく、ただ惹かれあった。実はそれぞれ、“家族”というものに心を縛られ、傷つけられてきたのだ。虚しく孤独な人生で初めて、人とのつながりに安らぎを見出せそうになった二人だが……。

本作で描かれる暴力は実に生々しく、肉体だけでなく心をも蝕んでゆくようだ。そうして傷ついた心を抱えた二人は、暴力以外の方法で自分たちの境遇を抜け出すことができるのか? 重い問いをはらんだ本作を観たら、「この二人はかわいそうだなー」などという他人事では済まない。あなた自身が、問い詰められるのだ。「これでいいのか? 過去に縛られ、虚ろな目で生きていくのか?」と。

映画を観ることの意味は、自分とは違う人生を生きられる点にある。ほんの2時間程度、だがはっきりと、ある人生を味わう。それは漫然と生きる現実の暮らし以上に、生々しくリアルなはずだ。そしていったん“自分の人生”を離れるからこそ、客観的な視点で自分を見つめ直せる。本作を観たあと、自分の生き方――もっといえば魂のあり方を、来年に向けて見直してみてはどうだろう。それだけの迫力がある作品だ。
(ダ・ヴィンチ編集部 関口靖彦)

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