気になる“あのコ”のシゴトーク/30

中塚翠涛「書って、すごく楽しいものなんです」

2011.06.30 THU


撮影:堀清英
ドラマ『SPEC』を観たことがあるなら、戸田恵梨香演じる主人公の印象的な書道シーンを覚えているはず。これらは女流書家の中塚翠涛さんの作品だ。翠涛と書いて、すいとうと読む。だが、その名の持つシャープさとは裏腹に、旅行が好きな、なんとも物腰やわらかでかわいらしい女性なのである。

「『SPEC』のときは、知り合いだった監督の今井夏木さんからお話を頂きまして。文字はとにかくヘタウマに書いてくれってことで(笑)、書いたものは破られる演出なんですが、『失礼ではありませんか?』と聞かれたんです。もちろん葛藤はありましたが、それが破られることによって作品が成立するなら、ぜひ破いて下さい!と、迷いはありませんでした」

おそらく翠涛さんの活動が注目されるのは、これまでの書家の枠を越えたスタンスと、その活動あってのことだろう。書家であり、“空間カリグラフィー”というジャンルを切り開いたのだ。

「空間カリグラフィーとは、クライアントの考えるコンセプトに合わせて、書を通した空間を提案することです。ロゴひとつとってもいくつか提案して、より理想に沿うものを作っていきます。例えば能舞台のある老舗旅館のアートワークを手掛けたときは、話が膨らんで内装も手がけたり。考え方のベクトルが一緒の人と『なにかやりたい』という気持ちは常に持っています」

4歳から書道を始め、大学進学と同時に書家・高木聖雨氏に師事。もともとモノ作りが好きだったこともあり、「書を使ってなにかできないか」と考えた。

「『いい味が出るまで頑張って』といわれたことがあります。だから早く年を取りたいと思っていたんですが、今じゃなきゃできないこともあるんじゃないかと思うようになって」

そんなとき、当時手がけたナイキの仕事を経てたどり着いたのが、空間カリグラフィーなのだ。翠涛さん、「沢山の方に書を好きになってもらいたいんです」と語る。自分の作品や活動を通じて、少しでもその魅力を感じ取ってほしいという。

「私がやっている書道教室では、『これをこの通りに書きなさい』って押しつけると、興味が湧きにくいと思い、最初は自由に筆遊びのように楽しんでもらっています。あと、若い年代の子たちが、どこでも気軽に練習しやすいデザインとサイズ感にこだわった練習帳を作りました」

海外でも個展を開く翠涛さん。文字ではなく、“絵”に近いアートに捉えられることに驚いたとか。ご自身も余白の取り方や筆の運び方など、絵画にヒントを得ることも多い。

「たとえば漢字って、意味のほかに、その文字自体が持つ力もすごくあるんです。そういったことを通して、いろんな方に『もっと楽しいものだよ』って伝えていけたらいいなって」
(吉州正行)

  • 中塚翠涛

    岡山県倉敷市出身。4歳から書道を学ぶ。大東文化大学に入学後、読売書法会常任理事の高木聖雨氏に師事。書や空間カリグラフィーのほか、プロダクトデザインにも携わる。ちなみにプライベートについては「旅好きですねー。旅先で受けるインスピレーションがすごくあって、リラックスしながら感じるその土地の空気感や、そこで出会うアートから受ける影響は大きいです」
  • 最後に、百聞は一見にしかずということで、僭越ながら翠涛さんに「R25」と一筆したためていただいた。すると、「R25とはどんなイメージなのでしょうか?」と尋ねるのだ。そうしてできた作品は、伸びやかで闊達で、斬新なのである
  • 『めざせ内定!のための ペン字練習帖』

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