「仕事は全部、代表作にするぞっていうつもりで」

今田耕司

2011.06.02 THU

ロングインタビュー


武田篤典(steam)=文 text ATSUNORI TAKEDA 稲田 平=写真 photography PEY INADA
どんなことでもやれそう。だからこの番組は面白い

「何も特別に変わったことはないですねえ」と今田耕司は言った。

「お仕事前の、ごく普通の精神状態」

オンエアでは、8年付き合っている彼女との結婚について悩むムーディ勝山が号泣していた。芸人たちの相談に太田光代や国生さゆりらが辛口に回答する「ズバットレディ」という企画である。ムーディは彼女のインタビュー映像を見せられたのだ。それで彼女が心の底から彼のことを案じていることがわかった。

東野幸治がムーディと彼女のいきさつを語り出す。イイ話っぽく始めながら、すぐに「オマエもしゃべれや!」とムーディに突っ込む。我に返って「フゥ」とため息をつくムーディに、今度は今田耕司が「“フゥ”やあれへんがな!」。MCの卓から千原ジュニアが「3カメさんにちゃんと言えや」と、カメラ越しに彼女へのプロポーズを促す。すかさず今田耕司、「レンズじゃなくちゃんと3カメさん見て言えよ」。そしてジュニアの「なんであんなペラペラのジャンバーのおっさんの顔見て言わなあかんねん」。

番組の冒頭から比較的引いた位置で参加していた今田・東野が、ムーディの号泣あたりから前線に姿を現し、ジュニアとのパス交換で確実に笑いを発生させる。『やりすぎコージー』5月4日のオンエアである。この回の収録終わり、スタジオのロビーで話を聞いたのだ。

こうしたバラエティは現場での一発勝負。かなりの緊張感を持って収録に臨むのではないか。それが最初の質問。でも「普通」と言う。

「毎回企画内容が違うんで、ちょっとした特番みたいな感覚はあるんですけど、ずっと同じスタッフとやらせてもらってるんで、スッと入っていけるのかもしれませんね。そういう意味では僕にとっての“ホーム”かなっていう感じがしてます」

もちろん始まった瞬間から“ホーム”になるわけではなく…。

「存続が危ないぐらいの問題も起こしつつ。それもわれわれ演者は、実はピンと来てないんですよ。だいたいあとから『実はあのとき大問題やったんや』って聞いて。『えー、そうやったん!?』みたいな」

たとえば、多くは語らないが“校門(註:あえて誤字)に歯ブラシ事件”(?)などがそうだろう。

「そういうことがいくつかあるなかで、だんだんホームみたいになってきた感じはありましたね」

話をしていると、今田さん、制作陣のことを誉める。危険なときの楯として、「面白さ」を共有できる仲間として。

「僕ら会議には参加しませんけど、最近仲間内で面白いこととかは、ちょこちょこ伝えてますね。他では無理だけど、『やりすぎ』やったらできる企画ってあるんですよ」

差を尋ねると、少し考え込む。

「ホンマはやってええことなのかどうか…正解/不正解はわからなくても、『面白そうやからやったらええんちゃうん?』っていう考え方が、この番組には変わらずあるから。マニアックなことでも受け入れられる気がするんですよ」

「ズバットレディ」のクライマックスは2丁拳銃・小堀。本業の漫才よりもDJや落語に入れ込み、そこに群がる女子たちに入れ込み、沖縄や八景島でのアバンチュールを暴露され、相方・修士の嫁に全力で罵倒される。

「今日はグロい回でしたね(笑)。一般の会社員の浮気情報とかTVでやったら絶対ダメでしょう。芸人の中でも言っていい人って限られてて、小堀はホンマに“愛人と沖縄行ったやろ”って言える(笑)」

それを平気で実践できるのが『やりすぎコージー』なのである。

「いやあ、決して平気ではないと思いますよ(笑)。それぞれ、そこは緊張しつつ空気読みつつ“言ってもええかな”って図りながら。これやったらエンターテインメントの範疇ですむやろ! っていう、現場での微妙な判断はあるんですよ」

目指すところはわかってる行き方はまだわからない

さっきまでの収録を思い返して「面白かったなあ」としみじみ言う。「仕事は楽しいですね。僕なんか、特別何も考えずに現場に入るタイプなんで、普段から準備したり努力したりしてないし、綿密な計算をしているわけじゃないし。とにかく楽しんでますよね、本番は」

ただ、こういうインタビューはあまり得意ではなかった。

「昔は全然しゃべらなかったですねー。20代のときとか、バラエティ番組の取材で“あのときなんでああいうセリフが出てきたんですか”とか聞かれたら、“なんでそんなん答えなあかんねやろ”って思ってましたもん。芸人が“あ、コレ面白いんちゃうか”って思いつく過程を言うのは、マジシャンがタネを公開するみたいなもんでしょ。TVで観て面白かったらそれでええやん…と思てたんですけど、違う側面もあるなって、だんだん気づいたんです」

世の中の全員が一所懸命お笑い番組を観るわけではない。TVを観てすべてが伝わるわけでもない。

「たとえばこの『R25』やったら、大人の男性が読むわけでしょ。僕が思ってる以上のことを僕の発言から読み取ってくれはるかもしれませんし(笑)。いろんな人にいろんな角度から、今田耕司という芸人に興味を持ってもらうのは悪いことではないよなあって思うようになったんです。それに、取材の人も仕事で来てはるんやから、しゃべらへんかったら困らはるやろうし(笑)」

かつてはこんな気遣いを持ち合わせていなかった。今や今田耕司は一流の司会者と言っていい。“俺が俺が”と前に出ず、控えめに振る舞いながら、きちんと面白さや少量の毒を盛り込んで座を回す。

インタビューへのスタンスの変化は、同時に今田耕司の司会志向に拍車をかけたのではないだろうか。「いえいえ、たまたまです。やり方とかはそんなに計算してません。“芸人としてトップに立ちたいか”って聞かれると、そのつもりですし。昔から“東京行きたい”と思ってたら来られたし、司会もやりたいと思ってたらできた。やりたいことが少しずつできるようになっただけ」

20歳でデビューして25年。でも、いまだに中堅のイメージである。

「たぶん、三枝師匠とか巨人師匠とか、僕らが昔“師匠やなあ”って思ってた人の年齢は超えてるんですけどね。僕らのちょっと上の、今55歳ぐらいのさんまさん紳助さんらがバリバリやから、この年になっても中堅であることに違和感がないというか。昔は五十何歳っていうともっとおじいちゃんやったはずなんですけどね(笑)。この間『R25』の水谷豊さんのインタビューで“40歳がこんなに体力あるとは思わなかった”っておっしゃってましたけど、僕も同じ思いですよ。30代のころは、40になったら1個上のステージに行けそうな気が…」

以下、引用が続くので、詳しくはwebR25で水谷豊インタビューをチェック!

で、自身のこれからについては「代表作と呼ばれるような番組に巡り合いたい」という。ホームという『やりすぎコージー』はまだ代表作ではないのだろうか。

「わかりません。『やりすぎ』がこれからそういうふうになっていくのかどうか。あるいは新しい番組が突然出てきてハマるのか…ダウンタウンさんの『ごっつええ感じ』のときは…全員が“コレを成功させるぞ”っていうすごいエネルギーがだんだん高まってた。紳助さんは『行列(のできる法律相談所)』やらはる前に“この番組はすごいことになる”って言うたはりました。予感があるのか、自然になるのか。僕は今、お仕事は全部、代表作にするぞっていうつもりで取り組んでるんですよ。でも、一生ないかもわからないし」

ビートたけしはこんなことを言ったらしい。「自分たちは何人もの屍の上に立ってる。だから、そいつらの無念を背負ってやるんだ」と。

「自分が番組に出る分誰かが犠牲になってるなんてこと、先輩に言われないと気づかないですからね。なるほど感謝せなあかんなと思って、朝、家を出るんですけど、すぐ忘れるんですよね(笑)。“もうちょっとええ感じのところに出たいわぁ”とかすぐ思う。まあそれは今のままで満足やとは全然思ってないからなんでしょうけど。まだまだイヤでも走らなアカンのですよ。もう、全然下を見る余裕なんてないんですよ。上しか見られないです」

インタビュー中のロビーを2丁拳銃・小堀が「おつかれした~」と通り抜ける。今田は「精神的におつかれ~」と声をかけて笑った。

1966年、大阪市生まれ。86年デビュー。89年吉本新喜劇に加入。90年に東京進出。『ダウンタウンのごっつええ感じ』に出演。コントやフリートークはもちろん、抜群の安定感を誇る司会者としても活躍。『金曜日のキセキ』(フジテレビ系金曜19時57分~)、『アナザースカイ』(日本テレビ系金曜23時00分~)、『着信御礼! ケータイ大喜利』(NHK土曜24時00分~)などにMCとして出演中。『やりすぎコージー』はテレビ東京系水曜22:00より放送中。オフィシャルウェブサイトは http://yarisugi.jp/

武田篤典(steam)=文
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稲田 平=写真
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