30歳からの黒澤映画

第2回 “世界のクロサワ”その恐るべき影響力

2012.08.16 THU

30歳からの黒澤映画


ルーカス、スピルバーグ、コッポラの3人以外にも、マーティン・スコセッシ、サム・ペキンパー、アンドレイ・タルコフスキー、フェデリコ・フェリーニ、クリント・イーストウッド、北野武など、黒澤明の影響を受けた監督は数多くいる。

G・ルーカスとS・スピルバーグは“黒澤宣伝隊”!?



「前程として、なぜ黒澤明が世界に広く認知されたかというと、それは彼が日本の様式美に拠らない、ユニバーサルな娯楽性を追及していたからです」

 そう語るのは、WOWOW「映画工房」「ぷらすと」などで活躍中の若手映画評論家・中井圭さん。なるほど、黒澤は他の日本人監督とは違い、直球ど真ん中のエンタテインメントや人間ドラマで勝負してきたんですね。

「かつ、ストリーテリングのうまさ、人間の本質に迫る人物描写が抜きん出ていた。ルーカスが『隠し砦の三悪人』の設定や登場人物をリプレイスして『スター・ウォーズ』を撮ったことからも、それはうかがえます」

 そして、決定的だったのは「画」だという。

「例えば『用心棒』の冒頭で、主人公の後頭部を延々と映し続けるシーン。普通だったら、正面から顔を撮りますよ。だから映画を観た人たちは『え、なんなの!?』ってなる。黒澤は、そういう独創的な、インパクトのある画を次々と発明していったんです。で、ルーカスやスピルバーグ、コッポラなど黒澤を敬愛する監督たちは、画に対する執着が非常に強いんです。スピルバーグはその典型で、事実、黒澤映画の印象的なシーンをいくつも模倣しています」  スピルバーグは『レイダース』で、まさにその『用心棒』の冒頭シーンを模しています。あるいは『シンドラーのリスト』では、白黒映画なのにワンシーンだけ少女の服に赤い色がつく。これも『天国と地獄』で使われた手法です。ただ、彼らがやっているのは単なる「パクリ」ではありません。
©1958 TOHO CO.,LTD ALL RIGHTS RESERVED. 『隠し砦の三悪人』(1958年)。黒澤明の代表作の1本でもある時代劇の名作。舞台は戦国時代。城を攻め落とされ敗走した姫様を同盟国の領地に届けるべく、侍大将・真壁六郎太(三船敏郎)と農民コンビの3人は決死の旅に挑むが……。
「模倣というのは切り口でしかなく、根底にあるのは黒澤の表現の面白さを取り込みたいという、純粋な憧れだと思うんです。もっといえば、これはあくまで個人的な見解ですが、ルーカスとスピルバーグの2人は、もはや“黒澤宣伝隊”です」

 彼らにとって黒澤は映画文法の先生であり、黒澤がいなければ彼らの成功もなかったかもしれない。だから、オマージュというカタチで恩師の「発明」を世に広めようとしているんじゃないか。「オレたちの大好きなクロサワの作品を、みんな観てよ!」と。これほどまでに愛される日本の映画監督は、後にも先にも黒澤だけでしょう。 皆さんの投稿を募集中!

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