ここ数年、文豪作品映像化ラッシュ!

ただいま「純文学」ブーム真っ最中?

2012.09.28 FRI


『幸福の彼方』 戦争で片眼を失った信一と見合い結婚をした絹子。幸せな結婚生活の最中に、信一に子供がいることを告げられた絹子は、動揺しつつも子供に会いに行く決心をするが…。(9月29日より角川シネマ有楽町ほか全国公開) 監督/谷口正晃 原作/林芙美子 脚本/鎌田敏夫 キャスト/波瑠、三浦貴大 (C)「BUNGO ささやかな欲望」製作委員会 
最近、朝の情報番組内で注目の書籍が紹介されたり、芸人が自分のごひいきの文豪について熱く語るなど、<文豪&文学>がテレビ番組で扱われる機会が目立つ。

映像作品でも、2009年から2010年にかけて太宰治の『斜陽』『人間失格』などが相次いで映画化されたほか、ほぼ時期を同じくして『蟹工船』(原作:小林多喜二)も映画化。テレビでは「青い文学シリーズ」として太宰治、坂口安吾、夏目漱石、芥川龍之介らの名作がアニメ化されるなど、ここ数年ちょっとした“純文学ブーム”が起きているのだ。

そしてこの秋、昭和を代表する文豪たちの短編を、気鋭の映像作家たちがビタースイートな6つの恋物語として大胆にアレンジ。石原さとみや山田孝之など豪華俳優陣によるオムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』が一挙劇場公開される。

同作品は<見つめられる淑女たち>編と<告白する紳士たち>編の2編構成。

<見つめられる淑女たち>では不倫相手に心理戦を仕掛ける女性(『注文の多い料理店』原作:宮沢賢治)や、思春期の少年に成熟した女性の体についてレクチャーする人妻(『乳房』原作:三浦哲郎)、悶々とする下宿人をよそに無防備に夫婦の性生活を続ける若奥様(『人妻』原作:永井荷風)など、様々なシチュエーションで生じる男と女の微妙な関係をセクシーに仕上げた3作品を収録。

また<告白する紳士たち>では、好意を寄せてくる若い娘に亡き母との寿司にまつわる切ない思い出を聞かせる中年紳士(『鮨』原作:岡本かの子)や女性の手を握ったことで始まった恋愛に不安感を募らせる大学生(『握った手』原作:坂口安吾)、見合い結婚後に妻へ子供がいることを告白する片眼の男性(『幸福の彼方』原作:林芙美子)など、それまで心の底にしまっていた男性たちの切ない思いが感動を呼ぶ3作品が収められている。

「日本の“文学”は明治維新と太平洋戦争という二つの転換期を契機に豊かな大木となりました。その幹を太くしたのは“文豪”と呼ばれた作家たちが、水や栄養を与えた成果です」

とは、カリスマ書店員として名高いジュンク堂書店池袋本店・副店長の田口久美子さんだ。

激動の時代に、文豪たちが「人間とは?」という問いや「日本人とは?」という問題意識を様々な形で掘り下げ、作品として表現しつくしたことで、日本の文学は多いに発展した。

といってもテーマとなったのは堅苦しい理屈ではなく、男と女の間に生じる心の機微や人間ドラマばかり。難解な解釈や予備知識は一切不要の、現代にも通じる日本人の感性や感情だ。

「つまり『文豪たちの作品』を読めば“日本人としての基礎知識”を身につけられるのです。しかも、なんと読みやすい! 『坊っちゃん』 や『高瀬舟』、そして『津軽』を読めば、心揺さぶる人間ドラマにあれよあれよと愉悦の時間が過ぎること請け合いです」(田口さん)

難しいだろうと構えずに気軽に接するのが正解なのかも。まずは映画でBUNGOを体験してから、めくるめく文豪の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょう?
(足立美由紀)

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