圧倒的な存在に

小栗 旬

2012.07.05 THU

ロングインタビュー


武田篤典(steam)=文 サコカメラ=写真 須田理恵=ヘア&メイク honmaru=スタイリング …
月9。シンデレラ物語。
同世代男子はここを観よ

「今回でダメだったら、もうドラマに出るのはやめよう…ってぐらいのことは思ってます。勝負したい気持ちでいっぱいですね」

7月からの、いわゆる“月9”『リッチマン、プアウーマン』に主演する。若きIT企業社長・日向徹(小栗旬)と就職難にあえぐ東大理学部生・澤木千尋(石原さとみ)の、“恋の格差1000億円ラブストーリー!”らしい。

2005年に出演した『救命病棟24時』シーズン3を手がけた増本 淳のプロデュース。後に『コード・ブルー』でドクターヘリを描いた彼の、“職業モノ”を作るセンスに心酔していたという。

「そんな増本さんがラブストーリーをやったらどうなるんだろうという興味もあって。でもできあがってきた台本は、むしろ職業モノっぽくて、それはそれで面白いなと思ったんです」

もともと携帯用ゲームの開発からスタートした、日向率いる『NEXT INNOVATION』が、次のステップを目指す。総務省を相手取り、戸籍をパーソナルファイル化し、年金や保険などを一元化してネットで管理するシステムを売り込もうとするのだ。

「1話から5話まで、そのトーンで行くんですよ。僕らがやろうとしている事業は継続していく一方で、“彼女の名前の件”なんかは2話めですぐ明らかになる。毎回、興味を引く疑惑が何かしら浮上しては、わりと気持ちよく次回で解決するという(笑)。連続ドラマとして観る面白さがちりばめられていると思います」

小栗旬は今年30歳。高校の同級生たちは、普通に社会に出てバリバリ勤めている。“彼らに勧めるつもりで”と、ドラマの見どころを尋ねると唸った。みんなそんなにドラマを観ていないのだ。

「…まず、ビジネス的に見て面白いんじゃないかな。ソーシャルネットワークの会社の実態が垣間見えます。それと、モバイルゲームからキャリアをスタートさせた男たちが、ジョブズの言う“世界を変えることができる”という言葉を何の疑いもなく信じて動いている点。戸籍をデータ化する件についても、それができれば全部よくなるって信じていて、作りたくて作る。彼は飛び抜けて能力があったから、国のシステムに関わっていきますが、“どんな人でも本気で変えようと思ったら何かを変えることができる”。ここは僕がこのドラマのなかで貫かなければならないポイントだと、思ってますね」

それは、たぶん小栗旬が“ドラマの外”でも実践しようとしてきたことだ。

口に出して、実行する。
そうすればきっと変わる

「ぶっちゃけ」と前置きしつつ、今の連続ドラマについて本当にぶっちゃける。直近の『獣医ドリトル』は信頼の置けるチーム仕事ができたが、急遽企画が変更になったため、「みんなでなんとか乗り越えた」という印象。それ以前の主演ドラマでも、心底満足行く結果は出してこられなかったという。打ち合わせの時点と話がまったく違っていたり、撮影開始時に台本がそろわなかったり、撮り始めても先のストーリーが完成していなかったり…あと、いつも撮影初日に体調を崩していたり。

今回は事前にしっかりディスカッションし、撮影開始3日前の段階で台本も6話分できている。

「それがすごく大きいです。今回は4話で、僕らが会社を設立したころの、過去のエピソードをやるんですけど、そこから撮影し始めることもできる。ドラマの全体像が見渡せるし、自分がどんなふうに今に至ったのかもよくわかる。6話までできてるって同業者に言うとうらやましがられますよ(笑)。そのくらい余裕がないのが普通だから。今回はモチベーションの上がる面白い台本が先の方まであって、考える時間をもらえて、いいメンツがそろってて…“準備”という段階は完全にクリアできてます。これで何も結果が残せなかったら、あとは僕の責任でしかない。そう思える環境で仕事できることがうれしい」

ちなみに、この日すでに鼻声。撮影初日まで3日あるので、今回は万全の体調で臨むことができそうだという。そして、もっとずっとリラックスした表情になったのは、トヨタカローラのCMキャラクターの件を話題にしたとき。

「宣伝だから言うわけではなくて、おふくろが長い間カローラに乗っていて。親父もトヨタ好きで、今はアルファード。だから、子どものころから身近だったクルマのCMは、もう単純にうれしかったですね」

ブレザーに黒縁眼鏡の“アクシオの男”とマウンテンパーカに短パンの“フィールダーの男”、セダンとワゴンをそれぞれ擬人化したようなキャラクターを演じる。

「表現の仕方は違うけど、キモみたいなものは同じ気がします。運転してて思うことは“安心感”」

そう、CMに出てくるキャラクターの根底にはその哲学が!

「そこまで考えてやったかと言われると、ちょっと…(笑)。僕のなかでは、母親が乗ってたカローラだから落ち着くっていうだけなのかもしれませんが」

これまでクルマのフォルムにしか興味がなかったが、ガレージ付きの家を持つのが夢という。

「自分でいじれたらいいですね。男子っぽいし。ドラマの役でバイクに乗るので、大型の免許をとったんです。だからバイクもほしいんです。うち、奥さんも大型持ってるんで、共用で1台買えるといいかもしれないですね」

そういえば、この3月に女優の山田優と入籍したばかり。

「結婚前とは何ら変わらないですね。付き合った当初からずっと一緒に住んでいたから生活も変わらないし、仕事に関しても、結婚するとき奥さんにも言ったんですが“僕の仕事はどうなるかわからないので、結婚して子どもが生まれて俺がヒモになる可能性もあるよ”って。今のところは、やっぱり仕事は自分のためにやっていると思ってるんです。“家族のため”ってなると、ひょっとしたらやりたくないこともやっていくようになるのかもしれない。そこで自分の選択だけでは見えなかった何かが開けるのかもしれないけど、それは子どもができて、彼女が仕事を辞めるようなことになったら考えればいいかなと思っています。今は“自分を食わせるため”に、自分のやりたいことをやっていきたい」

11年前、旅番組で訪れたバイカル湖のほとりで小栗旬は役者を続けることの悩みを吐露した。5年前の『情熱大陸』では忙しさのあまり疲弊していくさまを生々しくさらした。ぶっちゃけ、である。

「続けていく悩みはあるし、あらゆる仕事をやりすぎて自分が何なのかわからなくなって。あのころから何かが大きく変わったという気はあまりしないですね。去年、森山未來という俳優と一緒に芝居をして“ああ、役者ってこういう人をいうんだ”って思って、ちょっと傷ついたり(笑)。その未來や瑛太と話して“旬はどメジャーばっかだな”って言われたり、俺とは全然違うことをやろうとしていることがはっきりして。うらやましくもあるんだけど“じゃあ俺の個性は?”ってところにもう一度向きあうようになりました。あと、去年『宇宙兄弟』という映画の森義隆監督に言われた“オマエは所詮不器用なんだから、やれるような顔するな”っていう言葉にハッとして。“できます!”っていう顔をしてたから、ボロを出さないよう平均点狙いになってたんだなって気付かされることもあったし…」

変化だとか、成長だとかの、まだまだまっただ中。今はまさに新作ドラマに全力注入なのだが、そこで、ひとつの決意をした。

「30歳から40歳ぐらいまでは、“メジャーでエンターテインメント色の強いこと”をちゃんとストレートにやっていきたいなと思う。芝居がうまいとか役者としてスゴイとかっていうところよりは、単に“アイツ、すごいことやった”っていわれるような、圧倒的な存在になってやろうかなと」

そうして、今のように“ぶっちゃけ”続ければ、きっと何かは変わっていくに違いないのだ。

1982年東京都生まれ。小学校6年生で児童劇団に所属。本格的なデビューは98年のドラマ『GTO』。2003年、蜷川幸雄の舞台に初出演、以後常連に。『タイタス・アンドロニカス』では、英国公演も。ドラマでは『花より男子』『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』『ボンビーメン』『東京DOGS』などに出演。映画は『キサラギ』『クローズZERO』『岳』『宇宙兄弟』など。文中の森山未來と共演した舞台とは、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』。役所広司との共演作『キツツキと雨』DVDが7月20日発売予定。

武田篤典(steam)=文
サコカメラ=写真
須田理恵=ヘア&メイク
honmaru=スタイリング
衣装協力:NEPENTHES、knave twosome、PUERTA DEL SOL

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