スペシャルインタビュー:堀江貴文(1)

堀江貴文「みんなが宇宙に出ていくようになる」

2011.05.19 THU


取材・文=武田篤典 撮影=稲田 平
かつてIT業界の寵児だった。
ライブドア事件で逮捕されて以降、様々なことにチャレンジしている。
チャレンジというよりは、やりたいことをどん欲に実践している。
ミュージカルに出るしAVはプロデュースするし小説は書くし。
でも今、何より夢中になっているのが「宇宙」。
絵空事ではないく、地に足をきちんと付けて考える「宇宙」。
北海道で、超小型衛星を打ち上げるべく実験を繰り返しているのだ
インターネットが大爆発したように、改めて宇宙の時代が来ると考えている。
そんなホリエモンが語る。宇宙と、これから。


今こそ民間でロケットを作る時代なのだ


2011年3月26日午前7時30分、北海道大樹町で「はるいちばん」と名付けられたロケットの打ち上げ実験が成功した。ロケットを作ったのは「なつのロケット団」。ホリエモンこと堀江貴文が設立したSNS株式会社を主体とする、民間のロケット開発チームである。
オフィシャルサイトには打ち上げの映像が公開されている。ロケットの全体像は、「500m先からのスロー映像」というムービーがもっとも確認しやすいのだが、鉛筆の根本に小さな羽を付けたような形状だ。細い。資料によると長さは3489mm、打ち上げ時の重さは24.3kg。7秒ほどで高度約461mに到達し、パラシュートでふわふわと降りてきた。
YouTubeには、おもちゃで遊んでいるようにしか見えない、というコメントも寄せられている。ふむ、確かに。テレビでよく見るロケット打ち上げの映像は、盛大に水蒸気を発生させながら、巨大な機体がゆっくりと天に昇っていくようなものが多い。今回の小さくて細いヤツから、あのでかくて豪勢なヤツのレベルまで行くには、どんだけ時間と金がかかるんだ! と思ってしまう。

でもそれは間違いなのだ。そもそも「なつのロケット団」が上げようとしているのは、小さくて細くて…安いロケット。

「国家がやってるからどうしても性能競争になってしまうんです。これまではすべての国がF1のマシンを作るような態勢でロケットを開発してきた。でも単なる輸送機関として考えれば、自転車レベルでも全然いいんですよ…さすがに人力で宇宙には行けないですけど(笑)」

宇宙開発はそもそも、第二次大戦後の米ソ冷戦時代に両国の代理戦争のような形で発展してきた。アメリカも旧ソ連も、互いに国の威信を懸けて、宇宙へ行く手段を開発してきたのだ。そういう出自だから、どうしてもロケットというとでかくて豪勢な打ち上げシーンを思い浮かべてしまう。米ソだけではなく、日本のロケットだって国の発注で大企業が手がけている。
ただ、宇宙に行く用事はいろいろだ。超高性能のエンジンを搭載した大型ロケットで大量の荷物や人を運ぶだけではない。ちょっとした荷物なら、まさに自転車で運ぶメッセンジャーでもいいのだ。というよりむしろ今、そうした宇宙へのメッセンジャーサービスがあんまりない。小型衛星など“ちょっとした荷物”を宇宙へ送る需要は徐々に高まりつつあるのに。

すべて、ホリエモンのウケウリである。『ホリエモンの宇宙論』という著書の。
宇宙開発の現状と、そこに見える無限の可能性を説いた1冊である。冷戦終了後、スペースシャトルを選択したことが宇宙開発にもたらした弊害だとか、民間が、とくに起業家達がどんどん宇宙に投資し始めている事実だとか、現在どれほど衛星が小型化してるのか、だとか。
非常に平易な文章でわかりやすく語られている。読むまではおもちゃにしか思えなかった彼らのロケット「はるいちばん」が、今ではまったく違うもののように見える。

「民間宇宙開発を促進するための最初のバイブルのようにしたかったんです。インターネット黎明期に同じようなことをいってる本があって、そういうふうな存在になってくれればいいな。未来はこういう感じなんだよということをみなさんに提示したい、というのが一番大きなモチベーションですね。もちろん、この本を出しただけだと全然説得力がないので、ちゃんと小型衛星の打ち上げにも成功してみせます。そのときにみんな“宇宙宇宙”って言い出す気がする。で、最初のブームが来るんじゃないかな」
 
なぜ宇宙だったのか。出発点は珍しいものではない。子どものころ自宅にそろっていた百科事典を見て興味を持ち、SFアニメが拍車をかけた。あこがれである。
ではなぜ仕事にしなかったのか。ご存じのとおり、彼は東京大学文学部在学中に起業し、後にIT業界の寵児となる。大学受験の際、なぜ工学部を選び、宇宙の方に進まなかったのかというと「がまんできなかった(笑)」らしい。浪人して、ガッチガチに勉強することが。
で、起業し、全力で働いてるさなかにロシアの宇宙ステーション「ミール」が売りに出されていることを知る。宇宙のことを改めて調べ始めて「何かヘンだ」と気づくのである。
たとえば、日本最初の宇宙飛行士であるTBS記者(当時)の秋山豊寛さんは、局の事業としておカネを支払ってソ連から宇宙へ飛んだ。アメリカでもスペースシャトルに学校の先生を乗せた。不幸にしてそのシャトル「チャレンジャー」は爆発事故を起こし、以後民間人を乗せることはやめてしまったけれど。
つまり“行くだけ”ならば、厳しい選抜試験や過酷な訓練に耐え抜く必要はないのだ。それ相応の費用さえ支払えば一般人でも行ける。

ということは、あとは値段次第。(中略)

「ロケットといったって工業製品だ。大量生産をすれば、単価は下がるはず。単価が下がれば使う人も増えてますますみんなが宇宙に出ていくようになる」(『ホリエモンの宇宙論』より)

2005年ごろから、宇宙開発事業に投資を始める。たとえば「民間が開発した機体で高度100kmへ有人飛行するコンテスト」を主催したアメリカのX-PRIZE財団や、無重力体験をさせてくれるZero Gravityという会社への投資、さらにはロシア製宇宙船アルマズとサリュート宇宙船を購入し、エクスカリバー・アルマズという会社も設立した。

「試行錯誤しながらいろんなことに気づいてきたんですよ。ホントいっぱい失敗してる。ロシアの事業なんか何十億もかけて、いまだに遅々として進んでいないわけで」

前後して、後の「なつのロケット団」の面々と出会うのである。JAXAの衛星エンジニアである野田篤司を中心とした彼らは、民間による低価格の衛星打ち上げが可能なロケット計画を検討していた。

「アメリカはスペースシャトルの方に行ってほかのロケット技術を放置してしまったから、ちゃんとした商業用の信頼性の高いロケットエンジンを作れるのはロシアの企業しかないんだっていうことがわかってくるんです。でも、僕らでロケットを打ち上げるときエンジン単体では売ってくれないんですね。だから、丸ごと作るしかないと。それに2005年ぐらいの段階でやっと気づくわけです。超小型ロケットは野田さんの構想でした。“衛星ってめちゃくちゃ小型化できる”と。それに対して今のロケットエンジンってオーバースペックなんです。だから小型ロケットのニーズがこれから絶対くると。それを開発しなくちゃいけないんだっていうことがわかってきたんですね」

「何かヘンだ」と気づくと、誰もが納得していることでも真っ正面から疑問を投げかける。そして行動するのだ。
たとえば近鉄バファローズを買収しようとしたとき。プロ野球の球団経営に新規参入する企業は、30億円の供託金を支払わねばならなかった。それはすでに球団経営をしている企業にとって都合のよいルールだった。ゆえに硬直化する球界に、自ら乗り込んで風穴を開けようとした。
フジテレビを買収しようとしたときも同様。国の許認可事業として安泰だったテレビ局のあり方に、新たな展開をもたらすことができると考えたのだ。

(つづく)

  • 『ホリエモンの宇宙論』

    第二次大戦からのロケット開発の歴史や、なぜロケットがかくも巨大なプロジェクトになったかという背景など懇切丁寧にわかりやすく語りつつ、今なぜ彼が宇宙ビジネスに夢中なのか。そこには何があるのかを論じる。1429円(税別)講談社刊
  • ほりえ・たかふみ

    1972年福岡県生まれ。東京大学文学部在学中に起業。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。06年1月証券取引法違反容疑で逮捕される。07年3月東京地裁で懲役2年6カ月の実刑判決を受け、11年4月上告棄却、収監が確定した。逮捕後は経営コンサルタント、作家、俳優、AVプロデューサーなど多岐にわたり活躍。メールマガジンは1万人以上の読者を持つ

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